キシリトールガムで2016年、国内ガムのシェア1位を獲得したロッテベトナム。来年からはキャンディ、グミ、ビスケットで新商品を投入予定だ。日本と同様の総合菓子メーカーになるべく、山田暁大社長は次の手を打っている。
売上の6割、キシリトールガム
―― キシリトールガムがシェア1位です。
山田 2016年8月に、国内のガム部門でシェア1位になりました(ニールセン調べ)。その後もずっと1位を維持していまして、今年10月末の調査では34.2%のシェアでした。キシリトールガムが弊社の売上の60%ほどを占めています。
ちなみにガム全体の中での弊社のシェアは2位の40.7%で、トップは米国リグレー社で45~46%。ベトナムのガム市場は両社が2強で、他にイタリアや韓国の外資系企業があり、ローカルメーカーは見当たりません。
―― なぜ売れ続けていると思いますか?
山田 キシリトールガムの特徴は味だけでなく、虫歯予防にもなると消費者に浸透してきたからだと思います。ベトナムの健康志向も追い風になっているでしょう。また、2015年からはマーケティング・ミックスという手法でキシリトールの意味を広く伝えており、その効果も感じています。
マーケティングのひとつはテレビ、新聞、雑誌、ネットなどのメディア戦略です。2つめはリアル戦略で、スーパー店頭などでのサンプリング(賞品の配布)、学校での啓蒙活動、ベトナム歯科医師会と連携したワークショップや効能などの勉強会です。最近では、3つめとなるSMSなどのデジタルマーケティングが増え、こちらへのシフトが強まってきました。
来年からキシリトールガムをリニューアルする予定でして、品質を向上させると同時にパッケージも変えようと考えています。その折にはタレントさんをイメージキャラクターにするなど、新しいPR活動を進める予定です。
―― キシリトールガムで日越の差はありますか?
山田 どこの企業でも同じだと思いますが、キシリトールガムはグローバルブランドという位置付けで、全世界共通して日本製品を再現しています。原材料のサプライヤーなどは異なっても、日本との差は基本的にありません。一方、弊社は子ども向けのフーセンガムなども生産していまして、こちらはローカルブランドです。現地での意見や嗜好により、ある程度カスタマイズしています。
ただし、日本でのキシリトールガムは1つ1つが包装されたスティックタイプと、大きめのファミリーボトルが主流であり、ベトナムでの人気は日本にほとんどない小さめのハンディボトルと、平たいブリスターパックです。
また、ベトナムでの一番人気のフレーバーはライムミントで、売行きの約半分を占めます。主な客層は10代後半から30代の若い女性ですので、爽やかな風味を好んでくださっているのでしょう。
来年はOEMで新商品を発売
―― 販売体制はどうなっていますか?
弊社の商品は全国で販売しており、パパママショップなどの伝統流通が75%、スーパーやコンビニなどの近代流通が25%ほどです。前者で配送するのは全国に約800人いる直接販売員で、バイクで店舗に直接届けます。後者は営業チームが担当しており、商品の受注や発注をしたり、各店舗の棚の整理といったメンテナンスも行います。
バイク部隊をまとめるのが営業担当のスーパーバイザー約100人で、その上にエリアセールスマネジャーが30~40人おり、その上がリージョナルセールスマネジャーになります。このように営業だけで1100人以上いるので、彼らにどう動いてもらうかに心を砕いています。全国で営業説明会や商品説明会を開き、決起大会では自ら気勢を上げているんですよ(笑)。
―― 人事管理は大変です。
その通りです。ビンズンのガム工場では約250人、全国のバックオフィスで50人ほどが働いており、全社員で合計1400人以上になります。その中でキシリトールガムがシェア1位というのは皆の励みになっています。営業職であればモチベーションが上がりますし、小売店などに紹介しやすくなりますから。
改めて思うのは、社員がブランドに自信を持てるのは会社の強みですし、実際にこの3~4年で離職率が改善しています。キシリトールガムの発売が2007年ですから、10年をかけて築いてきたという思いです。
―― 今後の市場をどう見ていますか?
山田 菓子のジャンルには、ガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、アイスなどがありますが、ベトナム市場ではキャンディが年に8~10%成長しているのに対して、ガムは1~2%程度です。
弊社ではフーセンガム、ドラえもんやポケモンのキャラクター商品のほか、タイロッテからはビスケットのコアラのマーチとトッポ、2017年10月からは日本ロッテアイスより、雪見だいふくとクーリッシュを輸入販売しています。
アイスについては来年から近代流通を強める予定ですが、ガム以外のキャンディ、グミ、ビスケットの新商品の販売を来年の第4四半期、9~10月をめどにスタートする計画です。ただ、工場にはガム生産のラインしかないので、OEM先を探している最中です。味や製法だけでなくパッケージの密封度など品質管理が厳しいため、多少の時間はかかりますが、話がまとまった商品から順次始めます。
嗜好品である菓子、特にガムなどはスーパーのレジ横にも置かれて、「プラス1点買い商品」と呼ばれます。食材などの必需品でなく、何かの機会やついでに購入されるという意味です。そのため、価格が高くなる輸入品ではなく、当地での生産を考えました。
―― 合計で考えるとベトナムでの駐在が長くなりました。
山田 成長が著しく、国自体の伸び悩みはなく、やった分だけ成果の出せるベトナムを気に入っています。また、現在の成長率は低いものの、ガム市場も今後に期待できます。なぜなら、日本のガムはシュガーレスが70~80%を占めて既に当たり前となっており、ベトナムでもこの5~10年で同様の変化が起こると感じるからです。その意味でも、キシリトールガムは相変わらず有力商品です。
私は、ベトナムでも日本と同様の「総合菓子メーカー」を目指しています。まだ具体的な商品は決まっていませんが、来年キャンディ、グミ、ビスケットを投入するのもその一環です。アジアでロッテは、ベトナム、タイ、インドネシアに工場があり、フィリピンと台湾に販社がありますが、ベトナムが総合菓子メーカーとなり得る最有力候補と考えています。