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【社会】火災よりも窃盗を恐れるベトナム人

(C) VNEXPRESS

ベトナム人は、火災よりも窃盗を恐れているようだ。自宅の防犯対策への出費は惜しまない一方で消防対策には、お金を使いたがらないのだ。

3000万VNDを費やして防犯用の”虎の檻(窓などに設置する鉄柵の総称)”と監視カメラを設置したにもかかわらず、ミーさんは消火器や火災警報器は不要だとして断固購入を拒否した。

2年前、ハノイ市コーザイ地区に住むアイン・ミーさん(40歳)の家に5階のバルコニーから泥棒が入ったことがある。その後、ミーさんは5台の監視カメラを購入して各階に設置し、バルコニーと窓には鉄柵を設置した。これは、この家に住むミーさんの家族10人が家から避難する際に出入りできるのは玄関だけになったことを意味している。

窃盗対策には出費を惜しまなかったミーさんだが、地域の自治体が各世帯に消火器と火災警報器の設置を呼び掛けたには、もったいないと言って断った。「もし、消防設備を設置すれば数百万VNDかかりますが、使うかどうかわかりませんし、長い間放置すれば壊れてしまいます」とミーさんは話す。ミーさんによれば、家の防火対策は家族全員が家を出るときにはブレーカーを落とす、夜中に電子機器の充電をしない、可燃性物や爆発物を家に保管しないという意識を持てば十分だという。

ミーさんの家だけでなく、周りの住宅の90%以上が防犯対策と子供の転落防止のために窓に鉄柵を設置している。

ハイフォン市ハイアン区に住むフーン・フンさん(32歳)は、子供の面倒を見るために義母が同居するようになると、夫婦が仕事に行っている間に泥棒が侵入するのを防ぐため、各階のバルコニーを覆う”虎の檻”をすぐに設置させた。

ハイテク愛好家でもあるフンさんは、さらに指紋認証のドアロック、カメラ内蔵型のインターフォンなどを設置して、防犯対策に1億VND(約58万円)近くを費やした。

友人たちからどうして家に火災警報器、熱センサー、消火器を設置しないのか聞かれたフンさんは、必要ないからだと答えた。「防犯対策は非常に難しいですが、火事は見つけたらドアを開けて外に逃げればそれで済みます」とフンさんは話す。

ハノイ市消防・救急センターのファン・チュン・ヒウ所長は、市民が火災対策より防犯対策を重視する傾向は長年変わらない事実だと認めた。「多くの市民は”虎の檻”を設置したり監視カメラを設置するための費用は惜しみませんが、火災対策のために火災警報装置はもとより、消火器ですら購入する人は滅多にいません。我々は、常に火災対策の必要性を訴えていますが糠に釘と言った感じです」とヒウ所長は話す。

2021年にハノイ市人民委員会は、個人の住宅と製造や販売活動を備えた住宅に関する消防対策規定を発行した。それによれば、6階建て以上か地下1階がある建物で避難経路が玄関のドアしかない場合、少なくとも1か所の別の避難経路を確保しなければならないとされている。

避難経路が鉄柵や金網で覆われている場合、人が出入りできるように少なくとも0.6×0.8mの侵入口を設置している必要がある。6階建て未満の個人住宅の場合、現行の法令では避難経路に関する具体的な規定は存在しない。消防法では、”住宅の電気システム、台所、神棚は安全な場所に配置しなければならない。可燃性物や爆発物は、火元や熱源から離れた場所に保管しなければならない。火災発生に備えた設備を準備しなければならない。”とのみ規定されている。

ハノイ市消防・救急センターの統計によればハノイ市内の約70%がチューブハウスの形状をしている。また、数十万件の住宅が何らかのビジネスに兼用されており、避難通路は入口だけとなっている。

ヒウ所長は多くの火災現場に遭遇してきた経験から、火災が発生した場合、避難したり消火したりするためのゴールデンタイムは、最初の2,3分しかないと話す。警報装置や消火設備が無く、避難訓練も十分でなければ、虎の檻を外すには時間がかかり過ぎ、生命と財産に深刻な被害をもたらす可能性が高くなる。「火災の恐ろしさを頭ではわかっていても、ベトナム人が火災より窃盗を恐れる傾向はあまり変わっていません」とヒウ所長は話す。

ベトナムでの防犯装置や監視カメラと消防設備の売れ行きの違いは、このベトナム人の考え方が大きく影響している。

2021年のベトナムの防犯カメラの販売台数は400万台以上で総額は5400万USDを超えている。また、シンガポールとベトナムは、住宅の監視カメラ設置比率が世界トップ10に入るほど高い。

ベトナムの鉄工所も住宅の避難経路を遮断する鉄柵の製造需要が増加し続けている。

多くの作業員が”虎の檻”の設置需要が毎年増加していると話す。チューブハウスだけでなく、防火設備が整っておらず電線が絡まり火災が発生しやすい集合住宅でも頑丈な鉄柵が設置されている。「鉄柵を設置する前に住人には安全を確保するため避難経路を確保するようにアドバイスしています。しかし、90%以上の人が避難経路から泥棒が侵入してくるのを恐れて提案を拒否します」とハイフォン市で鉄工所を営むチャン・フォンさんは話す。

防犯装置市場の盛り上がりとは逆に、消防設備の販売先はマンション、工場、商業施設などの大型発注に限られるとハノイ市で10年以上にわたって消防設備の販売店を経営しているグエン・バンさんは話す。一般住宅で消火器や警報装置を購入しに来る客は、両手で数えるくらいしかいない。「消火器を買いに来る人は滅多にいません。火災警報装置に至っては売り上げは、ほぼゼロです。」とバンさんは話す。

バンさんは、一般家庭が消防設備を購入しない3つの理由を説明してくれた。まず一つ目は、心理的な油断だ。2つ目は実際に使うかどうかわからない消火設備にお金をかけたくないこと。そして3つ目の理由は、一般家庭に消防設備の設置を義務付ける明確な法令が存在しないことだ。このような理由で、消防設備を販売する店舗は、一般家庭に対して数十万VND~数千万VNDの消防設備を販売できずにいる。

「過去に数多くの悲惨な火災事故が発生したのは、このようなベトナム人の火災を甘く見る考え方のせいでもあります」とヒウ所長は話す。

火災現場の様子
(C) VNEXPRESS

公安省の統計によると2022年から過去5年間に全国で1万7000件以上の火災が発生し、433人が死亡している。火災が発生した地域は都市部が60%を占めており、火災原因の1位は、電気設備、電気システムの故障(45%)によるものだ。2023年の1月から4月までをみても、全国で522件の火災が発生し、死傷者は46人にのぼる。これは1日平均4件の火災が発生している計算だ。特にチューブハウス、集合住宅、住宅に隣接した倉庫や製造工場で発生した火災は、人命と財産に重大な損失をもたらしていることに注意する必要がある。

このような状況を前にヒウ所長は、市民に対して”窃盗対策はしつつも火災の避難経路は確保しなければならない”と警告する。消防と救急に関する知識を最新の状態にアップデートしておくことに加えて、各家庭で最も使いやすい場所に消火器、ハンマー、縄梯子などを準備しておき、”虎の檻”から脱出する方法を確保しておく必要がある。

「火災はどこでも発生する可能性があると考えて、火災を恐れる気持ちを持つことができれば、火災を防ぎ、被害を最小限に抑える方法を見つけることができるのです。」とヒウ所長は話す。

ハノイ市に住むゴック・トゥイさん(30歳)は、以前は消防対策よりも防犯対策の方が重要だと考えていたが、近所の家が漏電による火災で数十億VNDの財産を失ったのを目の当たりにして、自宅に火災警報装置をつけることにした。

トゥイさんは消火器、火災警報器、ハンマーなど基本的な消防設備一式が入った消防セットを100万VND購入して、自宅のわかりやすい場所に設置した。自宅の3回の”虎の檻”も作業員を呼んで、非常口を開けるようにお願いした。非常口のカギはその近くに隠し、家族全員にその場所を教えた。

「私たち一人一人が消防意識を高めれば、悲惨な事故は起こりません」とトゥイさんは話す。

出典:22/05/2023 VNEXPRESS
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