企業の受注状況が回復の兆しを見せておらず、多くの工場が人員削減に追い込まれている。
ホーチミン市7区のタントゥアン輸出加工区で電子部品を製造しているF&P社で働くチャン・キム・フーンさんは、夜勤の仕事が終わって家に帰ると、14時に会社に来るよう人事部門から連絡を受けた。その翌日から、フーンさんは、工場に出勤する必要がなくなった。会社との労働契約は4月まで有効だが、会社は手当とボーナスを含め約3ヶ月分の給与を全額支払ってくれた。
2月末に職を失ったフーンさん(25歳)は、6か月近く待機してようやく就職できた会社だったので、ショックを受けた。2021年5月にこの会社が求人募集をおこなっていたので、フーンさんは応募書類を提出した。その後、新型コロナの感染拡大によって、ホーチミン市は社会隔離措置を実施し、就職が宙に浮いた。10月になって社会隔離措置が緩和されるとフーンさんは、基本給500万VNDでこの会社で働き始めた。
人事部から会社に呼ばれる2日前に、フーンさんは、基本給が600万VND近くに引き上げられると知らされた。しかし、フーンさんはその知らせに喜ぶ暇もなく解雇されてしまった。フーンさんが受け取った退職金の総額は2100万VNDだった。
「他の人からするとまとまったお金が入って羨ましいと言われますが、安定した仕事がある方が良いですよ」とフーンさんは話す。既にいくつかの会社に求人応募書類を送付しているが、まだ返事は来ていない。
F&P社は、受注状況が改善しないので約80人の従業員との契約を解除する必要があったと説明する。しかし、会社側は2~4か月前には従業員に対して通知をおこない、その期間は工場に出勤しなくても、給料と手当は全額支給している。
「労働者を待機室に入れて、時間つぶしの作業をさせる代わりに、当社は、労働者が事前に準備して新しい仕事を探せるようにするために早期通知することにしたのです」とF&P社の代表は話す。今回、契約更新されなかった労働者には、残りの有効な契約期間に応じて2~4ヶ月分の給料が支払われた。
トゥードゥック市リンチュンⅡ輸出加工区で革靴製造をおこなっているR.L VN社は、受注量が以前の30%まで落ち込んだため、労働契約を更新しないという形で2000人以上の労働者を削減しなければならなくなった。
この会社では、昨年末から受注の減少を受けて、生産ラインを整理縮小した。しかし、テト以降も状況は悪化し、受注は大幅に落ち込んだ。そのため、同社では、労働契約が終了する全ての従業員との労働契約更新を打ち切った。このような状況のため、労働者には、いかなる形の支援もおこなわれていない。また、会社は、法律によって強制されていないことを理由に、管轄機関への労働力使用計画を提出しなかった。
「現在、会社には長期契約の社員しか残っておらず、今後どうなるかは不透明です」とこの会社の労働組合代表は話す。残った従業員は、以前の約半数の3000人程度だが、それでも仕事量は十分でなく、金曜日と土曜日は休みとなっている。同社の経営陣は、代わりとなる新たな顧客探しに奔走しているが、今のところ見通しは明るくない。
短期的に労働者を削減する必要に迫られているのはR.L VNやF&Pだけではない。ホーチミン市社会保健局の統計によれば、2023年最初の2か月間にホーチミン市内の企業は約3万4000人以上の労働者を削減している。なお、この数字にはPou Yuen Vietnam社が解雇した2358人は含まれていない。ホーチミン市職業サービスセンターのデータによれば、この期間に失業手当を申請した人の数は1万6300人以上となっている。この数字は、2023年中に約14万人まで膨れ上がり、失業者数は50万人を超えるとみられている。
ホーチミン市社会保健局のチャン・ズン・ハー副局長によれば、失業者が田舎に帰省し戻ってこないため、ホーチミン市の社会保険加盟者数は、今後減少するとみられている。一方で、今年は世界経済の低迷の影響によって、企業の受注量は減少し、生産規模の縮小と労働者の削減は継続するとみられている。既に今年の1月末までにホーチミン市内の企業1300社以上が、廃業、破産、操業停止状態に追い込まれている。
一方で、ホーチミン市労働・傷病兵・社会局のグエン・バン・ラム副局長は、ホーチミン市内の労働状況はまだ安定していると評価する。縫製、履物、木材加工などの分野では、世界経済の影響を受けて受注が減少しているが、各業界団体は、今年の6月から7月ごろに状況は改善するとの見通しを示している。現在、Pou Yuen Vietnam社が2300人以上の労働者を削減した以外にも、複数の企業が人員整理計画を提出しており、管轄機関が内容を精査している。
ベトナム皮革・履物・鞄協会(Lefaso)のファン・ティ・タイン・スアン副会長は、現在この業界には2000社以上の企業が存在し、150万人以上を雇用していると述べた。これらの業種では、現在受注量が以前の30%まで減少しており、コストを削減し生産ニーズに合わせるため、多くの工場が人員削減の必要性に迫られている。このような状況が続けば、景気が回復した後、企業は労働者不足という問題に直面する可能性が高い。
ベトナム労働総同盟のデータによれば、昨年9月から今年1月末までに1300社以上の企業で働く54万7000人近くの労働者が、受注量の減少によって労働時間の短縮や停職に追い込まれている。このうち49万1000人の労働者の場合は、労働契約は継続し、基本給が支払われているが、7000人は労働契約が停止され、4万8600人以上が失業状態となっている。受注減少の影響を受けている労働者の約75%が外国投資企業に勤めており、特にベトナム南部の縫製、履物、木材加工分野に集中している。
出典:07/03/2022 VNEXPRESS
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