「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。川端康成の小説『雪国』の有名な冒頭部分です。抒情的な美しい小説ですが、それとは無縁な、恥ずかしいやら悲しいやらの私の「長いトンネル」の話です。
ゴルフでかなり長い期間、イップスと呼ばれる病気が続いています。特にグリーン手前になると軽く当てるだけなのに、ボール手前の地面を叩いてしまい、ボールにさえ触れないことも数回。症状はどんどん重症になっていきました。
仲間たちは「アプローチ・イップスの発症」と言い、どうしてこんな簡単なことがと不思議そうな顔をします。クラブのフェースに当てるだけなのに、当てようという意識が強くなり、極度に緊張して体がガチガチになるとボールに当たらなくなります。一度発症すると悪循環の連鎖です。自信のなさが緊張を呼び、緊張が失敗を呼びます。
イップスとは無意識でできていたことが、大事な試合などでの失敗が原因でトラウマになり、思うようにできなくなる運動障害を言います。練習場ではそれほど失敗しなくても、プレー本番になると失敗を繰り返していました。
最近になって、手ではなく体重移動で打つことを心がけるようにして、失敗が少なくなりました。かなり重度のイップスだった私ですから、油断をするとまた元に戻りそうな怖さはあります。仲間にはまだ完治したとは宣言できません。
ただ、こんなことを書こうと思えるようになったのは、薄明かりを見出したからでしょう。一刻も早く長いトンネルを脱出したいものです。