時間と場所の制約が少ない仕事に就きたいと考える工場労働者が増えており、製造業各社は事業拡大に伴う人材の確保に苦労している。
レ・スアン・チューンさん(23歳)は、ホーチミン市7区の輸出加工区にある工場で3年働いた後、美容師の技術を学ぶために仕事を辞めて配車アプリのバイクドライバーに転職することを決めた。仕事を辞める前のチューンさんの基本給は約490万VNDで、残業をすることで月収は1000万VNDちょっとだった。
チューンさんによると、この収入は独身男性として生活するのには困らない額だが、製造現場に12時間もいる必要があるので、いつも閉そく感を感じていた。美容師になるのが夢だったチューンさんは、工場での仕事を辞めて、配車アプリのドライバーに登録した。新しい仕事は、時間に制限がなく、自分の好きなキャリアを追及することが出来る。
同様に、自由な時間に働けることを希望してチャン・ティ・キウ・リンさん(36歳)も季節労働者として働くことを決めた。リンさんは日給35万ドンで働いた日数の給料を週末に会社から受け取る。季節労働者であるためリンさんは、家族の事情などで仕事を休む時はマネージャーに会社に行かないと報告するだけでよい。仕事の日も8時間働けば、すぐに帰宅できる。
リンさんによると夫は職人で仕事の時間が不規則なため、子供の送り迎えなどのために時間が自由になる仕事を探していたそうだ。「もし正社員になると、工場で残業があるのに拒否するのは難しくなります。」とリンさんは話す。さらに、もし職場の環境が良くないと思えば、正社員のように30日前に通知する必要もなく、別の仕事に移ることが出来る。
同じ工場でこのような働き方をしているのはリンさんだけではない。この工場のファン・クアン・アイン社長は、COVID-19以前は、労働者は安定した仕事を望み、社会保険への加入を重視していたが、2022年以降は逆に労働者は、期間工のような働き方を希望する人が増えたと指摘する。
「最近の求職者が工場に尋ねる最も多い質問は、給料が月給か週給かというものですよ。」とアイン社長は話す。労働者は工場で長期間働くことを望まず、管理者の指示が細かい、残業しなければならない、食事が会わないなど些細なことを理由に不満があればすぐに辞める。
アイン社長の意見は、6月上旬にViec lam totのウェブサイトが公表した調査結果と一致している。1300人以上の労働者への調査で、60%以上が現在の職種とは異なる職種への転職を希望している。彼らの多くは、オンライン業務、自宅内職、販売員、ドライバー、配達員など比較的時間が自由な仕事を探す傾向にある。
最近になってManpower Groupが発表した2022年の労働市場レポートでは、49%の労働者がより良い条件の仕事への転職の準備を進めていると回答した。また、女性労働者の50%近くがCOVID-19発生以前と比べて、自分のキャリアの将来性に不安を感じていると回答した。更にこのうち、57%は2年以内に転職する予定とも回答している。
このような回答が出る背景には、労働者がより良い福利厚生、時間や場所の制約が少ない仕事、適切な給与、より良い職場環境を求めていることがある。
アイン社長は、製造業では最も基本的な労働条件として、労働者が製造現場に来る必要があると指摘する。労働者の仕事は、製造機械と結びついており、現場を離れることはできない。「この条件が工場労働者の採用を難しくしています。」とアイン社長は話す。技術のある期間労働者に対して工場は、福利厚生や社会保険加入が保証される正社員契約を提案するが、多くの労働者が断わってくる。
「労働者が期間労働を求める場合、工場側は労働力の管理に非常に苦労します。」とアイン社長は話す。このような状態が続けば、工場は長期的な生産計画と品質管理について、大きな困難に直面することになる。
Manpower Groupと労働省傘下の労働・社会科学研究所が共同で実施した別の調査では、製造分野のFDI企業の21%が2021年から2023年の段階で十分な労働者を確保することが困難になると回答している。
ベトナム縫製業労働組合のグエン・ティ・トゥイ副会長によると、今年、縫製業は非常に多くの注文を受けたが、対応できるだけの労働力を確保できなかった。特に若者の採用が非常に難しくなっている。また、縫製業の経験があり機械を操作できる人材やパターンのデザインが出来る人材なども採用が非常に難しくなっている。
現在、多くの縫製工場では従業員の平均年齢が41~42歳となっており、若い労働者がほとんどいない。逆に年齢が高い労働者は、別の仕事を見つけるのが難しかったり、定年まで働こうという考えがあったりで、会社に定着している。労働力が不足しているため、従業員数が1000人未満の規模の工場では、大量生産の注文を受注することを躊躇い、少量で低価格の注文を受けざるを得なくなっている。
「このような状況は製造活動を不安定にし、それによって労働者の収入も不安定になり、新しい労働者を採用することが更に難しくなります。」とトゥイ副会長は話す。
トゥイ副会長によると、縫製業の工場は、毎年平均10%の労働力を失っている。新規採用する労働者数は、退職した労働力の不足を補うだけで、更なる発展に発がらない。工場が製造規模を拡大したい場合は、新しい技術への投資が必要不可欠になる。各企業は、製造業がもはや労働者にとって魅力的な職場でないことを受け入れ、適切な対応方法を検討することを迫られている。
Man Power Groupの採用部門担当役員であるグエン・ティ・トゥー・チャン氏は、製造業の人材不足を解決するために、事業主は競争力のある給与体系を構築し、長期で働く労働者のために職場環境と健康管理を改善する必要があると指摘する。
一方で、企業が期間労働者を積極的に活用するという考え方もある。このような労働力は、企業が絶えず変化するビジネス状況に応じて、必要な労働力を柔軟に確保することを可能にし、労働者を正規採用する場合に比べて大きなコスト削減につながる可能性もある。現在、製造業での正社員と期間労働者の平均的な割合は85:15だが、将来的にはこれは75:25となり、最終的には50:50まで進む可能性がある。
出典:22/06/2022 VNEXPRESS
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