皆様ご存知の通り、ベトナムを取り巻く景況感は決して良いとは言えません。不景気で労働者が経済的な窮地や失業にあるとも報道される一方、あらゆる可能性に手を打っていない、つまり自発的に失業状態を維持する層もいるようです。
やむを得ない事情はあるでしょうが、これを個々人の内面に目を向けた認知科学的なアプローチで分析したいと思います。失業者が新しい職種や就業環境に就きたがらないメカニズムは、以下の要因で説明できます。
①「認知的な安定性の追求」。人は安定を求める傾向があり、既知の職種や業界で成功体験を積むと、新しい職種への挑戦をリスクと感じます。そのため、失業者はこれを避けたがります。
②「自己アイデンティティの保持」。自身を職業や職種に関連付けることで、それがアイデンティティの一部となります。新しい職種への転職では自己アイデンティティを再構築し、自己評価を見直す必要があるため、心理的に困難を伴います。
③「コンフォートゾーンから逸脱する恐怖」。人は自分の居心地の良いゾーン内での行動を好みます。新しい職種や職場では不確実性やストレスを伴うため、現在のコンフォートゾーンである失業状態を維持しようとします。
④「認知的な負担」。新しい職種では新しいスキルや知識を獲得する必要があります。失業者には既にストレスや不安があるため、負担はより高くなって困難と感じます。
これらは失業シーンに限らず日々の人材育成や組織マネジメントに応用できる考え方でもあります。ご参考になれば幸いです。