BX文化ベトナムは2008年に進出し、周辺諸国と共に事業規模を拡大させてきた。今後は特殊用途のシャッターやドアを普及させ、ローカル市場も攻めるという。東南アジアを駆け巡った海保英司ホーチミンBranch Directorが語る。
ミリ単位のフルオーダーメイド
―― ベトナム進出について聞かせてください。
海保 文化シヤッターは2005年から、ベトナムのCADセンターに商品の設計をお願いしていました。その頃からお客様である日本のゼネコン各社が進出しており、工業団地も増えて、ベトナムに注目していたのです。そこで2008年にハノイに駐在員事務を設立して、私が赴任しました。
調査を続けて、正式な進出となって現地法人化し、2009年に工場を建設、2010年4月から操業しています。
私は帰任して、日本の海外部で台湾支社を設立し、2014年に再びハノイで1年間営業部長を務めます。2015年にはインドネシアに赴任しますが、2018年頃からミャンマーやカンボジアなどでお客様が増えて、現地代理店経由で請け負うようになります。
出張ベースで行き来していましたが、ホーチミン市に拠点を作ったほうが良いとの判断になり、2018年にホーチミン市にASEAN統括部を設立しました。インドネシアとの兼務ですから忙しかったですね。そして2020年に、BX文化ベトナムのホーチミン支社に赴任しました。
―― 事業が広がっていますね。その事業内容を教えてください。
海保 文化シヤッターの主力商品であるシャッターとドアの販売です。売上の約9割は日系企業で、建物の新設や増設の時の販売が多く、改修時もあります。建設会社が建てますから、ほとんどがゼネコンのお客様からの発注になります。
仕事の流れを申しますと、お客様から建築図面や現場を見せていただいて、シャッターやドアの見積もりを作ります。話が進めば、弊社でより詳細な図面を作成します。ドアもシャッターも全てがミリ単位のフルオーダーメイドで、現場の壁の厚さや床の形状などにも合わせる必要があります。
図面が確定したら工場で商品を作り、建設現場に運んで取り付けます。完成後のメンテナンスなども行っています。
建物は製造業の工場や倉庫が多いです。ただ、一つの現場で数が多いのはショッピングモールなどの商業施設です。シャッター400本、ドア500本などもありまして、大型の工場ですとドア200本などでしょうか。
進出以降、予想以上に日本からの投資が続いており、日系企業のお客様からの仕事が途切れません。
―― 商品は何種類くらいあるのでしょうか。
海保 日本では、シャッターやドア以外にも約200種類の商品を取り扱っていますが、ベトナムではスチールシャッター、アルミシャッター、グリルシャッター、高速シートシャッターなどの種類があり、ドアですと開き戸や引き戸、またドアにはハンドル、カギ、自動でドアを閉めるドアクローザーなどのアクセサリーが付きます。結果的に多種多様な商品となります。
材料はできるだけ現地化したいのですが、電動シャッターモーターなどの電装品や制御盤などの軸となる部分は日本製を使っています。ドアのアクセサリーも日本製が多いですね。
日本のゼネコンのお客様はシャッターやドアの機能や種類をご存じですので、商品を指定される場合が多いです。ベトナム企業のお客様の場合は、商品を説明し、弊社から色々な提案をする場合もあります。工場、オフィス、商業施設、病院、学校など建物の用途に応じた商品をご紹介しています。
例えば、病院の屋内のドアはスライド式をお薦めしています。ストレッチャーが廊下を通るときに、外開きのドアはぶつかる危険があるからです。ドアアクセサリーでは、抗菌仕様などを提案しています。
建物の付加価値と安全性を高めることが、我々の大切な仕事だと思っています。
新市場とローカル市場を狙う
―― ベトナムでの新しいニーズはありますか?
海保 ベトナムで需要が増えているのが防火シャッターや防火ドアです。現法設立前からこれらの市場調査を進めており、その過程でベトナム建設省に日本の建築基準法や防火について伝えて、セミナーも開いていました。ベトナムでは当時、防火の法整備を進めていたからです。
この法制化が実現して、近年では新しい建物には防火シャッターや防火ドアの使用が義務付けられ、こうした商品には防火認定が必要となりました。
防火認定品でないと商品を販売できず、この審査は毎年更新されて厳しくなっていますから、弊社もその都度認定を取得しています。ハノイに赴任した2008年にはなかったことで、ベトナムの建物の安全性向上に貢献できることをうれしく感じています。
―― ベトナム市場で他のトピックはありますか?
海保 「防火」を新しい市場とすれば、まだ市場として形成されていませんが、広がっていくと思うのは「止水」です。ベトナムでは中部をはじめ、毎年のように台風や降雨による洪水被害が起こっていますから。
止水の方法は、簡易型の止水シートやアルミ製の止水板を取り付けるなど様々です。水が流れ込むと浮力で自動的に立ち上がる、起伏式止水板もあります。ベトナムにはまだない分野で、特に製造業の工場や倉庫に活用してほしいです。
また、ホーチミン市やハノイの大都市ではこれから地下鉄が走りますし、地下スペースを持つ建物が増えています。こうした建物の地下への通路や地下駐車場の入口などでも、止水板などを使っていただきたいです。
―― 今後の計画を教えてください。
海保 日系市場を維持しながら、ローカル市場に販路を広げたいです。ベトナム国内での建設市場規模は大きいので、競合他社も多いのですが、やりがいはあります。ベトナムのシャッターやドアのメーカーはこの10年で企業規模が拡大し、技術的にも成長しました。防火検定を受けたり、外資系と仕事を始めた企業もあります
販売したいのは特に防火と止水の商品です。ベトナム社会では建物のオーナーであるデベロッパーや投資会社とのネットワークも重要ですので、こちらを攻略する方法もあると思います。
また、2016年には文化シヤッターがベトナム大手建材メーカーのユーロウィンドウの株式を取得し、弊社とは互いの商品の使用や共同開発などで協業しています。同社のローカルネットワークも活かしたいと考えています。