ホーチミン市は2030年までに一人当たり所得を1万4,000〜1万5,000USDに引き上げる目標を掲げている。これは2024年の約7,600米ドルからほぼ倍増となる野心的な計画である。
専門家・科学者・知識人が政策草案を議論
8月13日午前、ホーチミン市人民委員会は市内の専門家、科学者、知識人を招き、第I回党大会(2025〜2030年任期)に提出する政治報告書草案について意見を交わす会議を開催した。
会議はホーチミン市人民委員会のグエン・バン・ドゥック主席と、ホーチミン市党委員会のダン・ミン・トン副書記が主宰した。
成長戦略と主要指標
報告書草案によると、ホーチミン市は2030年までに「文明的かつ現代的な都市」として、国内の工業化・現代化を先導し、東南アジアで突出した地位を確立することを目指す。さらに世界の100大都市の一角を占め、質の高い生活を提供する「スマートシティ」となることを目指す。
経済分野では以下の主要目標を設定している。
- GRDP(域内総生産)成長率:平均10%/年
- 一人当たりGRDP:1万4,000〜1万5,000USD
- 社会全体投資比率:35〜40%
- 全要素生産性(TFP)寄与率:55〜60%
- 研究開発費:GRDPの2〜3%(科学技術への予算配分4〜5%)
- デジタル経済比率:GRDPの30%以上
- 労働生産性の平均成長率:7.5%/年
都市・環境分野では、交通用地比率18〜26%、生活ごみの90%を新技術で処理、温室効果ガス排出量を9.5〜10.5%削減、新築建物の80%をグリーン基準適用、簡易住宅の解消、社会住宅約19万9,400戸の供給などを掲げる。
「エンジン・ブレーキ・保険」の三位一体でリスク管理
会議では、5年間で所得を倍増させるための成長率10%維持の可能性が議論された。
経済学者グエン・チョン・ホアイ教授は「野心的な目標だが、科学的根拠と現実的なシナリオが必要」と指摘する。フルブライト公共政策・管理大学院元学長のブー・タイン・トゥー・アイン博士は「資源動員と配分の具体策、マクロ経済への影響評価が不可欠だ」と述べ、「速く進むには良いエンジン、良いブレーキ、良い保険が必要だ」と比喩表現を用いて説明した。
科学技術と民間経済が突破口
トゥー・アイン博士は、科学技術、イノベーション、民間経済の促進を発展の柱に据えるべきと提言。労働集約型で環境負荷の高い産業の比重を減らし、高付加価値型産業へ転換する必要性を強調した。また、停滞するプロジェクトの解消や新たな資金調達策の創出も呼びかけた。
労働生産性向上と教育改革の必要性
ホアン・コン・ザー・カイン教授は、ホーチミン市の労働生産性は全国平均を上回るものの、伸び率は鈍化していると指摘する。カイン教授は、生産性向上なくしてGRDPやデジタル経済比率、科学技術投資の拡大は困難だとの見解を示した。
また、新しい時代に対応するため労働者の再教育・技能向上が必要とし、市内の大学に対する柔軟な支援制度の整備を求めた。
合併後の都市構想:1つの中心・3つの地域・1つの特区
ホーチミン市人民委員会のドゥック主席は、今後の使命は「全国の発展を先導・波及させること」であるとし、ビンズン省とバリア・ブンタウ省との合併後は「1つの中心・3つの地域・1つの特区」という構想に基づき都市計画を刷新すると説明した。
3地域の役割
- 旧ビンズン省:ハイテク工業の拠点
- 旧バリア・ブンタウ省:海洋経済、サービス、再生可能エネルギー、港湾、石油・ガス産業
- 旧ホーチミン市:金融、ハイテク、都市中枢
- コンダオ島特区:観光リゾートの楽園
3つの経済回廊
- 南北回廊(サイゴン川沿い)
- 東部回廊(バリア〜ブンタウ)
- 東西回廊(ドンナイ〜ロンアン)
5つの発展の柱
- 製造業・ハイテク産業(産業構造の高度化)
- 港湾・空港物流と自由貿易区(国際輸送と貿易拠点化)
- 金融サービス産業(国際金融センターの整備)
- 観光・文化産業(リゾート、イベント、文化発信)
- 教育・医療・科学技術(高度人材育成と先端医療)
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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