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ベトナムビジネス特集Vol120|
健康になりたい! 変わる意識

ベトナムの「健康ブーム」が止まらない。飲食物に気を配り、フィットネスクラブに通い、サプリメントも愛用する。関連するヘルス産業は急成長しており、今後も期待大。ベトナム人の健康意識とその実際を各業界にインタビューした。

野菜、果物…安全を求める声 要望は品質と情報開示

 

Agricultural Hi-tech Park

Deputy Director General

Mr. Tu Minh Thien

 

最先端の農業研究施設 安全基準認定は難しい

 

ホーチミン市農業ハイテクパーク(Agricultural Hi-tech Park:AHTP)はベトナム南部、およびベトナム全体の農業の生産性向上や生産量拡大、品質改良などを目的とした大規模施設だ。ホーチミン市人民委員会の管轄であり、ホーチミン市が1520億VNDを投資して2004年にクチに設立。総面積は88.17haと広く、2010年に稼働した。

AHTPは「先端研究開発センター」、「先端農業インキュベーターセンター」、「インフラセンター」、「先端農業トレーニングセンター」の4つのセクションを持ち、262人のスタッフが働く。現在は14の投資プロジェクトと、39社のインキュベーション企業がある。投資プロジェクトには日系とフランス系の企業が1社ずつあり、日系企業はフルーツや野菜の栽培・輸出を行う「GoodLife」だ。

「現在は野菜、フルーツ、蘭(花)、きのこなどに注力しています。遺伝子工学技術やバイオテクノロジーの研究や栽培も進めており、ここは将来のベトナム農業を支えるハイテク機関です」

農業全体を広く知るMr. Thienによれば、ベトナム人は健康意識の高まりから、安全・安心な食品を食べたいというニーズが強まっている。では、何が安全の基準となるのか。

そのひとつが「VietGAP」(GAP:Good Agricultural Practice)だ。ベトナム農業農村開発省(MARD)が定めたベトナムにおける安全生産の管理基準で、栽培、収穫、流通の各工程で基準があり、重金属含有量などの品質チェックや施設の有無なども調査される。スーパーなどで認証マークを見た人もいるだろう。

次が「GLOBALG.A.P」で、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した世界認証だ。Version5では野菜・フルーツ認証の管理点は218にも上り、厳しいチェックが課せられる。もうひとつが「オーガニック認証」で、認証基準は各国や各団体により異なる。日本では農林水産省による「有機JAS認証」が知られている。

「一般的にVietGAP、GLOBALG.A.P、オーガニック認証の順番で認証基準が厳しくなっていき、AHTPではVietGAPでの栽培を無料でサポートしています。オーガニック栽培に向けて努力している農場は多いですが、実現はかなり困難です」

情報を求める消費者 QRコードで読み取り

安全・安心な野菜やフルーツを栽培しようとする事業者も、そうした食品の購入者も増加中だ。ベトナムの雑誌の調査によれば、ベトナム人消費者が購入で重視するのは主に「価格」、「安全性」、「品質」、「利便性」、「形」の5つ。最も重視するのは「価格」だが、近年ではポイントが下がって「安全性」が上がっているそうだ。

「所得の増加で安全な食材を買えるようになり、価格は以前より重視されなくなっています。それでも、購入できるのは中間層以上のお金持ちでしょう」

最近では上の5つに加えて、新しい要素として「原産地」が入ってきたという。ただし問題がある。例えば、ダラットの野菜は美味しくて質が高いとベトナム人に評判だが、中国産のニンジンやジャガイモ等の野菜、サクランボやマンゴーなどのフルーツをダラット産として偽装販売する業者がいるのだ。

「そこで、消費者が原産地を調べられるトレーサビリティシステムを作りました。ブロックチェーン技術を使った              『TE-FOOD』という方法で、RFタグに情報を入れて、消費者はQRコードでそれを読み取ります。まずは大規模に消費される豚肉から始めました」

トレーサビリティは消費者の要望が高まったために導入を決定。「安全」というがその食品はどこから来たのか、いつ生産されのかなどの情報を求める声が増えたのだ。豚肉であれば、豚を麻酔薬で眠らせた後で水で太らせ、体重を増やして販売する方法もあるという。健康被害も考えられるので、原産地だけでなく大切な屠殺のルールも確認しているそうだ。

「反対もあったのですが、安全な豚肉販売のために専門局が努力してくれ、悪徳業者も減りました。今後は水産品、卵、野菜にも広げていく予定で、ハノイ、ダナン、ホイアンなどでも同じことを進めています」

増えるハイテクパーク 今後は水産と畜産に注力

今後は認証された食品も原産地表示も増えていくだろうが、ニーズがより高いのは原産地表示だろうとMr. Thienは語る。特にオーガニックは認証を取るのが厳しいし、価格は高くなるから購入者が限られる。一方、原産地表示は原産地名だけでなく、生産した農場や畜産地などの情報が求められそうだという。

ホーチミン市9区で様々な野菜を栽培する「Rau sach 8 Khoe」は、オーガニックの成功例と呼べるだろう。2000m2の農場から収穫される野菜はオンラインをメインに販売され、顧客には有名人も多いという。

「安全な品質を販売したいというオーナーの願いが実現でき、値段は高いものの、小規模なビジネスが回っています。こういう例はいいですね。AHTPでは日本、オランダ、台湾、韓国などと技術提携しており、今後は輸出を増やそうと思っています。日本であればもちろん、JAS規格に沿った食品にします」

ホーチミン市には今回の「農業ハイテクパーク」の他に、製造業を支援する「サイゴンハイテクパーク」とITの「クアンチュンソフトウェアパーク」があり、今後は水産業のためのハイテクパークをカンゾーに作り、その次は畜産系のハイテクパークを予定している。

「AHTPでは健康のためのメディカルマッシュルームや冬虫夏草を栽培しており、今後は保管倉庫を建てる予定です。ホーチミン市で一番大きなきのこの研究室になると思います」

ベトナムの若者イマドキの健康意識

Ngocさん(26歳)

事務所経営

Anさん(29歳)

IT企業勤務

Tramさん(23歳)

イベント関連会社勤務

Hienさん(20歳)

大学生

皆さん、運動してますか?

Hien 今は新型コロナウイルスで休校中だから週に6日ジムに行ってます。ローカルのジムで、2年間のメンバーです。

都会のオフィスに勤めている人は動かないから、健康を気にしてジムに行く人も多いですね。「CALIFORNIA FITNESS & YOGA」と「CITIGYM」が人気かな。CALIFORNIA FITNESS & YOGAには1ヶ月だけ行ったことがあるけど、40歳以上の人が多くて、お金持ちばかりだった。

Tram 私はジムに行ったことはないけど、自宅で週に3回くらい、腹筋運動やダンベルをやってます。ダンベルは最初2キロだったのが、3キロに上げました(笑)。あと、買い物には歩いて行くようにしています。

An ジムには通ってないけど、体を動かそうとは思ってる。僕は座り仕事なので、数時間仕事したら10分くらい散歩するとかね。なるべく階段を使ったり、歩くようにするとか。

Ngoc 私はダンスをしているのと、打合せでお客さんのオフィスが近ければ歩くようにしてる。おじさんやおばさんは朝の公園で太極拳とかしているけど、若い人はやらないよね

An 実はうちは両親が健康オタク。毎日のようにジムに行っていて、マシン、水泳、ボクシング、ヨガなど何でもやっている。

Tram うちの両親は畑を作ったり農作業をしている。いい運動になっているみたいで、あとは野菜をたくさん食べてるね。

Hien うちの親なんて、15年前からベジタリアンだよ。

Ngoc 実家では、料理するときに動物性の油は使わずにサラダオイルを使ってる。できるだけ少なくして。肉は脂肪分を取って調理していて、食べられなかったですね。

Hien 怖いのはコレステロールだと思う。血管に詰まって脳梗塞などを起こす、25~35歳の若い人が増えているでしょう。あれは運動不足や不規則な食事、夜遅くのシャワー、特に問題なのはコレステロールが多い食事みたい。

Ngoc ベトナム料理は味が濃くて、塩分が多いからね。日本に住んでたことがあるけど、比べるとベトナムは飲み物が甘いしね。

人気のヘルシーフードは?

Ngoc 最近のベトナム人は健康に敏感になってきたと思う。食べ物もそうで、中国産の野菜やフルーツは食べないとか。私の両親は中国産を全否定して、きちんとした店で買っている。

Hien ただ、中国産を完全に食べないのは難しいでしょ。だから極力避けている。

An 食材は国産を買うとか。特にオーガニックが人気で、高いけどね。

Tram ジムのFit24ではオーガニック事業をしていて、野菜をデリバリーしてくれて便利。ダイエットしたい人も頼んでいて、私の友人も使ってる。

Hien オーガニック系は食べたことないな(笑)。

An デトックスティーが流行ってるよね。ハーブ、野菜、フルーツなどが原料で種類が多い。

Ngoc 芸能人も使っていて、CMでは毒素がなくなってきれいになる、健康になるといっているけど、どこまで効果があるのかな(笑)。

An ただ、農薬を使っていないなど体に悪いものは入ってないから、効果がなくても損はしない。ただ、美味しくない。

Hien 飲んでるのはダイエットしたい人だけじゃないの?もう少し美味しくないとね。ティーとは関係ないけど、僕はタバコは吸わない。

Tram 私も吸わないし、父親は吸ってたけどもう止めた。若い人で吸う人はいるけど、仕事が忙しくて、残業が多くて、ストレスが溜まっている人だと思う。電子タバコをカッコいいと思って吸ってる人もいるね。

Ngoc 広告会社とかIT企業、ドライバーなんかに喫煙者が多いんじゃない?

An 僕はIT企業に勤めているけど、社員は150人くらいいて、吸っているのは10人以下だな。それと、以前に広告会社に勤めていた時、スタッフの女の子から「吸わないとアイデアが出ない」といわれたことがある(笑)。気持ち悪いから吸わないって。

これから流行りそうなものは?

Ngoc これからはダイエットに注目が集まると思う。女性だけじゃなくて男性もね。例えば、炭水化物を全く摂らないダイエットとか、ファスティング(断食)をするとか。あとは、振動で腹筋を刺激するマシンを使うとか。

Tram ダラットの新鮮な野菜を生で食べるとか?

Hien 僕はサプリメントだと思うね。たくさんの種類があるけど、特に魚油を使った血液がサラサラになるものとかね。

An みんな気にしないかもしれないけど、健康保険や健康診断も大切だよね。ちゃんとした会社は別だけど保険料を払ってなかったり、健康診断をしていない会社もある。保険の情報が少ないから気にしない人も多いけど、病院に行って大金を払うときに大切さに気づく。

僕は国の健康保険以外に民間の健康保険にも入っていて、どちらも会社が払っているよ。

Tram 私も会社が払ってる。指定の病院のリストがあって、そこならば全額カバーされるけど、それ以外は割引になるよね。

Ngoc 会社が払ってる。というか、私が経営者なので私が計算してる。

An やっぱり、多くの人の考え方はまだ「健康に暮らす」ではなく、「病気にならないために何をするか」だと思うね。

Ngoc そうだね。大都市の大気は悪いし、食べ物も良いものばかりでないから、この環境で病気にならないためにということね。だから、空気がきれいになって、体に良い食べ物が増えて、余裕ができたら、本当に健康のことを考えるんじゃないかな。

安心・安全な水がほしい 胎動する浄水器のニーズ

Sendai Tech Vietnam

仙代テック株式会社

常務

長谷川秀三氏(左)

Sales Manager

Mr. Phan Viet Van(右)

ベトナム水道水の現実 フィルターは要チェック

水道水は飲めない。これはベトナムに限らず世界的な標準であり、飲料水を買ったり浄水器を使うのが一般的だ。水道水が飲料水となる日本でも水にこだわる人が増えているように、ベトナムでも中間層や富裕層を中心に、徐々に水への意識が高まっている。

日本でボトルウォーター事業を16年続けてきている仙代テック。東南アジアの水道インフラ整備の遅れを知り、何か手伝いができないかと考えた。東南アジアの中でも成長株で、周辺国への展開も可能なベトナムを選び、2017年にダナンに工場を完成させた。

まずはベトナムの水事情について。ハノイ、ホーチミン市、ダナンなど大都市の水道局で浄水された水質は、ベトナム保健省(MOH)の飲料水基準に適合しているそうだ。

「弊社が検査したわけではないですが、同項目の基準値としては日本の水質基準値と大差ありません。問題は、水源となる地表水や地下水で進行し続ける水質汚染や、排水管網の老朽化、配管施工技術の低さ、使われる部品の質の悪さなどです」(長谷川氏)

これらの要因から漏水や異物混入が起こり、汚染された地下水も入り込む。懸濁物質をはじめ、銅や鉄錆、地中の残留農薬や重金属などが混入してしまうので、一般家庭で使う水質が一気に落ちてしまうのだ。経済成長で新しい建築物が急激に増える中、この状況が拡大していく。農村部では浄水の設備が小さいので、より問題が深刻という。

同社の商品である浄水器の「ラクサット」は、一般的な浄水器では難しいヒ素や農薬、放射能まで除去できる。また、浄水機はフィルターの汚れや経年劣化で水質や浄水量は徐々に下がっていくものだが、標準装備されたセンサーで浄水レベルを常に確認できることも特徴の一つ。最低でも年に一度は顧客を訪ねるアフターサービスでは、フィルターの交換対応や個別の相談にも応じる。

「時期や地域でも異なりますが、数日でフィルターが真っ黒に汚れてしまうケースもあります。ベトナムではメンテナンスは必須なのです」(Mr. Van)

ベトナム人は富裕層から 水質管理に高まる声

事業のスタート当初は日本人駐在員が主な顧客だったが、ベトナム人の個人客や法人客も増えてきた。現在は個人が約6割で法人は約4割、ハノイ、ホーチミン市、ダナンの都市部の顧客がほとんどだ。

個人客では、日本人は特に小さい子供がいる主婦からのニーズが強く、他の浄水器から乗り換えた人もいる。ベトナム人客は富裕層が100%で、金属アレルギーのベトナム人女性がシャワー後の掛け水にも使ったところ症状が緩和され、皿洗いでは手荒れが改善したという。

「法人は日系企業が100%です。製造業の工場と飲食店が主なお客様で、工場ではキャンティーン(食堂などでの調理水)や飲料水、生産機械の冷却や洗浄用途も増えています。飲食店は調理水や飲料用で、特に和食店では魚を洗うときや、出汁をとるのによく使われています」(長谷川氏)

最近多くなってきたのは、水質管理に対する問合せだ。定期点検に来てほしい、フォローアップをしてほしいといった内容で、ベトナム人も同様だという。   「近くに来ました」と連絡すると、「ぜひお願いします」などの返事も多く、洗濯水や風呂水に使いたいという声も出てきた。大量に使うので、用途や予算に応じて簡易的な浄水器も提案している。

「健康を気にするベトナム人は確実に増えています。その意識に対して医療のレベルが追い付いていないので、『予防』に力を入れているのだと思います。病気になったらお金もかかるし治りも遅いので、まずは対策。そのひとつが水ということです」(Mr. Van)

コロナウイルス肺炎でもベトナム政府が水際対策を即座に実施し、感染を恐れるベトナム市民の危機意識は日本人以上に感じた。そんな国民性も理由なのかもしれない。

「機械の健康」へも利用 様々な場面で貢献したい

同社が特に展開していきたいのは法人向け事業。上記にもあるが工場内では従来の飲料水等の他、機械の冷却・洗浄用途でも使われ始めた。工業用水に比べて、スケールなどの汚れが付着しないため、効率が落ちずに故障のリスクも下がるなどが理由という。

「20Lのウォーターボトルを工場内で運ぶ作業者を見た社長が、辛そうだし、空のボトルが床に並ぶのを来客に見せたくないという理由で、ラクサットを導入されたケースもあります。作業効率の改善や工場内の美観向上など、お客様のニーズは様々です」(長谷川氏)

地場企業との連携も始まった。顧客からの要望でベトナムの浄水会社と組んで、顧客の望む浄水システムに近づけるようサポートする。技術や経験、ノウハウがあるので、安価な製品を使っても効果が出せるのだ。

「健康を考えれば浄水器のニーズは間違いなく高まります。今後は純水を利用した付加価値製品向け、例えば、高アルカリイオン水や炭酸水などの機能水の元となる純水を提供するニーズも増えると見込んでいます」(Mr. Van)

ベトナムが取り組み始めた環境対策も健康とは切り離せないだろう。仙代テックでも排水処理への技術転用の他、ラクサットでのウォーターボトル減少によるでプラスチックごみの削減や、輸送不要による排気ガスの低減などにもつなげていきたいと語る。

「人々の健康やシステムの合理化のお手伝いだけでなく、地球環境保護の面においても、ここベトナムから貢献できればと思います。これから本腰を入れていきます」(長谷川氏)