10月11日~13日にホーチミン市7区のSECC展示会場にて、「METALEX VIETNAM 2018」が開催された。製造業向けの大型展示会で、25ヶ国から約500のブランドから出展。3日間の来場者数は約1万9000人だった。
バラエティに富んだ企業が出展
初日の午前中から会場には多くの来場者が詰めかけた。SECCの建物に入ると、会場エントランスまでの通路が迷路の状態。曲がりくねった長い通路の両側はサプライヤー中心のブースで埋め尽くされ、無理にでも目を向けさせようとする作戦か?
エントランスを入るとすぐ、左右に伸びるようにいくつもの小さなブースが並ぶのは、JETRO(日本貿易振興機構)による部品調達の展示商談会「Supporting Industry Show 2018」だ。前号でもお伝えしたが、今年は日本企業がバイヤー、ベトナム企業はサプライヤーとして各30社ほどが出展し、現地調達を希望する製品や供給できる部品を展示していた。
単独で出展する日本企業も多いが、今年はJETROの他、東京都中小企業振興公社での日本企業14社をはじめ、長野県、石川県、相模原市など自治体の大型ブースが目立ち、総じて日本・日系企業が増えたように感じた。
それ以外ではシンガポールや台湾のパビリオンが多く目についた他、上記のようなエントランス前や会場周辺にも小さなブースがひしめき、多種多様な企業が出展していた。来場者はベトナム人、日本人、中国系、その他アジア系などが中心で、欧米人の姿も見られ、相変わらず活気のある大展示会だった。
来場者の意向に納得感
多くのコンパニオンの女性たちでアピールしていたのは、2014年の設立のKEYENCE VIETNAM。METALEX VIETNAMへの出展は4回目で、ベトナムでの知名度を高めるのが目的とのこと。センサー、顕微鏡、測定器などの最新機器を展示し、イメージしやすいセンサーで興味を引けたらと語っていた。
「来場者の評判はいいですよ。例えば画像寸法測定器は、ボタンを押せば2秒で対象物の寸法が測れるので、精度と速さに驚く人が多いです。工場の自動化をお手伝いする中で、キーエンスを知ってもらいたいと思います」
ベトナムには新工場や新会社が多く、有望な市場と見ている。同社の製品にはローコスト商品とハイエンド商品があるが、どちらにもニーズがあり、昨日はハノイのベトナム企業の社長がハイエンド商品を見て、驚きとともに即決で購入したという。
5回目の出展となるのが昭和電機株式会社。同社の主力製品は送風機、ミストコレクター、集塵機などだが、来場者に関心が高かったのが工場内の熱気対策、冷却、循環に使われる送風機だったという。
「お客さんの反応から感じたのは、ある程度の余裕がある企業であれば、ダストやミストの集塵機は行き渡っているということ。送風機の価格帯は15~16万円ですが、興味を持っていただいています」
空調が置けない、風が通り抜けない、工場内の熱気を取りたいなどの要望に応えられる製品で、10~15m先まで風を送れるという。
価格の問題で悩むケースも
岡本工作機械製作所は、ベトナムの代理店でありアフターサポートも請け負うUnify Technologyとの共同出展。Unify Technologyは他にもMITSUBISHI ELECTRICなど合計10社と共同で出展しており、各社のマシンを並べた大型ブースを作っていた。
岡本工作機械製作所の展示製品は全自動平面研削機。ベトナムでも多くの企業で使われ、知られているものだそうだ。日系企業を中心に販路を広げたいが、競合は台湾メーカーであり、日系メーカーと同様にレベルアップしているという。
「機種によっては日系製品より4割安い。だからでしょうか、3~5年使えれば費用対効果に合うと購入する日系メーカーが、この5年ほどで増えています」
逆にベトナムのメーカーは仕事が増えたり、日系企業と仕事をするようになって信用を得たいなどの理由で、同社の製品を買う企業が増えているそうだ。
NC旋盤を展示していたのはTAKAMATSU MACHINERY VIETNAMで、今回が2回目。自動車などのネジやパイプを作るマシンで、日系企業を含めてベトナムでは1000台ほどが納入されているという。
「東南アジア向けの製品で、オプション対応なしのワンスペックに絞り、コストダウンをしています。ベトナムの他はタイやインドネシアで販売しており、四輪や二輪の部品メーカーさんが主なお客様です」
来場者は徐々に多くなり、中でもベトナム企業が目立っているという。ただ、日本では違うが、同社の製品はベトナムでは高額のように感じている。
市場開拓、存在をアピール
エントランスで資料が入ったバッグを配り、会場中央でブースを展開していたのが、龍記集団(LKMグループ)だ。香港の大手モールドベースメーカーで、中国南部のメイン工場では600台のマシニングセンタが稼働しているという。初めての出展とあって存在感を出したいようだった。
日本の大手メーカーをはじめ自動車、OA機器、家電など顧客の業界は幅広い。その実績を見せたいと、いくつかの部品を組み合わせた模型を展示していた。
「今回のために作りました。精度の高さと部品の大きさに驚く方が多くて、手ごたえをつかんでいます」
出展した理由は、有望市場として成長するベトナムに本腰を入れるためで、市場調査と商品アピールを兼ねているという。来場者からのヒアリングで「資材調達に困っている企業は多い」と見ており、まさにこれから本腰が入りそうだ。
2回めとなるのがパイプ切断機の丸秀工機。代理店ECOMとの共同出展で、前回はパンフレットとビデオ紹介だけだったが、今回は最新の実機を持ってきた。パイプ自動切断機の一部で、実際に動く様子に見学者が集まっていた。
「ベトナムにはまだほとんどない機械なので、市場開拓のつもりで出展しました。お客さんは珍しそうに見てくれますので、反応としては上々だと思います」
空港、駅、スタジアムなどの建設系、石油採掘の海上オフショアの土台などの現場で使われており、タイやマレーシアでのニーズはあるがベトナムは未知数とのこと。これからの市場ととらえていた。
目指せ!ビジネスマッチング
JETROのSupporting Industry Show 2018にはホンダ、トヨタ、キヤノンなどの大手から中小までがバイヤーとして参加。その中でNIDECはベトナムのグループ企業5社が出展した。精度が高い切削などの機械加工部品を希望していたが、5社で作っているものが異なるので、調達したい部品は幅が広い。現在は日系ややベトナム企業など調達先は多いが、コストダウンを図りたいとのことだ。
「図面を渡して見積もりを依頼したサプライヤーが何社かあります。相手のカタログだけで現物を見ていないので、これからですね。待ってるだけでなく、この会場を回ってサプライヤーを探しました(笑)」
Tokyo SMEのロゴを使ったセンスの良いネオンが人目を引いていたのが、公益財団法人東京都中小企業振興公社。中小企業の設立から海外進出までを支援しており、今年ハノイとホーチミン市にサポートデスクを設置した(P17参照)。
二輪、四輪、電気、食品、プラントなどの分野の東京の裾野産業メーカーが14社出展。10社は自社製品のベトナム輸出、4社は前工程や後工程を委託するパートナー探しが目的だそうだ。
「タイやインドネシアでもこうした製造業の大型展示会に出展しましたが、ベトナムは特に勢いを感じますね。前2国は市場ですが、ベトナムは市場であると同時に生産委託の場という両面があるからでしょうか」
METALEXの主催者であるReed Tradexと協力して、ベトナム企業を紹介してもらうビジネスマッチングも開催しており、売込みに熱が入っていた。
展示会は「どこにする?」
今回も初日の9時からオープニングセレモニーがあり、Reed TradexのIsara Burintramart氏やJETROホーチミン事務所所長の滝本浩司氏などが、ベトナムの製造業について語った。最近話題の第4次産業革命(インダストリー4.0)も含まれ、会場でも自動化をテーマにした展示が増えているようだった。また、今回が初回、あるいは2回目となる実績を持つ企業が散見され、ベトナム市場への新規参入の増加が伝わってきた。
近年のベトナムではこうした製造業系の商談会や展示会が増え、開催回数も多くなってきた。出展にはコスト、労力、時間が必要となるので、各企業に話を聞くと、「どこに出すか」を考えていた。イベントの選択肢が増えたので、「あそこは効果が出なかったから、ここに乗り換えた」などの声をいくつかの展示会で聞いた。出展者獲得のために主催者側がより切磋琢磨するようになれば、アジアの工業国であるタイに近づくことは間違いない。