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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想第73回
JCB International

世界展開を進めるジェーシービー(JCB)は、2000年代からASEAN市場に注力する。中でもベトナムはカード会員約300万人とASEANトップに駆け上がった。首席代表の涌井択也氏が過去とこれからを語る。

銀行が重要なパートナー

涌井 当初は増え始めた海外渡航する日本人が使えるお店、加盟店を作ることが目的でした。海外加盟店の第1号は香港で、台湾、韓国、中国など東アジアから増えていきました。

 一定数の加盟店ができた中で次の戦略は、現地の方にJCBカードを発行して使ってもらう、海外の会員を作ることでした。2000~2010年代はその傾向が強くなり、こちらも東アジアが早くて、1番成功したのは台湾でしょう。台湾内だけでなく日本でJCBカードを使うインバウンド旅行者も増えて、クロスボーダーが実現し、会員数は飛躍的に拡大しました。

 2010年代から注力しているのがシンガポールやタイなどのASEANです。中でもベトナムはキャッシュレス化が進んでいなかった1990年代から当地の金融機関などと契約を結び、加盟店を増やしてきました。

 そのため国際大手のビザやマスターカードと同レベルでJCBが使える環境が整い、2011年にハノイに駐在員事務所を設立、カード発行をスタートしました。2016年にはホーチミン市に駐在員事務所を作り、北と南とで基盤を拡大させました。

 現在の加盟店数はビザやマスターカードとほぼ同じレベルであり、金融機関がカードの新規加盟をする際にはビザ、マスターカード、JCBをセットで推進する環境が整っています。

涌井 はい。国際ブランドカードの海外事業では、現地のカード発行会社(イシュア)と加盟店契約会社(アクワイアラ)が欠かせないパートナーになります。どちらも金融機関、主に銀行で、イシュアとしてカード会員を増やすと同時に、アクワイアラとして加盟店も増やします。現地のプレイヤーは主に銀行になるのです。

 会員と加盟店は両輪に例えられます。発行カードが多くても加盟店が少なくては事業が広がりませんし、逆もまた同様です。しっかりとした需要があって加盟店も増えて、両輪が良く回っていく。ベトナムがまさにその状態なのです。

 銀行数が多いこともあってベトナムのイシュアは現在19あり、会員数はASEANナンバーワンの約300万人です。

 ただ、ある調査でビザやマスターカードの認知度が9割以上に対してJCBは約6割です。認知度の向上と差別化が重要で、それを「日本コンテンツ」で実現したいと考えています。

 具体的には人気の日本企業さんとのコラボレーションで、例えばユニクロさんと提携して、特定の期間の支払いでJCBカードを使うと、キャッシュバックを受けられるなどです。このプロモーションを提携銀行が、バンクアプリを使って顧客に告知しています。

 ほかにもMUJIさん、イオンさんなど日系リテイラーと提携して、日本品質の商品やサービスとJCBのブランドイメージとを重ねてきました。ベトナムの方はプロモーションにとても敏感ですから興味を持っていただけます。

 合計19銀行からの情報発信ですから、日系リテイラーさんには送客というお手伝いができます。多数の顧客を持ち、アプリと対面でコミュニケーションできる銀行の告知は強いです。このチャネルを使って企業の紹介ができるのは我々の強みだと思います。

キャッシュレス化の波に乗る

涌井 我々が「100レストラン」と呼ぶ、100店舗以上のレストランの優待プログラムがあります。優待の内容は割引やバウチャー提供などが多いです。プラチナカード以上の方には空港ラウンジの利用、ゴルフ場や高級和食店での優待などがあります。この領域ならJCBがお得という「局地戦」をいかに増やせるかがポイントです。

 これらとは別に金融機関へのサポートもあります。ベトナムでのカードのグレードには最上位のアルティメットから順にプラチナ、ゴールド、スタンダードの4つがあり、例えば銀行からプラチナでレディカード、ゴールドでトラベルカードを作りたいなどの提案があります。

 レディカードならコスメ系の商品やサービスの割引、トラベルカードは海外使用時の為替手数料が安くなるなど、ターゲットによりカードの商品性を個別化します。こうした戦略を話し合いながら、新規発行時にプロモーションを走らせて、会員をここまで伸ばそうなどの目標も作ります。

 ベトナムはキャッシュレス化がかつてないほど進んでいます。お客様から新しい提案が色々と出てきますし、我々も常にアイデアを考えています。ただ、実現には相応の期間が必要で、1つのカードプロダクトを1年以上も時間をかけて、商品性、プロモーション、システム対応等の準備を行うこともあります。

涌井 大きく2つの方向があると思います。ひとつはクレジットカードです。クレジットカードには利用者の審査と与信枠(利用限度額)の設定がありますから、中間層以上の方が持つケースが多いです。

 もうひとつはQRコード決済などで使う電子ウォレットで、中間層以下の方、特に若年層の利用が多いです。そのためモバイルの利用と共に急速に裾野が広がっています。

 クレジットカードも堅調に増えていまして、弊社の場合で売上げが2016年辺りから大きく伸びています。その後、新型コロナ期にECの利用が増加し、衛生意識の高まりから現金でない支払い方法も増えて、新型コロナの回復期からはそのまま売上が上昇を続けています。

 この波に乗って事業を伸ばすに当たり、本当にありがたいのはベトナムの日本への信頼感です。日本に対する基本的な好感度が高く、日本の商品やサービスにポジティブな感情がある。台湾も似ていて、台湾の人のベースには日本への親近感があると思います。

 キャッシュレス化の懸念点としては、ハノイ、ホーチミン市、ダナン、ハイフォンなどの都市部にまだとどまっていること。これらの周辺省から地方まで広がってほしいですね。

涌井 JCBがASEAN地域でカードを発行して収益を拡大させたい国が、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンです。新しい国でカードを発行して市場を作るには相当のパワーを要するので、当面はこの4ヶ国で確固たるポジションを作り、シェアを拡大することを優先します。

 ベトナムはキャッシュレスの拡大、経済成長、人口のポテンシャル、何より国自体の勢いがあり、アグレッシブなことを始めたがっています。きちんと価値を提供できればぐぐっと伸びるポテンシャルが十分にあります。

 現在の会員約300万人を2025年までに500万人、2030年までには800万人、いえ1000万人にしたいです。ちょっと厳しいですかね(笑)。ただ、ベトナムのキャッシュレスのポテンシャルや、JCBの強みを活かすことで、実現不可能な数字ではないと考えています。

涌井択也 Takuya Wakui
大学卒業後にジェーシービーに入社。国内業務を経て海外トレーニー制度で2011年から台湾で勤務。2012~2017年に中国の上海に駐在。帰国後に本部の国際事業に携わり、2022年10月にベトナムに赴任。2024年4月から現職。