2016年に進出し、2017年11月から日本で人気のスナック「カラムーチョ」を発売した湖池屋ベトナム。現在では商品ラインナップが増加し、昨年10月からは輸出をスタートした。商品開発に長く携わった3代目社長の石井直二氏が語る。
数多くの新商品を開発
―― ベトナム初の商品として「カラムーチョ」を選んだのはなぜですか?
石井 世界に共通して通用する味がカラムーチョと考え、世界戦略の商品ブランドとして投入しました。既に台湾やタイにおいても発売していました。
ただ、スティックタイプにはしませんでした。全く知名度のない海外メーカーが、今までにない形の商品を出しても、冒険すぎて受け入れられないと考えたからです。そこで馴染みのあるポテトチップスとコーンにしました。
―― その後の展開を教えてください。
石井 カラムーチョのポテトをギザギザにVカットした、ベトナム語で「厚切り」を意味する「LAT DAY」を発売しました。この後はスコーンの「エビ味」と、ポテトチップスカラムーチョの「カレー味」を発売しましたが、今は終売となっています。
次に新たなシリーズとして「コイムーチョ」を始めました。最初が「コーンミルク味」、次が「バーベキュー味」、一番新しいのは昨年6月の「バターガーリック味」です。
昨年11月にはカラムーチョに「スパイシーのり味」を追加しました。のりの味はベトナム人に好まれており、商品化された菓子も多くあります。カラムーチョなのでのり味に辛みを加えています。
同じく昨年11月にはLAT DAYを新シリーズとして「ストロング」に変更し、今年3月には従来のホットチリ味に加えて「TOKYOバーベキュー味」を発売しました。これが最新の商品です。
カラムーチョもコイムーチョも、全ての商品はベトナムに合わせた味付けに変えています。辛さでは日本版よりも辛くて、タイ版よりも控えめ。コイムーチョは濃い味付けで、ベトナムオリジナルのブランドですが、日本では「スコーン」として販売しています。ただ、日本版の味は塩辛いようなので、塩味を抑えてその他の要素、バーベキュー味なら肉感、醤油、うま味などが引き立つように工夫しています。
ベトナム人スタッフの意見を聞きながら調味料メーカーなどと協議しますが、味が完成するまでには何十回ものやり取りを要することもあります。
―― 売れ筋の商品は何ですか?
石井 一番はカラムーチョのポテトチップス、2番目はコイムーチョのコーンミルク味、3番目はカラムーチョのコーンです。コーンミルク味は日本でのコーンポタージュ味がベースです。ベトナムではコーンポタージュではなくコーンミルクとして親しまれているので、ベトナム名はこちらにしました。
ベトナムのスナック菓子はポテト系よりコーン系のほうが多いですのですが、他にも小麦粉系、でんぷん系など多くの種類があります。日本ではポテト、コーン、小麦粉系の順に多く、ポテトの中でも一番売れているのは生ポテトチップスです。
ベトナムのスナック菓子市場でトップシェアのメーカーは、「Oishi」ブランドで知られるフィリピンのLiwayway Holdingsです。韓国のOrion、アメリカのLay’sを合わせた3社でシェア約9割を占めており、残りの1割をその他の企業で競っています。
その中でまずは確固たる4番手になり、その後でトップ3に迫ることが目標です。弊社のシェアは現在2~3%で、順位は5番手くらいだと思います。小麦粉系スナックは総じて価格が安く、ポテトチップスは贅沢品とも言えますが、国民所得の上昇で消費者は拡大すると見ています。
販路の開拓を推進中
―― 原材料はベトナム産ですか?
石井 ベトナム産と輸入品です。例えばジャガイモはベトナムの北部から中部で生産され、2~3月に収穫が終わります。日本の場合は収穫後に生産者、農協、商社等のサプライヤーが倉庫などで保管しますが、ベトナムの生産者サプライヤーは大きな低温倉庫などを持っていません。弊社倉庫にも限りがあるので、国産品と輸入品を併用しています
ポテトチップス用のジャガイモは品種が限られ、スーパーで売られている品種などでは製造過程で焦げが出たりします。加工に向いた品種はベトナムでは「アトランティック」などです。調味料についてはベトナム国内メーカーのものに加えて、海外メーカーの調味料を輸入しています。
生産で言いますと工場内にポテトチップスとコーン系の2ラインがあり、それぞれ生産設備が異なります。この2種類、似ているようでずいぶん違うんです(笑)。例えば、同じカラムーチョの小サイズでもポテトチップスは27g、コーンは40gで、価格は少しだけポテトチップスのほうが高い。
日本も同様ですが、理由はジャガイモとトウモロコシの原材料費の差であり、ポテトチップスの製造ラインでは多数のスタッフが手でジャガイモを切る、選別するなどの人件費もかかっています。
―― 販路はどのような店舗でしょう?
石井 スーパーマーケットやコンビニなどのモダントレードと、パパママショップなどのトラディショナルトレードがあります。
前者では日系を含めた数多くのスーパーやコンビニと取引していますが、各社の全店舗に導入というわけではありません。本部が了解しても仕入れ商品を決めるのは各エリアや店舗の担当者ですから、彼らに納得してもらって、カバー店舗数を増やしていくことが課題です。
モダントレードは順調ですが、ベトナム小売市場の8割程度と言われるトラディショナルトレードは厳しいですね。大抵が小さな個人商店ですから、そもそも商品を置けるスペースが少なく、各社で奪い合うようになります。
しかし、多くの店主さんは現在売れているならそのままで良いと考え、特に弊社のような新参者ですと新しい商品に中々チャレンジしてもらえません。弊社の従業員約320人中の半分以上が営業職であり、彼らがこちらの開拓も進めています。
―― 輸出を始めたと聞きました。
石井 昨年10月から、カラムーチョ「スコーン」のホットチリ味をタイに輸出しています。湖池屋の販売会社がタイにあり、これまで地場のスナックメーカーへ生産委託していたポテトチップスに加えて、ラインナップを増やしました。
今年の5月には2番目としてEUへの輸出をスタートしました。商品はカラムーチョのポテトチップスで、平らなフラットと、厚切りVカットの2種類になります。
新商品についてはもちろん準備を進めていますが、今後については秘密です(笑)。今は既存品をしっかり販売するとともに、輸出も事業の柱として伸ばし、状況を見ながら新しい展開を考えたいと思っています。
そのためにはベトナムでの知名度を上げたい。「辛いスナックと言ったらコイケヤだね」と呼ばれるようになりたいですね。