ベトナムは23か月連続で貿易黒字を記録していたが、2024年5月に約10億USDの貿易赤字となった。
統計総局のデータによれば、5月の輸出額は前年同期比15.8%増の328.1億USDだった。一方で、輸入額は、輸出を上回る勢いで増加し、前年同期比29.9%増の338.1億USDとなった。
この結果、ベトナムは約2年ぶりに貿易赤字を計上することになった。前回貿易赤字を記録したのは2022年5月で20.2億USDの貿易赤字だった。
今回貿易赤字が再発したことに関して専門家は、製造業による原材料や資材の輸入が増えているためであり、経済にとってプラスの兆候だと評価している。
統計総局によれば、貿易赤字の再来は懸念すべき点もあるが、想定内でもある。「製造にかかわる設備、機械、原材料の輸入増加は、今後製造業が前向きに回復する兆候だととらえることが出来る」と統計総局は評価している。
具体的には電話機とその部品(55.1%増)鉄鋼(50.1%増)、コンピュータ・電子部品(39.3%)、ガソリン(34.6%)、縫製資材(33.7%)、プラスチック原料(31.4%)など製造・加工用の一部品目で輸入が増加している。
これらの原材料の輸入は、鉱工業生産指数(IIP)が継続的に改善し、5月には前年同期比8.9%増となると予想される中で増加した。一方で、輸出に関してもゴム・プラスチック(24.1%増)、木材加工(23%増)、電気設備(19.4%増)、電子部品・コンビューター(17.4%増)、アパレル(9.4%増)など多くの分野で増加している。
それに伴い国内消費も好調だ。5月の商品小売総売上高と消費者サービス売上高は、前年同期比で9.5%の増となる見込みだ。
S&Pグローバルが6月3日に公表したベトナムの購買担当者景気指数(PMI)に関する調査結果でも、ベトナムの製造業は引き続き成長を記録した。中でも原材料の購買活動は、2か月連続で増加を記録している。
「需要の伸びが維持される兆しを背景に新規受注が増加し、5月の製造の伸びが力強くなりました」とS&Pグローバルのアンドリュー・ハーカー氏は述べた。
ACB証券が新たに公表したマクロ経済報告書では、「貿易赤字は、懸念するよりも喜ぶべき兆候だ」と評価している。「為替圧力を高めるため、一見すると悪いニュースのように思えるが、各データを詳細に分析すると、これはベトナム経済にとって良い兆候と受け取れる」と報告書は述べている。
ACB証券は、特に電子部品、機械、繊維関連の輸入が急増しているのは、これらの主要輸出分野で今後輸出が増加することを示している可能性があると指摘する。昨年は、輸入の伸びが鈍かったことが輸出の鈍化につながっていた。
ACB証券では、コンビュータと電子部品、機械設備の輸入が5月だけで20~50%も増加したため、2024年末にはこれらの製品の輸出が20~30%増加すると予測している。
また、縫製資材の輸入が5月だけで33%、1月から5月でも20%以上と大幅に増加したことで、今年下半期にかけて縫製品の輸出が大幅に増加する可能性が高まっている。鉄鋼の輸入量が増加しているのは、増加する消費需要に対応するためと税制度変更リスクに対応するための動きだとみられている。
5月単月では貿易赤字となったが、2024年1月から5月までの累計では、ベトナムは依然として貿易黒字を維持しており、80.1億USDの黒字となっている。このうち輸出額が前年同期比15.2%増の1567.7億USDで、輸入額が前年同期比18.2%増の1487.6億USDとなっている。
出典:2024/06/04 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載