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【社会】大学進学の是非が論争に

(C) VNEXPRESS

娘から大学に進学せずにタトゥーの勉強をしたいと言われたマイ・アインさんは、「もし自分の言うとおりに大学に行かないのなら死ぬ」とまで娘に言い放った。

ハノイ在住のマイ・アインさん(45歳)の親類には高学歴の人が多く、娘が大学への進学を拒否することは、どうしても受け入れがたい話だった。アインさんは、学歴が無い人は馬鹿にされ、一生頭を上げることができないと考えている。

しかし、娘のトゥイ・リンさん(17歳)は、幼い頃から絵をかくのが大好きで、プロのタトゥーアーティストになりたいと考えている。リンさんは、この職業にベトナムでの将来性を感じており、より高い収入が得られると考えている。リンさんは、両親からこの話をこれほど強く反対されるとは思っておらず、面食らってしまった。

家族の衝突を避けるため、リンさんは、高校の卒業試験に集中すると話した。リンさんは、大学に行く前に家族を説得出来ればタトゥーの勉強をしたいと考えているが、無理なら大学に行きながら自分の夢を叶えるチャンスを探すことにした。

タイビン省に住むラン・フエさんも12年前に、大学には行かず、手工芸品の製造と販売をやりたいと考えた。しかし、フエさんの家族は農家で、今まで誰も大学に進学したことが無かったので、両親は、フエさんが大学に進学することを強く望んだ。あまり気が乗らなかったがフエさんは大学入試を受け、ハノイ商科大学の金融・銀行学部に合格した。

大学を卒業後、専攻分野の仕事に就けなかったフエさんは、子供向けの粘土模型を製造している会社に就職した。フエさんには、独創的な造形のセンスがあったので、毎月の収入は2500~3000万VNDにもなる。フエさんの学士号は今でも実家に保管されている。

「もう一度選べるなら恐らく大学には行かないでしょうね」と30歳になったフエさんは話す。

大学に進学する代わりに、別の道で人生を歩みたいと望んでいるが、家族に反対されるというケースはリンさんやフエさんだけに限らない。最近SNS上では、”大学に行くべきか?”というトピックが注目を集めている。

最近、ある男性ラッパーが「大部分の大学生はただ大学に通ってるだけで、高校を卒業して社会に出た人達には及ばない」という趣旨の発言をして物議を醸し、賛否のコメントが数千件も集まった。賛成意見のコメントの中には、大学での勉強は実社会での経験ほど重要ではないというものがあり、反対意見のコメントには、基本的な知識のベースが無ければ、何をやるにしても難しいというものがあった。

「医師、科学者、軍事兵器開発、宇宙開発などの高度な技術が必要とされる多くの職業では、大学、大学院などの勉強が必要です。高校卒業レベルでこれらの仕事に就けるでしょうか?」とあるユーザーはコメントした。

VnExpressが1000人近くの特赦を対象に実施した「現在、大学教育は必須ですか?」というアンケート調査では、50%の人がその職業に学位が必要かどうかによると回答し、36%が絶対に必要だと答え、14%のみが必要ないと回答した。

ホーチミン市の心理学者であるダオ・レ・タム・アン氏は、現在、多くの人が大学の学位を重視している点について、20年以上前は大学に合格することは非常に難しかったので、今の親世代の多くは大学に行くことが出来ず、子供にその夢を託しているのだと説明する。最近では、大学の学位を取得することは以前ほど難しくなくなっているので、親は、子供の希望に沿わなくても大学へ進学させたいと考えるようになっている。

さらに、ハノイ師範大学の元教授であるヴ―・トゥー・フーン博士は、成功するための唯一の方法は大学に行くことだという固定観念が多くの人々の潜在意識に刷り込まれていることも原因の一つだと説明する。また、社会では依然として学位が重視されており、一部の親は、子供が社会で馬鹿にされることを恐れていることも原因となっている。

「一方で、なぜ大学の学位を取得する必要があるのかをよく考えずに大学に入学して適当に専攻を選ぶ人が多くなり、大学での勉強は意味がないという考え方が生まれているのも事実です」とフーン博士は話す。

フーン博士はまた、周りの状況に流されてしまって多くの人が誤った学校や専門を選択していると指摘する。その結果、マイナス思考に陥って大学を中退してしまったり、大学を卒業してから自分に合わない仕事についてしまったり、自分の夢を優先して家族と衝突したりするケースが生まれている。

2019年にホーチミン市労働需要予測情報センターが実施した調査によれば、60%の学生は選考を間違えたと考えており、社会人の75%が自分が選んだ職業について理解が不足していたと考えている。ブリティッシュカウンシルが2020年8月にベトナムの若者を対象に実施した調査によれば、回答者の18%が大学の専攻を家族、友人、先生のアドバイスで決めたと回答している。

ホーチミン市商科大学コミュニケーションセンターのファン・タイ・ソン所長は、殆どの大学では毎年合格者の5~15%が入学しないと語る。大学への進学希望率が60%強に留まっていることについてソン所長は、専門学校、職業訓練学校、留学、就職など多くの選択肢があるので、特に問題視する必要はないと話す。

「これは、子供たちが自分の能力と目標を理解して、無理に大学に入学して時間とリソースを無駄にすることを避けているという意味では、良い傾向とも言えます」とソン所長は話す。

心理学者のアン氏は、多くの仕事は大学の授業の中で見つけることはできず、中等教育や職業訓練があれば十分だと指摘する。技術的な訓練と職業訓練に特化すれば、時間を節約してより容易に仕事を身に着けることが出来るようになる。仕事のスキルを高め、経験を積んでから学位を取得するという道も珍しいことではない。

「したがって特に専門知識や学位を必要としない職業にとって、大学教育は、もはや前提条件ではないのです」とアン氏は述べた。

フーン博士は、場合によっては、学生がギャップイヤーを活用してして自分に適した仕事について考えたり経験してみることも有益だとアドバイスする。

ハイフォン市に住むキム・リーさん(50歳)は、家族からの反対を押し切って、息子に大学入試を受ける代わりにギャップイヤーをとってみるようにアドバイスした。その後、自分の興味ある仕事をいろいろ経験し、自分の強みを発見した19歳の青年は、以前の経済学部志望から、マスメディア関連の学部に変えることを自分で決めた。

「大学に行くか行かないかは、自分が社会の中で何をして、どんな貢献が出来るかという問題に比べれば重要ではありません。子供達の学業が1,2年遅れたとしても大きな問題ではなく、自分の進む方向を見定められればいいんです」とリーさんは話す。

出典:2024/06/14 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載