この半年の間にベトナムでピックルボール関連マーケットが爆発的に成長し、オンライン販売だけで四半期ごとに数百億VNDを売上ている。
バドミントンとピックルボールのどちらもプレーするホーチミン市在住のレ・タンさんは、大手オンラインショッピングサイトでセール品を探して、250万VNDのラケットを購入した。「ピックルボールをやり始めたばかりなので、中級レベルの商品を購入しました」とタンさんは話す。
タンさんによれば、このスポーツにかかる費用は、他のスポーツより割安だ。ラケット以外に必要なのはボールだが、壊れにくいのでバドミントンのシャトルのように頻繁に交換する必要がない。また競技ウェアもバドミントンのものと同じで構わないので新しく購入する必要がない。
4月からピックルボールを始めたフーン・タオさんは、自分はこのスポーツに500万VNDしかかけていないと話す。しかし、ウェアやラケットにこだわっている人は、この何倍もお金をかけることもあるとタオさんは話す。「家にあったスポーツウェアを着てるので、それほどお金はかかりませんが、私がよく行くコートでは、ウェアに何千万ドンも費やしている女性も来ますよ」とタオさんは話す。
ピックルボールは1965年にアメリカで生まれたスポーツで、テニス、バドミントン、卓球などの要素が組み合わされておりラケットとボールでプレイする。ピックルボールのコートはテニスコートより小さく、いくつもの小さな穴が空いた軽いボールを使う。ピックルボールがベトナムに上陸したのは2018年ごろだが、今年に入ってからわずか半年ほどで大流行している。
ホーチミン市3区のスポーツ用品店では2023年2月からピックルボール関連商品の販売を開始した。具体的な数字は明らかにしていないが、ピックルボール関連商品の売上は今年に入ってから予想以上の数字になっているとこの店の担当者は話す。
「ピックルボール関連商品を買いに来るのは、今までバドミントン、テニス、卓球、ゴルフなどをしていた人が多いですが、今までスポーツに縁のなかったオフィスワーカーの人たちも少なくありません。大体150万VNDくらいかければグランドでプレーできる準備はそろいます」と店の担当者は話す。ラケットの価格はピンキリで、数十万VNDのものもあれば数千万VNDするものもある。
EコマースデータプラットフォームのMetricによれば、ベトナムの5大オンラインショッピングサイトであるShopee、Lazada、Tiki、Sendo、TikTok Shopにおけるピックルボール関連の2024年第2四半期の流通取引総額(GMV)は227億VNDに達し、前四半期から150%近く伸びた。
ピックルボール関連商品販売店も前四半期から45.6%も増えて568店舗となり、販売商品数は15万4870点を超えている。もっともよく売れているのは、スポーツ用品(ラケット、ボール)とウェア(パンツ、シャツ、靴)だ。
ピックルボール関連で最も売れている価格帯は、20万~35万VNDの初心者向けのノーブランドのウェアと50万~75万VNDのラケットだ。Shopeeで最も売り上げの高かったショップは、第二四半期にピックルボール関連商品だけで15億VND以上を売上げている。ランキングの上位5社でみても、GMVは3ヶ月で少なくとも2億VNDを超えている。
競技者数の急増がこのマーケットの爆発的な成長に貢献している。2024年上半期にハノイとホーチミン市のピックルボール競技者数は2023年末から数百倍に増加した。今年7月までにハノイでは新たに約200ヶ所の専用コートがオープンし、ホーチミン市でも数百か所のコートが新たにオープンした。
スポーツ用品店でありながらSNS上でピックルボールのコミュニティを管理しているホアショップによれば、現在約5万8000人がコミュニティに参加しており、毎日新たに100~300人が入会している。
「6月から7月にかけてがブームのピークで1日に800人近くがコミュニティに新規加入してきました。家族や子供たちと一緒にプレイするためにラケットを買いに来るお客さんも増えました」とホアショップの担当者は話す。
ピックルボールは、ルールが分かりやすく高い身体能力を必要とせず、上手い人と初心者が一緒にプレイでき、ラケットやウェアがファッショナブルなので、人気が高まっているとショップの担当者は話す。「新しいスポーツなので試しにやってみたくて始めました。その後、私のような運動が苦手な人にも適したスポーツだと感じるようになり、やり続けています。同僚たちと勝負できるのも魅力の1つです」とタオさんは話す。
プレイのしやすさに加えて、有名人やSNSの影響によってピックルボールは、急速にベトナムのトレンドになり、オンラインとオフラインの両方で、関連ビジネスが盛り上がっている。
インフルエンサーのチー・ティット・ボアや歌手のフーン・リー、ジジ・フーン・ザンなどの参入も需要を刺激した。
SNSやEコマースのデータ分析サービスを提供するYouNetの統計によれば、8月のベトナムのSNS上にはピックルボールをテーマにした話題が16万6300件近くあり、4月の約19倍に増えた。このテーマに言及しているのは、主にFacebook、TikTok、Youtubeのユーザーだ。
「買いに来た若いお客さんの中には、有名人が”ストーリーズ”で投稿しているのを見て、面白そうでカロリーも消費できるのでやってみようと思ったという人もいました」とあるショップの店員は話す。
ピックルボール関連製品マーケットの熱気は冷める気配がない。店側は、ピークは過ぎた可能性があるが、世界的なピックルボール人気を背景に商品の需要は相変わらず好調だとしている。
スポーツ&フィットネス産業協会(SFIA)は、ピックルボールを3年連続でアメリカで最も急速に普及しているスポーツに選出した。SFIAによれば、アメリカのピックルボール競技者人口は2022年の480万人から2023年には890万人に増加している。
ピックルボールはアメリカから、カナダ、ヨーロッパ、アジアに広がっていった。インドの市場調査会社であるMarket Research Futureは、2024年のピックルボール関連商品の世界市場規模は714.7億USDあり、これが2032年には1510億USDまで伸びると予測している。
出典:2024/09/15 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載