ベトナムは直近11か月間で15億USDを投じてコメを輸入しており、2024年通年と比べて2億USD多く、過去最高水準となった。輸出が減少し、世界的に供給過剰の兆しが見える中、ベトナム国内のコメの在り方について新たな戦略を検討すべき局面に入っている。
コメ貿易黒字が大幅縮小
現在、タイではコメ価格が一斉に上昇し、過去5か月で最高水準に達している。タイ米輸出業者協会(TREA)によると、5%砕米は1トン当たり442USDとアジア最高値を更新し、1か月前から65USD上昇した。ジャスミン米は726USDで、142USDの上昇である。南部各地で発生した歴史的な洪水により供給不足への懸念が高まったことが背景にある。
一方、ベトナム国内のコメ価格は比較的安定しており、香り米が440USD/トン、ジャスミン米が451USD/トン、5%砕米は約370USD/トンで推移している。業界関係者によれば、フィリピン市場が再開していないため輸出は鈍いものの、国内消費向けのテト(旧正月)需要により市場はやや持ち直しているという。
輸出減・輸入増で黒字は半減
ベトナムの農業・環境省の報告によると、2025年11月末までの累計でコメ輸出量は750万トンとなり、前年同期比11.5%減、輸出額は38億米ドルで28%減少した。
注目されるのは、輸出が大きく落ち込む一方で輸入が増加している点である。コメ輸入額は15億USD(約350万トン相当)に達し、2024年通年より2億米ドル多い。この結果、前年に40億USDあったコメの貿易黒字は、23億USDまで縮小した。
生産基盤の変化と将来見通し
近年のコメ輸入増は、国内需要の調整や輸出活動を円滑にする目的と説明されてきたが、2025年の数値は従来の傾向から外れている。
ベトナム稲作・コメ産業協会(Vietrisa)のレ・タイン・トゥン副会長は、工業団地開発に伴う土地回収により作付面積が縮小傾向にあるほか、コメがより高付加価値の作物と競合していると指摘する。2030年には、ベトナムの実質的なコメ輸出量が年500万トン前後にまで減少する可能性があるという。作物生産・植物保護局も、2026年には作付面積が約20万ヘクタール減少すると予測している。
輸入増は「国内に少ない品種」が中心
市場の観点から、ビンロン省の食品会社フオック・タインIVのグエン・バン・タイン社長は、輸入増は国内供給が少ないセグメントに集中していると分析する。具体的には、加工用や工業団地の集団給食向けのインド産低価格米、さらにカンボジアからの一定量のコメが含まれるという。
年初に輸出が好調だった時期に輸入が増え、年末に輸出が鈍化すると輸入も減ったため、今後は輸入が過度に増えないとの見方もある。ただし、世界のコメ市場環境を踏まえると、量を追う輸出から高付加価値路線への転換が不可欠である。
量より質、市場に即した戦略へ
2026年のコメ輸出は、主要輸入国の需要が依然として不透明で、世界的な供給過剰も重なり、厳しい状況が続く見通しである。
フィリピンは1月に一時的に市場を再開し、約30万トンの輸入枠を設定するが、その後は国内収穫の結果を待って再び停止する可能性がある。インドネシアは国家備蓄が370万トンと過去最高水準に達し、輸入を停止した。インドは中国を抜いて世界最大のコメ生産国となり、2024年比で4~5%の増産が続いている。
タイン社長は、2023年のコメ高騰を受け各国が増産に走った結果、2024~2025年は年300万トン、2026年にはさらに500万トンの余剰が生じる可能性を指摘する。一方で、日本の高級米市場など、局地的に不足する分野も存在するとし、日本向けはジャポニカ米やST25、中国向けはもち米やST25、中東向けはST25や軽い香り米が適していると具体例を挙げた。
政策提言:高品質化と政府間協力を
チュンアンハイテク農業社(カントー市)のファム・タイ・ビン会長は、多くの国が少量・高品質を求め、嗜好も細分化している現実を踏まえ、生産・輸出戦略の見直しと付加価値向上が不可欠だと指摘する。低排出・高品質コメ100万ヘクタール計画を加速し、ブランド構築と結び付ける必要があるという。
また、ベトナム食糧協会(VFA)のドー・ハー・ナム会長は、フィリピンとの政府間の食糧協力の再構築、新市場開拓に向けた貿易促進、政府間契約(G2G)の締結を提言した。さらに、2026年冬春作の収穫期に価格下落を防ぐため、大手企業による一時買い入れ・備蓄を支援する政策の必要性を訴えている。
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ベトナム進出支援LAI VIEN



















