2021年の経済成長率が低かったことに加えて、国内消費、輸出、外国直接投資が伸びたことによってベトナムは2022年に目覚ましい経済成長率を達成したと専門家は指摘する。
12月29日に統計総局が発表したデータによると2022年のベトナムの経済成長率は8.02%で、2011年から2022年までで過去最高の数字となった。この数字自体は、既に以前から国内外の専門家によって予測されていた数字ではある。12月中旬にもHSBCはベトナムの2022年の経済成長率が8.1%に達するとの予測を発表していた。
中央経済委員会の総合経済局長を務めるグエン・トゥー・アイン博士は、以前ホーチミン市で開催されたセミナーで、2022年の経済成長率が8%に達する可能性があると予測していた。「これは非常に素晴らしい成果です。以前は、2022年の経済成長率が8.5%に達する可能性があるのではないかと考えていましたが、年末にかけての数ヶ月で製造業が落ち込んだため、そこまでには達しませんでした。」とトゥー・アイン博士は話す。
では、2022年にこのような記録的な経済成長率を達成した理由は何か?まず、多くの専門家が指摘するのは、昨年の落ち込みだ。2021年はCOVID-19 による深刻な影響を受けたため、GDP成長率は目標の6.5%を大きく下回る2.58%でしかなかった。しかし一方で、経済回復過程における明るい兆しにも目を向ける必要がある。トゥー・アイン博士は、それを内需、輸出、外国直接投資(FDI)だと指摘する。
統計総局のデータによれば、経済全体の総付加価値(GDP)の成長率には、サービス業が57%近くと最も大きく貢献している。次いで製造業と建設業(38%)となり、農林水産業の貢献は5.11%となっている。
2022年の商品とサービスの総小売売上高は、2021年から19.8%も増加した。コロナ前の2019年と比較しても15%の増加となっている。
2022年9月までのベトナムの輸出額は、主要な輸出先マーケットの回復によって良好な結果を示し、100億USDを超える貿易黒字となった。輸出は10月以降減速したが、それでも通年の輸出額は3710億USDを超え、10.6%増となった。
また、成長の原動力として海外直接投資(FDI)の実行額の伸びもプラスポイントとして言及されている。FDIは、投資額としては11%減少したが、実行額は13.5%増の224億USD近くに達し、過去5年間で最高の数字となっている。
統計総局のグエン・ティ・フーン局長によれば、農林水産業も2022年のベトナム経済成長を支える役割を果たした。フーン局長は、一部の材木は長年にわたって生産量が拡大しており、畜産業は安定して発展し、農産物も高い品質と新規市場の開拓、貿易促進活動によって記録的な輸出額を達成していると指摘する。
一方で、製造業や建設業の分野では、多くの企業が積極的に生産計画の達成や困難の克服に取り組んでいる。統計総局のデータを見ると、製造業はベトナムの8%の経済成長の主要な原動力となっている。
政府は2023年の経済成長率目標を6.5%に設定したが、目標を達成するために必要な措置は何か?
統計総局のレ・チュン・ヒウ副局長は、データ分析を通じてこの目標数字は、2023年のベトナムと世界経済の困難な状況を予測したうえで挑戦的な数字であると指摘する。しかしベトナムには、目標数字を達成するための多くの潜在能力が秘められている。
グエン・トゥー・アイン博士も同様の意見で、ベトナムには経済成長目標を達成するための様々な可能性があると述べた。まず第一に国内経済を強化し開放することが重要で、特にまだ潜在能力が十分に開拓されていない一部の分野の強化が必要となる。
実際、アイン博士によれば2022年は過去12年間で最高の成長を遂げたが、社会的投資資本成長率は、11.2%でコロナ前の2019年の10.2%、2018年の11.2%とほぼ同じ数字となっている。公共投資とビジネスニーズのための資金は、その大部分が銀行に眠ったままだ。11月30日時点の公共投資実行額は58.33%に留まっており、来年ベトナムは700兆VND以上の公共投資を実行しなければならない。
経済・法律大学の銀行学部長であるファン・ティ・タイン・スアン博士は、銀行間の金利競争は、資本が動き回るだけで、生産活動にはあまり影響しないと分析している。
「金利競争は金融機関の市場シェアをめぐる争いであり、マクロ経済への貢献には限界があります。資本コストは絶えず上昇しており、金利競争を止めなければ経済に悪影響を与えるでしょう。」とスアン博士は指摘する。
そのため、専門家たちは証券市場の困難を取り除くことに加えて、金利を引き下げてマネーサプライを増加させることが来年に向けて経済の血管を部分的に広げることに繋がると分析している。このように考える根拠は、インフレへの懸念がそれほど高くないことにある。実際、ベトナムのインフレはマネーサプライの増加によるものではなくコストプッシュ(輸入価格、為替の上昇)に起因するものだ。
一方で、アメリカの連邦制度準備理事会(FRB)が金利の引き上げ幅を低下させたことにより、為替レートが変動すればコストプッシュ圧力は来年以降低下する可能性がある。更に、タイを除く多くのベトナムの周辺国が現地通貨を切り下げたため、ベトナムの原材料輸入コストが下がり輸入によるインフレを抑制できる。「経済的な生産量は、潜在的な生産量と大きく離れており、マネーサプライを強化してもインフレは起きないでしょう。」とトゥー・アイン博士は話す。
次に、来年世界経済が停滞する可能性がある中で、残されたチャンスを最大限に活用することが非常に重要になると専門家は指摘する。その中で、FDIの誘致は依然として良好であり、観光業も迅速に回復が進むと予想されている。
HSBCによれば、経済的な逆風にもかかわらず多くの企業は引き続きベトナムへの投資を進めている。レゴに加えて、サムスン、LGが最近になって、資金投入を継続すると発表しており、これはベトナム投資の長期的な魅力を示している。
投資管理会社のColliersもベトナムが引き続き投資対象のトップグループに属しているとみている。「我々は、ベトナムの工業団地、オフィスビル、住宅、小売、ホテルなど様々な不動産セグメントに関して、日本、韓国、シンガポールの投資家からますます多くの問い合せを受けています。」とCollier Vietnamのデビッド・ジャクソン社長は話す。
デビッド・ジャクソン社長によれば一般投資家心理は非常に慎重だが、外国人投資家は市場の低迷期を利用して投資ポートフォーリオを強化しようとしている。「国内投資家については、長期的に安定した成長モデルへの移行を目指し、今後数か月間はビジネスモデルの再構築とM&Aが引き続き進むとみています。」とデビッド・ジャクソン社長は付け加えた。
サービス分野では、国内消費の成長スピードは鈍化しているものの依然として伸びている。旅行業に限っては、今後回復が加速する可能性がある。2022年11月だけでも国内の旅行者数は延べ1億人を突破しており、目標の6000万人を大きく上回っており、2019年の8500万人すら超えている。
2022年の海外旅行者数は約360万人に留まり、コロナ前の2019年と比べて79.7%も減少している。しかし、インドや中東などの新たな市場には潜在的な可能性が残されている。また、最近になってこれまでベトナムを訪問する外国人旅行者数が最大だった中国が1月8日から入国時の強制隔離を停止する方針を示したことで、旅行業界に新たな希望の光が灯った。
「来年の海外旅行者数が800万人を超えるかどうかははっきりしません。しかし、中国からの旅行者は特に中部地域にとって大きな観光収入源になる可能性があります。」と経済・法律大学の元学長であるグエン・ティエン・ズン博士は話す。
最後に、いくつかの予測困難な出来事への追跡と迅速な対応がベトナムの成長を阻害するショックを回避するのに役立つ可能性がある。
ロシアと西側諸国の対立は継続しており、エネルギー価格を予測不能な状態にしている。アメリカは中国の情報技術に対する禁輸措置を継続しており、労働生産性の低下によって中国製品は以前ほど安くならない可能性がある。欧米のインフレは依然として続いており、金利の引き合あげが世界的な需要減を引き起こし、ベトナムのような輸出国にダメージを与えている。輸出による実質所得が減少すると、インフレよりも賃金上昇の方が遅くなる可能性もある。
「アメリカのインフレはそれほど大きな問題ではないのかもしれないが、FRBの決定と急速に進行するウクライナ紛争がヨーロッパの景気後退を引き起こす可能性について状況を注視する必要があります。そのため、今後の経済に関する研究は、国際的な動向を細かくフォローし、独自のリソースを評価する必要があるでしょう。」とズン博士は提案する。
出典:02/01/2022 VNEXPRESS
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