【サッカー】歴史的逆転で王座奪還　ベトナムU-22代表、SEA Games決勝でタイを撃破

ベトナムU-22代表、SEA Gamesの頂点へ

SEA Games第33回大会のサッカー決勝が12月18日夜に行われ、ベトナムU-22代表はタイU-22代表に前半2点を先行されながらも、後半以降に猛反撃を見せ、延長戦の末に3-2で逆転勝利を収めた。ベトナムはこの劇的勝利により、SEA Gamesサッカーの王座に返り咲いた。

忘れたい前半

キム・サンシク監督は準決勝と同じ先発メンバーを起用し、タイU-22代表との大一番に臨んだ。しかし、ここで一つ誤算があった。マレーシアU-22代表やフィリピンU-22代表と比べ、タイU-22代表の中盤は明らかに強力だったのである。

カカナ・カミヨック、ワリス・チュルトン、チャイヤポン・オットンらが流動的にポジションを入れ替え、激しいプレッシングと素早いパス回しで主導権を掌握。スピードと積極性に満ちたタイの中盤は、スアン・バック、クオック・クオンらが守るベトナムの中盤を、体格・強度の両面で圧倒した。

前半19分、クオック・クオンのファウルから与えた絶好の位置でのフリーキックを、ヨツァコン・ブラパが見事な直接シュートで決め、タイが先制。さらに32分、中盤でのボールロストから「戦象軍団（タイ代表の愛称）」が速攻を仕掛け、セクサン・ラットリーが美しいカーブシュートをゴール右隅に流し込み、2-0とした。

前半のベトナム守備陣は集中力を欠き、競り合いの弱さやポジショニングミスが目立った。失点は2にとどまったものの、展開次第ではさらなる失点もあり得た内容であった。

攻撃面では、明確な戦術を持つタイに対し、ベトナムはクロス頼みの展開に終始。ヴァン・カン、ディン・バック、レ・ヴィクトルの前線3人は分断され、個人突破に頼らざるを得なかった。タイの激しい寄せ（時にはファウル覚悟の対応）の前に、ベトナムは有効な反撃をほとんど見せられず、前半を終えた。

後半戦以降は歴史となった

キム・サンシク監督の真骨頂は、試合展開に応じた柔軟な修正力にある。勝負が終わるまでは何が起こるかわからない。ハーフタイムは、その修正を施すための貴重な時間となった。

監督は前半終盤にタイ・ソンを投入し、後半開始からタイン・ニャン、バン・トゥアンを送り出す。これが即座に効果を生んだ。49分、タイ・ソンの正確なスルーパスに反応したディン・バックがGKソラワットと1対1となり、ペナルティエリア内で倒されPKを獲得。自らこれを決め、1-2と反撃の狼煙を上げた。

60分には、CKの場面でリー・ドゥックとヒエウ・ミンが同時にプレッシャーをかけ、相手のオウンゴールを誘発し、ついに同点に追いついた。

前半は精彩を欠いたベトナムだったが、後半15分間の爆発力で流れを完全に引き戻した。中盤からの激しい攻撃でタイを圧倒し、素早く正確なパス交換が相手守備網を次々と切り裂いた。

67分にはスアン・バクが至近距離でGKと対峙するも、飛び出したソラワットの好守に阻まれる。72分にはヒエウ・ミンのヘディングがポストを直撃。90＋1分にはタイン・ニャンのワンタッチシュートが放たれたが、ここでもGKソラワットが驚異的なセーブを見せ、勝負は延長戦へともつれ込んだ。

延長戦で決着

延長戦に入ると、もはや流れは完全にベトナムに傾いていた。ディン・バックを攻撃の起点とし、タイ・ソンがワンタッチでバン・トゥアンへ展開。シュートはGKに阻まれたものの、こぼれ球にタイン・ニャンが素早く反応し、至近距離から押し込んで3-2。ついに歴史的逆転が完成した。

ラチャマンガラ・スタジアムで成し遂げられたこの逆転劇は、最後まで諦めず勝利を信じ続けた若き戦士たちの結晶である。そして、その中心にいたのが、卓越した采配で試合を操った「闘将」キム・サンシク監督であった。

東南アジア王者としての威信回復

この勝利により、ベトナムU-22代表は開催国タイに大きな失意を与えると同時に、東南アジアの舞台で失われかけていた威信を取り戻した。この1年、キム・サンシク監督率いるチームはU-23東南アジア選手権、SEA Gamesと主要大会を制覇している。

苦しい試合や課題を抱えながらも、若きベトナム代表は前進を止めなかった。技術、戦術、フィジカルに加え、強烈な闘争心を備えた世代が育ちつつある。ベトナムの若き才能たちは、今やどんな強豪とも互角に渡り合う準備が整っている。