パッケージ業界の大型展示会である「PROPAK VIETNAM 2024」が4月3~5日、ホーチミン市7区のSECCで開催された。17回目となる今回は30以上の国と地域から300社以上が集合、日系企業は共同ブースが多かった。
開催のサイクルが戻ったか
PROPAK VIETNAMは昨年11月に続いて今年4月の開催。間は半年もないが、従来3~4月開催だったのが新型コロナで11月に移行し、元のサイクルに戻ったようだ。
Aホールには国際パビリオンが4つ。出展数が多いのは中国系で印象が強かったのはドイツ系、台湾系は今回は数が多く、韓国系はちょっと少ない。ほかにもインド、香港、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、米国、イタリア、スペイン、オランダなどから出展があり、来場者もアジア系だけでなく欧米系の外国人が増えた気がした。
もうひとつの会場であるB1ホールはBホール半分のサイズで出展企業も少ないが、デザインセンスの良いブースが多い。どうもここが「DRINK TECH」のコーナーで、飲料系のパッケージを扱う会社ばかりなのだが、それが伝わりにくいし来場者が少ない。人を呼び込む工夫がほしかった。
日系企業は共同ブースが2つ。1つは当地日系企業のKYOUWA VIETNAM、もう一つは包装機など地場機械メーカーのSAIKOPACK VIETNAMが主催した。単独の出展では、大手企業2社を訪ねた。
老舗企業の肉まん包餡機
機械メーカーのKYOUWA VIETNAMは前回はフジキカイと共同出展したが、今回はレオン自動機、横浜自働機、クレオを加えた4社の受け皿となった。
レオン自動機は包餡機やクロワッサン自動成形機が主力の食品機械メーカー。ベトナムで何度か出展しており、今回は包餡機を展示した。包餡機には饅頭用や洋菓子用など多くの種類があるが、ベトナムでのメインは肉まん用だ。
東南アジアや欧米にも展開しており、担当別に他国の展示会にも出展している。機械の動きに注目して立ち止まる来場者が多いため、話を聞いてくれる人が多いそうだ。ベトナムでの販売は増えてきているが、まだまだ開拓したいと意気込む。
「今後は労働力の確保が課題になり、機械化のニーズが広がると思います。知名度を上げていって、お客さんの認知を高めたいです」
自動充填機を現地企業と共に
主に液体や粘体の充填機メーカーである横浜自働機は、1番の主力機種であるスタンダードな自動定量充填機を展示。液体が蛇口から出てくる実演が人を集めていた。ここではノズルが4種類あるが、充填する内容によってノズルを変えていく。
正式にベトナムに出展するのは今回が初めて。当地に拠点はなく、こうした現地企業との連携でタイ、インドネシア、台湾などへも輸出。今は円安なので日本での生産とアジアなどで生産する費用はさほど変わらないが、アフターサービスは現地企業に依頼するので、企業間のつながりが大切になるという。
「ベトナムでは 少しずつ実績ができています。充填機をきっかけにお客様のニーズに合わせた幅広い提案がしたいです」
取材日は2日目の午前中だった。初日は思ったより来場者が少なかったが、この日は開場と同時に人が雪崩れ込んでいて、期待できそうだと語った。
絶対に伸びる自動洗浄機
このような日本の提携企業から機械を輸入して、前後の工程に自社の機械を取り付けるなどでカスタマイズし、ベトナムで販売しているのがKYOUWA VIETNAMだ。展示した機械は社員のエンジニア全員がメンテナンスまで対応できるそうだ。
「レオンさんの肉まん用包餡機は数十台販売し、横浜自動機さんはマヨネーズなどの充填に使われています。これから絶対に伸びるのがクレオさんの自動洗浄機でしょう」
ブースではパレット洗浄機を展示。今後のベトナムでは国内市場はもとより、輸出の際にも衛生面が重視され、自動洗浄機が必要になると考えている。
機械の動きを観察する来場者と話を進めると、「こんな食品を作っているから、こんなマシンがほしい」という展開になって商談が開けるそうだ。
「今後のベトナムは工場の自動化が本格化して、我々のようなメイドインベトナムのロボットの需要が増えてくるでしょう」
何ミリの金属まで検出OK?
もうひとつのSAIKOPACK VIETNAMのブースには海外企業10社が集まり、韓国企業や台湾企業と一緒に日本企業も出展していた。
そのひとつがミネベアミツミで、食品工場で使われる金属検出器、重量測定器、異物を検出をするX線検査装置などのメーカーだ。展示したのはコンベアが動く中で重量を測る測定器と金属検出機だ。
「お客さんの評判は良く、サンプルを持ち込んで、何ミリの金属まで検出できるかテストを頼んできた方もいました」
2021年の進出で、実際に動き始めたのは新型コロナ明け後の2年程度と、まだ若い会社。展示会は初めてで、ホーチミン市とメコンデルタでの需要を重点的に喚起させたいという。
「これらの地域はシーフードに関連する企業が集中しています。まずはここを開拓したいと思っています」
おにぎりとマシンと一緒に普及
おにぎりの自動成形機で日本トップシェアという不二精機は、2回目の出展。展示したのはまさにおにぎりマシンで、ご飯を入れると三角形に握る成形機と、それをフィルムで包んで最終製品にする包装機。この2つのマシンを連携させており、コンビニで目にするおにぎりのパックが出来上がる。
既にベトナムに顧客はおり、主な納入先は弁当などを作る食品工場などだ。自社の機械だけでなく、日本のおにぎりをベトナムに広げたい思いが強い。
「ベトナム人にとってお米は身近な食品ですし、それを手軽に食べやすくしたおにぎりは、外出先でも屋外でも利用しやすいはず。普及が進むと感じています」
業務用炊飯器、展示の悩み
給食用調理機械や厨房機器の総合メーカーであるAIHOは、業務用の炊飯器を展示した。同社は学校向けや企業向けの大規模な炊飯システムも構築するが、展示したのは小型店舗向けの小さいモデル。それでも20㎏の米が1時間ほどで炊けるという。
「お客さんと話すと、価格が少々折り合わないですね。このモデルになると結構競合が多いですから」
企業用のほかにコンビニや大型レストランなどにも納入したい。生活水準が徐々に向上するベトナムでの需要は見込めるので、早めに市場を抑えたいと語る。
「炊飯器は動きが出せません。動作を見せられない中でどうプロモーションしていくのかに悩みます」
常連企業の安定した展示
大手企業で出展していたのがPROPAK VIETNAMの常連とも呼べるイシダ(ISHIDA Vietnam)。
看板商品の組合せ計量器、包装機、検査機器、前回に初展示したロボットアームと組み合わせたダイナミック計量システムも展示した。
荷物をつかんだアームがそれを置くまでの間に計量するため、デモの大きな動きが目を引く。この装置と主に食品工場様向けのピロー包装機を見る来場者の反応が良いそうだ
「お悩みを持ってこられているお客様もいらっしゃるので、それを解決しながら商談につなげることが多いですね」
商品化した実際のラベル
シュリンクラベルやその装着装置を製造するフジシールは業界大手の1社。前回に続いての出展で、大きな変更はないものの展示物をレベルアップさせた。これまではコンセプトを見せていたが、今回は顧客に採用された実際の商品を展示した。例えば、メタリックなラベルのボトルがサンプルとして置かれた横に、商品化された容器を並べた。
「デザインされた商品があると実際の感じが伝わるのか、お客さんの反応が違ってきます」
包装業界で近年取組みが進んでいるサステナブルについてもアピール。関連事業者に一定のリサイクルを義務付ける拡大生産者責任制度が、ベトナムでも2024年1月から始まった。具体的な運用はこれからだが、企業が動き出す前にもう一度、同社のサステナブルを知ってほしいと考えている。
「サステナブルに興味を持つ来場者の方は、外国人とベトナム人を問わず増えてきたと感じます」
今回はシュリンクラベルを被せるマシンのシュリンクラベラーも展示した。こうしたマシンに興味を持つのは工場関係者や生産技術などの技術職が多いので、ビデオではなく実機があると話が進むという。
「色々な方に話を伺っていると、ベトナム経済は半年後ぐらいから上向くという声が多いです。私も期待しています」