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早わかり! ベトナム法律事情Vol.15
Grab vs Vinasun Taxi
仁義なき法廷闘争

―― 配車アプリのGrabって本当に便利ですよね。安いし早いし。もうこの生活に慣れたら日本の満員電車には乗りたくないですね。

鷹野 私もすっかりプラチナ会員です。開発者を尊敬しますよ。でも、このような既存の概念を打ち壊すビジネスはハードルも高いです。一昨年になりますが、大手タクシー会社Vinasun Taxiは、Grabの違法行為によって売上げが減るなどの損害が生じたとして、Grabに損害賠償の訴えを起こしたのです。

―― ニュースで見ました! まさに生存競争ですね。で、どうなったんでしたっけ?

鷹野 審理が何回も延長されたり、和解案が提示されてまとまりかけたりなど、紆余曲折あったみたいですね。内実どのような交渉があったかまではわかりませんが、昨年12月に判決が出ました。Grabの法律違反とVinasun Taxiの損害には因果関係があるとし、Grabに対し、Vinasun Taxiが受けた損害の賠償として、約48億VND(約2400万円)を支払えという内容です。主な理由としては、Grabはアプリの提供にとどまらず、運送事業を行う会社の要件を満たさずに運転手を雇用したり、旅客運送料を得ていたと判断されたことが挙げられます。

―― では、Vinasun Taxiがこの裁判に勝訴したということですか。

鷹野 元々の請求額は約412億VND(約1億8800万円)であるところ一部の損害額が認められただけですから、Vinasun Taxiにとっても完全勝訴とは言えないですね。GrabとVinasun Taxiはそれぞれ控訴しており、控訴審が開かれる予定です。

―― 第2ラウンドですね! 今後の移動手段にも関わるので注目です。

鷹野 裁判は公開審理なので傍聴できますよ。ベトナム語ですけどね(笑)。

鷹野 亨 Toru Takano
長島・大野・常松法律事務所ホーチミン・オフィス弁護士。2012年日本国弁護士登録以降、経済産業省での2年半の勤務を経て、現在は主としてベトナムへの進出及び現地企業への法務アドバイスを行う。