高校2年生で妊娠していることが分かったとき、ホン・ホアさんは、将来のことを考えると不安で夜も眠れなくなった。
コントゥム省のある町で二人姉妹で育ったホン・ホアさんの両親は公務員で、これまでは何の不安も感じずに勉強に励んでいた。「妊娠したことが分かるまではですが・・・」と現在26歳になったホアさんは話す。
ホアさんの恋人は3歳年上だったがホアさん以上に世間知らずだった。妊娠が分かっても二人は誰にもそのことを話さなかった。「妊娠4か月目に入るともう隠しきれませんでした。母に産婦人科に連れていかれると、お医者さんは、もはや生むしかないと言いました。」とホアさんは話す。結局、ホアさんは高校を2年で中退した。
新婦が結婚可能年齢に達していなかったので、結婚式は新郎の家で家族だけでおこなわれた。結婚して数週間がたって、ホアさんは、結婚した相手が無責任な遊び人だということに気付いた。「彼は、結婚式のご祝儀を全部持って行っただけでなく、母が私にくれたバイクも売り払って遊びに使ってしまいました」とホアさんは話す。
学校の友達が高校3年生になったころ、ホアさんは出産と育児のために家にいた。1年後、ホアさんは学校に戻ることにした。毎朝、ホアさんは朝5時に起きて赤ちゃんのオムツを替えてミルクを作り、母親に子供の面倒をお願いしてから学校に行った。昼休みになると、ホアさんは授乳のために家に帰り、その後学校に戻った。子供が病気の時には、一晩中起きていなければならない時もあった。
勉強と子供の世話を両立しながら、遊び人の夫に頭を痛めていると、ホアさんは自分が人生に行き詰っていると感じるようになった。結婚してから1年の間にホアさんは赤ちゃんを実家に10回以上連れて行った。自分の人生が行き詰まっていることを感じたホアさんは、離婚することを決め、夫との争いを避けるために子供を実家の両親に預けることにした。
ホアさんのような妊娠に繋がる10代の性行為は、現在、ベトナムの大きな社会問題となっている。2021年にUNICEFがベトナムで実施した調査によると、思春期の若者の8.9%が自分より10歳以上年上の相手との性行為経験があると回答している。
ベトナム保健省と世界保健機関(WHO)が実施した子供の健康に関する調査では、初体験が14歳未満だと回答した子供の割合は、2013年の1.45%から2019年には3.51%と2倍以上に増加した。
Population Services International (PSI) による別の調査では、未婚のベトナム人女性(15歳~24歳)の10%以上が、少なくとも1回は望まない形での妊娠を経験していると推定されている。
青少年技能開発センターの教育専門家であるグエン・レ・トゥイ氏は青少年の妊娠の主な原因は、子供に対する性教育と感情コントロールスキル教育の不足が主な原因だと指摘する。一方で、最近の子供達は、インターネットを通じて、性に関する不適切な動画や画像に簡単にアクセスできるようになっていることも問題になっている。
「学校での性教育はあまり重視されていません。また、子供達の早熟化が恋愛や性行為の若年化、10代の妊娠の要因の一つになっています」とトゥイ氏は話す。
あまりにも若い時期に母親になると、母親としての身体的能力やスキル、困難を乗り越える経験が不足しているため、精神的に追い詰められやすくなる。また、友達が学校に通っているのに自分は子供の世話をするために学校をやめざるを得なくなると若い母親の自尊心が傷つきやすくなり、時に罪悪感を感じる。ホンホアさんのように学校に戻ったとしても、多くの困難が待ち受けており、他の子供達のスピードにはついていけなくなる。
「若すぎる母親は、自尊心の低さや社会的偏見によって、社会的な関係を築くのが難しくなり、人生への信頼を失いやすくなります。彼女たちは、何度も困難に直面し、昔のように人生に希望が持てなくなるのです。」とトゥイ氏は話す。
ホン・ホアさんは、自分が妊娠していることが分かったときに、今後は、友達や先生、周囲の人たちが自分をこれまでとは違った目で見てくるのではないかという恐怖で起き上がれなくなった。「当時は近所の噂話が怖くて、家の中に閉じこもってどこにも出かけることができず、両親を悲しませてしまっていたことを申し訳なく思っています。」とホアさんは話す。
母親がホアさんが学校に戻れるように頼んだ時、学校側は「彼女には子供がいるのに何のために学校に戻るんですか?」と告げてきた。しかし、両親の必死の努力によってホアさんは学校に戻ることができた。大学に進学してから、ホアさんは同級生に恋をした。しかし、ホアさんに子供がいることが分かると、周囲が反対し、彼はホアさんと別れた。
専門家は、人生の経験不足が10代の母親にとって最も大きな問題の1つだと指摘する。
ソンラー省に住むトゥー・アンさん(23歳)は、夫の家族から結婚を申し込まれた日のことを思い出して泣き笑いした。当時、アンさんはまだ15歳だったが、母親から家族が貧しく子供を養うことができないという理由で学校を辞めて結婚するように勧められた。夫の家族が結婚の申し込みにやってくると、アンさんは母親に「これで私は結婚したことになるの?もう、他の男とはデート出来ないの?」と聞いた。母親は「いい年をしてバカなことをいうんじゃない」と叱り、結局、結婚することになった。
現在、アンさんも夫も畑仕事をしながら野菜とお粥で二人の子供を育てており、村から出ることは殆どない。ただ、2人の子供の出産と1回の流産によってアンさんは夫ほど畑仕事はできない。アンさんはよくSNSの人生相談グループに参加し、自分は不器用な人間だとわかっているが、夫や夫の家族から弟の嫁ほど大切にされていないと愚痴をこぼす。
「私の料理は夫の家族の口には合わないし、子供の世話をすればウンチまみれにしてしまいました」とアンさんは嫁入り後の日々を振り返る。
アンさんの故郷では、児童婚が依然として盛んだ。2021年に結婚した8127組のうち、1020組以上が児童婚だった。「12歳で子供を産んだ子がいて、その赤ちゃんは数ヶ月で死んでしまいました」とアンさんは話す。
先月、フートー省のタンソン地区で12歳の女の子が出産した。地元の役所によれば、この女の子の家族は貧しく、両親は出稼ぎで遠く離れているので、子供の面倒を見る時間がほとんどなかった。「この子は11歳で体重が50kgもあり、見た目は女性でした。妊娠6~7か月になっても妊娠したことに気づいておらず、飛び跳ねたり自転車を乗り回したりしていました。」と地元の役所の担当者は話す。娘のお腹が大きいことに気付いた母親が急いで病院に連れて行ったところ、もうすぐ孫が生まれることが分かった。
「我々は、赤ん坊とその家族をサポートします。母親は12歳になったばかりですが、これから赤ん坊の世話を学ぶ必要がありますから」とこの担当者は話す。
青少年技能開発センターの教育専門家であるグエン・レ・トゥイ氏は、10代の母親だけでなく、生まれてくる子供も連鎖的な結果によって、将来に影響を受ける可能性があると指摘する。「母親が身体的に十分成熟していない段階で産んだ子供は、健康に問題があることが多くあります。例え健康状態に問題が無くても、10代の母親の注意不足によって赤ちゃんが困難な問題に直面することも良くあります」とトゥイ氏は話す。
ホン・ホアさんの息子は、母親から「早熟」だと思われている。母親が常にそばにおらず、父親は遊び人なので、この子は他の子供達より早熟になると考えているようだ。「息子のためにネックレスを買ってあげましたが、酔っ払った旦那が全て奪い取りました。なので、今は大事なものは別の場所に保管するか、母親に預かってもらっています」とホアさんは話す。
社会生活研究所のグエン・ドゥック・ロック准教授は、10代の母親の増加は若者達だけでなく、社会全体に影響を与える可能性があると警告している。また、この問題は、社会における家族のあり方を変えてしまう可能性がある。
トゥイ氏は、10代の母親たちに赤ん坊に罪はなく、母親の愛情が必要なので、赤ん坊を深く愛し、イライラをぶつけたりしないようにアドバイスしている。10代の母親たちは、困難を受け入れて乗り越える方法を学ぶ必要があり、そのためには不安や悩み事を相談できる信頼できる人物を自分の周囲で見つける必要がある「より良い未来を信じて努力を続け、周りの人たちのサポートがあることを忘れないでください」とトゥイ氏は話す。
ロック准教授は、家族全員が一緒に生活する方法を再確認し、お互いに助け合う必要があると指摘する。両親は子供達の変化を積極的に理解する必要がある。両親が子供達と身近に接し、適切なアドバイスを与えることで、不必要な間違いを防ぐことができる。「結局のところ、親というのは子供にとって最高の心理学者なんです」とロック准教授は話す。
ホン・ホアさんは、現在、大学を卒業して安定した仕事に就いており、両親のサポートを受けながら子供を育てている。過去の失敗の経験から、ホアさんは、再婚を焦らないことにした。
「10代の若者たちには、親の言うことをよく聞いて、一生懸命勉強して明るい未来を手に入れ、私のように無知で浅はかな青春時代を過ごさないでほしいです」とホン・ホアさんは話した。
出典:22/03/2022 VNEXPRESS
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