ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長の中国公式訪問後にベトナムと中国の商品の流通を含めた貿易は、前向きに進展する可能性があると専門家はみている。
「今回の両国の共同声明の精神に則り、ベトナムと中国の経済、貿易協力関係は一層促進されるでしょう。」とベトナム・中国友好協会のグエン・ビン・クアン副会長は、グエン・フー・チョン書記長の中国公式訪問を受けてコメントした。クアン副会長によれば、今後両国の貿易額が拡大する可能性は非常に高いとのことだ
ニュージーランドのヴィクトリア大学で教鞭をとるグエン・カック・ジャン教授も今回の訪問の成果が、両国の貿易関係を強化したいという願望を暗示していると見ている。
ベトナムと中国の物資流通問題は、今回の公式訪問後に改善されると多くの専門家は予測している。
クアン副会長は、最近の両国の貿易関係における問題点の一つは、中国のゼロコロナ政策による通関手続きにあったと指摘する。これまで中国との国境を接するラオカイ省、クアンニン省にある国境ゲートが遮断されていた。他の一部のゲートでは通関手続きに非常に時間がかかり貨物が混雑し、大きな損害が出ている。例えば、ベトナム青果協会は、中国が感染防止対策を強化した後で果物の輸出額は記録的な減少となり、減少額を補うために他の市場への輸出拡大を模索する必要に迫られた。
「通関手続きの問題が解決されれば、最近になって中国がベトナム製品の基準を承認していることから、両国の貿易は更に盛んになるでしょう。一番最近ではベトナム産のドリアンが承認され、正式に中国に輸出されるようになりました。」とクアン副会長は話す。
10月31日の会談で、グエン・フー・チョン書記長は、習近平国家主席に対してベトナムは中国の15億人市場を特に重視しており、ベトナム製品の輸出を強化したいとの考えを伝えた。チョン書記長は、中国側が製品の円滑なサプライチェーンを維持し、空路、陸路、鉄道による輸送への協力を強化するように提案した。
これに対して習近平国家主席は、ベトナム側が農林水産品を輸出できる環境を整えることに同意した。「中国はベトナムとの戦略的連携強化に向けた準備を整え、両国の結びつきを強化し、強固なグローバルサプライチェーンをともに構築することを目指す。」と習近平国家主席は述べた。
これはのちに発表された両国の共同声明の中で具体的に言及されており、新型コロナ対策の合意によって商品の通関を保証し、国境での通関手続きの混雑を解消するための共同作業を促進することに同意し、各国境ゲートでの貿易活動を維持したまま、新型コロナ感染防止対策を保証することが求められている。
「中国がゼロコロナ政策を維持しているとしても恐らく2023年の前半まではベトナムと中国の商品流通は保証されるでしょう。」とグエン・カック・ジャン教授は予測している。
短期的には両国の貿易収支はよりバランスのとれた形になると予想されている。中国-ASEANビジネス評議会のデータによると、RCEP加盟国の中で中国にとってベトナムは455億USDと最大の貿易黒字相手国になっている。
貿易不均衡を是正するために、ベトナムと中国の共同声明では、両国は互いに高品質な農産物と食品の輸出入を拡大するとしている。その中で中国側はサツマイモ、柑橘類、ツバメの巣などの市場開放プロセスを積極的に進め、ベトナム側は中国産牛乳の市場開放プロセスを促進させることになっている。
ジャン教授によると長期的に注目すべき点は、二国間経済貿易協力における電子商取引の連携強化と物流企業間の協力促進という内容だ。中国は、電子商取引による消費者プロモーションを通じて、ベトナムの独特で高品質な製品の消費拡大を継続する。
「これは貿易に関する問題として共同声明で最初に言及されている内容であり、両国のこの問題に対する関心の高さがうかがえます。」とジャン教授は話す。中国は東南アジアでの電子商取引ネットワーク拡大を目指しており、ベトナムは東南アジアでインドネシアに次ぐ2番目に規模の大きな電子商取引市場になりつつある。
さらに両国は、ベトナム北部と中国を結ぶ鉄道システムの改善を含む”2つの回廊と一帯”の枠組みを一帯一路構想と結び付けるための協力計画を通じて、貿易関係を強化することにも言及した。
「基本的には両国の貿易が拡大すればするほどメリットがあるでしょう。ベトナムにとっては、製造原料の多くが中国から輸入されているため、両国の貿易拡大はベトナムにとって重要な問題です。逆に中国にとっては、ベトナムは中国が加盟していない国際的な枠組みへの窓口になる可能性があります。」とジャン教授は説明した。
CABCの徐寧寧会長は以前、中国とベトナムは経済と貿易において強力な補完関係にあり、協力の必要性が年々高まっていると述べている。中国共産党の機関紙である環球時報もグエン・フー・チョン書記長の公式訪問を受けて、両国は地域経済の回復と統合をさらに促進するうえでお互いを重要な戦略的パートナーとみなしており、両国の協力関係の促進が重要だとの見方を示している。現在ベトナムは、中国をはじめとする主要経済国が推進するRECEPに参加している重要な経済国とみなされている。
中国は、ベトナムにとって最大の貿易相手国であり2番目に大きな輸出相手国だ。ベトナム税関総局のデータによると、中国は2018年にベトナムとの年間貿易額が1000億USDを突破した初めての国であり、その後も現在まで1000億USD以上の貿易額を維持している。現在、ベトナムとの年間貿易額が1000億USDを超えているのは中国とアメリカの2カ国しかない。逆に中国にとってもベトナムはASEAN最大の貿易相手国であり、世界全体で見ても6番目に大きな貿易相手国となっている。
2021年のベトナムと中国の貿易額は1659億USDとなり、前年から24.6%増加した。2022年10月までのベトナムから中国への輸出額は470億USDに達しており、中国からの輸入額も1007億USDとなっている。中国との貿易赤字は537億USDで前年同期比で18.8%増加した。
また、経済複雑性観測所のデータによると1995年から2020年までの25年間に中国からベトナムへの輸出額は年間平均22%増加し、7億1800万USDから1040億USDまで増加した。一方でベトナムからの輸出額も年間平均22.6%増加し、3億300万USDから494億USDまで増加した。
1995年当時ベトナムの主な輸出品目は農産物(輸出額全体3億300万USDのうち米の輸出額が9280万USD)と原油(9450万USD)が占めていた。それが2020年になると主要輸出品目は機械(125億USD)、マイクロチップ(84.7億USD)、コットン100%繊維(18.4億USD)、農産物などが占めるようになった。
一方の中国からベトナムへの輸出品も機械(エンジン)、ビデオモニター、冷蔵庫、化学薬品、食品などからマイクロチップ、携帯電話、半導体設備などに変わった。この25年間、金属、繊維、プラスチック、化学薬品など製造に必要な様々な原材料を中国から輸入してきた。
今回のグエン・フー・チョン書記長の公式訪問に先立って、経済貿易協力、サプライチェーン強化などについて9月にファン・ミン・チン首相と李克強首相の間で電話会談が行われていた。
出典:01/11/2022 VNEXPRESS
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