ハノイとホーチミン市で、洗濯機のデザインに好みが分かれることはご存知であろうか? 今回は、弊社の毎年の自主調査(Viettrack)の600サンプル(ホーチミン市300、ハノイ300)から、都市別の嗜好の違いを分析した(2016年)。
ベトナムの2014年中間国勢調査によると、洗濯機保有率はホーチミンが50.5%。ハノイは43.0%。ベトナム全体で30.9%となっている。いわゆる普及期の商品とみなすことができるので、今日のベトナムにおいて多国籍企業の戦略的商品となっている。
この洗濯機で注目したいのは、「外観デザイン」である。日本で流行っている斜めのドラム型は考慮せず、いわゆる縦型の「トップ型」と、出し入れ口が手前にある「フロント型」の好みをアンケート調査したところ、ハノイとホーチミン市で違いが大きく出た。
全体的にデザイン重視の風潮ではあるためか、両都市ともに新しいタイプのフロント型が人気ではある。ただし、詳細データを見ていくと、ハノイではフロント型とトップ型の割合が変わらないのに対して、ホーチミン市ではフロント型を好む人のほうが多い。
この違いは、洗濯機の置き場所にも関係しているのではないか。ハノイでは屋上に洗濯機を置くことが多く、ホーチミン市では家の中が多い。リサーチャー視点で分析すると、ハノイ生活者は「洗った後に干す」という行動に、ホーチミン市では「服を脱いで洗う」という行動にフォーカスしている深層心理が見え隠れしている。
このように、生活者の行動様式をきちんと観察することで、他社との商品・サービス差別化のための開発につなげることができるであろう。