ベトナムでは大気汚染が主要な死亡リスクの一つとなっており、2023年には大気汚染に関連する早期死亡が9万4,837人に上った。大気汚染は同年、国内の死亡リスク上位5項目のうち3位となっている。
これは、9月29日にハノイで開催された「ベトナムにおける大気汚染の克服と大気質改善―政策から行動へ」と題するセミナーで、保健省のグエン・ティ・リエン・フーン副大臣が指摘したものである。同セミナーは農業・環境省、保健省、世界保健機関(WHO)、国連開発計画(UNDP)が共同で開催した。
大気汚染、死亡リスクでたばこに次ぐ3位
保健省が示した2023年の「世界疾病負担研究(Global Burden of Disease)」のデータによると、ベトナムでは大気汚染が死亡につながる主要なリスク要因の3位に位置している。
上位は収縮期血圧の上昇と喫煙であり、大気汚染がこれに続く形である。2023年には、大気汚染に関連する早期死亡が9万4,837人に達したとされる。
大気汚染の影響は、単に空気の質が悪化するという問題にとどまらない。健康への影響は生涯にわたる可能性があり、特に微小粒子状物質PM2.5への曝露が問題となっている。
ベトナム国内の研究では、PM2.5の濃度が10µg/m³上昇すると、子どもの肺炎、気管支炎、ぜんそくによる入院率が3.5~5.2%上昇するとのデータも示されている。
また、大都市では大気汚染が深刻化した時期に、高齢者の心血管系疾患や呼吸器疾患による入院が急増することも確認されている。
大気汚染は行政区域を越えて広がる
今回のセミナーでは、大気汚染対策を一つの地方自治体だけで完結させることの難しさも指摘された。
ベトナム・クリーンエア協会のホアン・ズーン・トゥン会長によると、気象条件によって大気中の汚染物質は発生地域から別の地域へ拡散する。このため、大気汚染の管理・抑制には地域をまたいだ連携が必要となる。
特に、発生源や汚染物質の拡散が行政区域を越える場合には、各地域や関係機関の責任と権限、連携方法を明確にする必要がある。
2030年までには、観測データだけでなく、気象、排出源、交通など大気汚染に関係するデータを各地域・各分野で接続し、標準化・統合・共有するための共通データ基盤を構築する必要があるとの提案も出ている。
低排出地域の導入も検討
農業・環境省のレ・ホアイ・ナム環境局副局長によると、政府は大気質の管理を強化するため、環境保護法の改正を検討している。
改正案では、一定の地域を「低排出地域」として設定するための原則や基準、排出規制の方法を盛り込むことを提案している。また、建設現場から発生する粉じんへの管理も強化する方針である。
さらに農業・環境省は、地域・省をまたぐ大気環境管理の連携規則案を取りまとめており、10月に首相へ提出する予定としている。大気汚染対策を担う国家指導委員会の設置についても、首相に検討を求める方針である。
農業廃棄物やエネルギーも対策対象に
大気汚染対策は都市部の交通や工場だけに限られない。
農業・環境省は、農業副産物の収集・処理・リサイクルを支援する政策も進めている。特に、稲わらなどの野焼きを減らすことが目的の一つである。
また、汚染物質の排出削減に向けた技術転換やエネルギー転換についても、政府に提出する大規模な計画として取りまとめを進めている。
ベトナムではこれまで、大気汚染を都市ごと、あるいは排出源ごとに管理する側面が強かった。しかし、汚染物質が行政区域を越えて拡散する以上、今後は複数の地域や行政機関がデータを共有し、発生源から対策までを一体的に管理する仕組みが重要となる。
9万4,837人という数字は、大気汚染が環境問題だけではなく、医療や労働、生産性、生活コストにも関わる社会的な問題になっていることを示している。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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