食品と飲料、関連するパッケージまで含めた国際展示会「Vietfood & Beverage – Propack Vietnam 2023」が8月10~12日に開催された。場所はホーチミン市7区のSECC、3日間の総来場者数は約2万5000人。どんな展示会なのか?
各国が競う多彩なブース
総面積2万㎡の会場に20の国と地域から約700社、およそ800のブースが集まった。国際パビリオンはインド、ポーランド、台湾、韓国、ギリシャ、インドネシア、ロシア、シンガポール、タイ、中国の10があり、多種多様な商品が並べられた。
A1ホールから入るとロシアのブースが勢揃い、「RUSSIA」の文字がそこかしこに見える。チップス、チョコ、キャンディ、スイーツなどから高級酒、加工肉、缶詰、チーズ、パスタ、調味料まで展示しており、ベトナムに拠点がないのかロシア人らしき人たちが対応している。
その近くには中国の小さなブースが並ぶが、中に進むにつれて次第に中国ブースが増加し、A2ホール奥のProPackが集中するエリアは中国とベトナムのブースだらけだ。ProPackではボトリングマシン、パッキングマシン、ラベリングマシンなどのマシンやその部品を展示しており、全体の総数では中国に存在感があった。
ロシアの裏手から韓国のブースが広がる。5~6社の出展企業を横に並べて1つのブースを作り、前面に「KOREA」と大きく表示するスタイルが多い。共同出展なのだろうが1社ごとに分けるよりはるかに目立つし、デザインセンスも良くなる。展示品はキムチ、菓子、海苔、インスタント食品、アルコール、ジュースなど様々だ。
1国で1ブースだけ、しかし大型のパビリオンを作っていたのがシンガポールとインドネシア。シンガポールは点心の素材や冷凍食品、健康ジュースなどで、インドネシアはナッツ、スナック、クッキー、食用種、ジュース、お茶などを展示。国としてブースの個性が出せるし、集中出展するから展示品が多彩になる。集客の1つの方法だと感じた。
願わくば「梅酒」を「CHOYA」に
ベトナムでもよく見かける梅酒のチョーヤ(CHOYA UMESHU SOUTH EAST ASIA)が出展。小さいブースながらいくつもの種類の商品を並べ、来場者を集めていた。昨年から出展しており、前回より人が多くて反応も良いとのこと。国際酒類コンペティションでリキュール世界一を受賞した商品もあり、その場で購入する人も多くいた。
「ベトナム市場は並行輸入品を含めてASEANでトップです。かなりの売上があります」
公認の並行輸入では大口の企業もあり、これらがローカルの酒屋を中心に卸しているそうだ。ただ、ベトナムへの浸透はうれしいが、別の悩みがあるとか。
ベトナムではグリーンボトルの商品がメインで流通しているが、これを他国で人気の高級品「THE CHOYA」に変えていきたい。また、他国では梅酒は「CHOYA」と呼ばれているが、ベトナムでは「Umeshu」で広がっている。今さらだが「CHOYA」としたい。
「そのための出展であり、目的はブランドの認知度向上です。すぐには無理でも徐々に変えていきたいですね」
ステンレス技術で出汁サーバー
ベトナムでの展示会に初出展したのが日本からの株式会社精和工業所。ステンレスを使った産業機器、医療機器、住宅設備などの溶接加工品を製造しており、展示したのはうどん出汁サーバーとみそ汁サーバーだ。
うどんであればセットしたうどんの濃縮出汁パックとお湯を混ぜて、ワンプッシュで一杯分を注ぐ。製品は日本からの輸入品で、マシンの販売を目的に7月にベトナム法人を立ち上げた。
「ベトナムのホテル、うどん店、食事のできるカフェなどを対象と考えて、代理店も探しています。マシンは既にベトナムの倉庫にあります」
日本の大手メーカーに納入しているステンレスの加工技術を活かして、これらのサーバーを開発した。海外展開は初めてで、ベトナムで働く日本人と知り合ってベトナム進出を決めたという。今後はうどん出汁やみそ汁の素など、食材込みでのサーバー販売を検討している。
「日本食が人気なためか寄ってくれる人が多く、配っているチラシが足りなくなってきました」
高麗人参のマーケティング
神鋼商事株式会社は長野県の諏訪で採れた高麗人参とナツメの加工品を展示。高麗人参は葉を粉末状にしたもので、飲料やヨーグルト、野菜などと一緒に摂取する。ナツメは瓶詰のジャムにした。
「ベトナムでまだ販売していない商品で、マーケティングと代理店や問屋を探すことが目的です」
高麗人参の葉のパウダーはベトナムでは韓国製が多く、日本製は珍しいので興味を持たれるそうだ。韓国製よりも苦いので、その苦さがなぜ体に良いのかを説明している。
ナツメのジャムは少し酸っぱく、少し甘い。試食の後では砂糖を使わない天然の風味が良いと言われる。健康についてはやはり若者より年配者が気にするそうだ。
「将来は販売を目指しますし、スーパーや病院などへの販路も考えられますが、まだその段階ではありません。この展示会で試したいです」
不織布の製品を国内市場へ
ハナム省に工場を持つHASHIMOTO CLOTH VIETNAMは各種工場や飲食店向けに不織布を使った製品を生産している。ワイピングクロス、業務用ウェットティッシュ、ヘアキャップ、除菌ワイパーなどで、今回のターゲットは食品関係のベトナム企業と商社だ。
「この展示会は初めてです。興味を持って覗いてくれるベトナム人の方が多いですね」
日本への輸出が基本だが国内市場も開拓中で、ベトナム製に比べて高品質なので差別化できると考えている。日系企業には納入しているので、ベトナム企業への知名度を高めたいと出展した。
ニーズをつかめる感触があり、勝負できると考えている。ただ、「高品質で不良品のない優位性」が、「質は悪くてもいいし、不良品は捨てるだけ」といった考え方にどこまで対抗できるのか。
「安かろう悪かろうと考えるベトナム企業も多く、それをどこまで変えさせるかがカギだと思います」
「新時代の原料屋さん」と共に
SECCの会場横の敷地にはに巨大な野外テントが3つあり、A-3、A-4、A-5のホールが並んでいだ。A-5にいくつかの日系企業が出展していたので訪ねた。
SHOWA JUSHI VIETNAMとHUARI (VIET NAM) PRINTING AND PACKAGINGは北部からの共同出展。前者はプラスチック成型メーカーで、後者はその素材となるプラスチック原料を生産している。
HUARI (VIET NAM)の製品は通常のプラスチック原料に破砕米や古米を交ぜていることが特徴。植物成分を増やして石油成分を減らすことで環境負荷の低減に効果がある。ベトナムで生産しているが、一般的な原料よりも生産コストが1.3~1.5倍上がるので、日本などへの輸出向けがほとんどという。
「ベトナム企業やベトナムの日系企業でも採用は難しく、引合いが多いのはシンガポールやマレーシアなどある程度の所得がある国です」
米を使うことから製品はお焦げのような焦げ茶色になり、その匂いも少しある。そのため、食品のトレーやテイクアウトの容器なら親和性があると今回の出展を決めた。
SHOWA JUSHI VIETNAMはホーチミン市での知名度を高めたいと、「新しい時代の原料屋さんと組んで出展しました」。この展示会は初めてで、前週に出展した南部の展示会よりも来場者数は体感で3倍多く、問合せも多いそうだ。
「食品や調味料の容器を中心に展示しています。うちはこうした膨らませる製品が多いのですが、マヨネーズやドレッシングのメーカーさんなどが訪れてくれます」
長期間保存の保冷ボックス
ASTEE HORIE VNはプラスチック製品の塗装が主業務だが、新たなプロジェクトとして保冷ボックスを開発し、昨年から展開している。
保冷剤だけで最長5日間低温を保つ特殊な保冷箱で、従来品よりも長期間保存できるため冷蔵車両などを使用せずに済み、物流コストを抑えられるという。
ただ、思ったよりも訪問者が少なく、特にターゲットである物流や運送関連の来場者が少ないように感じていた。
「昨日も今日も平日なので運送関係者なら制服で来そうなものですが、私服の方がほとんどです。一般消費者や個人事業主が多いのかもしれません」
飲食展示会はやはり楽しい!
良くこれだけ、食品や飲料に関連する企業が集まったと思う。珍しい食べ物や飲み物はそれだけでも好奇心がわくし、スナック、クッキー、ソーセージ、ジュース、調味料など、同じ商品でも国が違えば味もパッケージデザインも随分異なる。試食や試飲ができるからか笑顔の人が多い。
これらに比べるとPropack Vietnamは地味な印象だが、来場者が減るなどはなく、業界関係者らしい人たちを中心に来訪や質問が続いていた。
今年後半にはベトナムの景気が回復するという推測も出ている。飲食関連にその兆しが見えれば実現に一歩も二歩も近づいていく。