かつてベトナムにとって最大の水産物輸出先であった米国が、その地位を中国に明け渡した。2025年上半期のデータによると、中国のベトナムからの水産物輸入額は、前年同期比45%増の約11億USDに達した。一方、米国市場は全体の17%のシェアを占めるにとどまり、長年のトップの座から陥落した。
水産物の対米輸出は好不調の波、主力品目も大きく変動
米国向けの水産物輸出は、月ごとに大きな変動を見せている。その中で3月から5月にかけては増加傾向が続き、5月には前年同月比61%増となる2億3400万USDを記録し、2025年上半期で最高額となった。しかし、6月には輸出額が急減し、前年同月比で18%減となる1億3100万USDに落ち込んだ。
主力輸出品目であるエビ、バサ、マグロは依然として米国市場で一定の存在感を示している。2025年上半期には、これら3品目だけで約7億USD以上を輸出しており、対米輸出全体の77%を占めた。このうちエビは3億4100万USDと、前年同期比で約13%の増となり、特に5月には66%という大幅な伸びを見せたが、6月には再び36.5%の減少に転じた。マグロも同様に変動が激しく、6月には40%以上の減少が見られた。
関税の不確実性が取引環境に打撃、市場多角化が急務に
こうした不安定な動きの背景には、米国の関税政策、とりわけトランプ政権で導入された相互関税の影響があるとみられている。ベトナム水産物輸出・加工協会(VASEP)のレ・ハン副事務総長は、「関税率の提案と変更が頻繁に繰り返されることで、米国の輸入業者はコストの見通しが立たてられず、ベトナム側も価格や納期の調整、長期契約の締結が困難になっているのです」と指摘する。
このような環境の変化を受け、ベトナムの水産物輸出加工企業は米国市場への過度な依存から脱却し、多角的な市場戦略への転換を迫られている。具体的には、CPTPPやEU、韓国など自由貿易協定(FTA)を締結している市場への輸出を強化し、リスク分散を図る動きが進んでいる。
農業・環境省の統計によれば、2025年上半期のベトナム全体の水産物輸出額は51億6000万USDで、前年同期比16.9%の増加となっている。政府は年間輸出額の目標を110億USDと設定しており、下半期の動向が今後の鍵を握ると見られている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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