ベトナム企業によれば、ベトナムの水産品の中国への輸出チャンスは増えてはいるが、一部の水産品に限られているという。
8月24日、中国政府は、日本が福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出することを理由に、日本からの全ての水産品の輸入を禁止すると発表した。この輸入禁止措置がいつまで続くのかは今のところ明らかにされていない。これより前の2023年7月に中国政府は、日本の47都道府県の内10県からの食品輸入を禁止すると発表していた。
ニャチャン市内のある水産業者の社長は、中国による日本の水産品輸入禁止措置はベトナムにとって有利な条件にはなるが、対象となるのはマグロや一部の海産物で影響は限定的だと話す。他のパンガシウスやエビなどについては、大きな変化は起きないとみられている。
この社長の会社では、エビ、イカ、タコ、マグロなどを中国市場に輸出している。「現時点では、中国からのマグロの注文が前年同期から15%増加したけれど、エビやタコなどは前年比で20%のマイナスです」とこの社長は話す。
第4四半期にこの会社の中国向けの輸出は、中国の年末需要によって増加すると予測されている。特に日本からのクロマグロの輸出が禁止されたことは、ベトナムの水産品の価格が上昇し、より多くのシェアを獲得するチャンスでもある。
Nam Viet社のゾアン・チー・ティエン取締役も中国でのベトナムの水産品需要が年末に向けて回復する可能性が高いと指摘する。特に近海で獲れる魚介類は、中国市場への参入チャンスが増えるとみられている。その理由は、中国が日本から輸入していた水産品の大部分が甲殻類と軟体類だったからだ。輸入水産品の構造からみれば、カニ、エビ、貝類とマグロなどは、チャンスがあるとみられている。
水産業界全体から見ると、ベトナムの水産業者が中国での市場を拡大するチャンスはそれほど大きくないと考えられる。なぜなら2022年の中国の水産品輸入額は191.3億USDで、そのうち日本からの輸入は僅か3%に過ぎない。中国への主な水産品輸出国はエクアドル(18.6%)、ロシア(14.4%)、ベトナム(8.8%)、インド(6.6%)などとなっている。
SSIリサーチのデータによればベトナムから中国へのパンガシウスの平均輸出額は、中国の購買力低下によって前年同期よりも下がっている。
SSIリサーチは、ベトナム産のパンガシウスは日本から中国に輸出されている主な水産品であるイカ、タコ、ホタテなどの代替品にはならないとしている。2022年日本から中国に輸出された魚の切り身の輸出総額は僅か1180万USDだった。中国にとって主要な水産品の輸入国は、エクアドル、インド、ロシアとなっている。
「先週、中国へのパンガシウスの輸出量が前年同期比で僅かに増加しましたが、目立ったほどの変化ではなく日本の水産品輸入禁止との関連性は殆どないとみられています」とSSIリサーチは報告書の中で強調している。
ベトナム水産品輸出協会(VASEP)も、ベトナムの世界市場全体、中でも中国市場に対する水産品の輸出状況が力強く回復するのは難しいとの見方を示している。2023年上半期にアメリカ、中国、EUなどの主要輸出先はインフレ圧力に直面し、消費が低迷した。
2023年7月末までのこれらの市場へのパンガシウスの輸出額は前年同期比32%減の3億2500万USDとなり、エビは9%減の3億3800万USDとなった。
VASEPのチューン・ディン・ホエ事務局長は、ベトナムの水産品、特にパンガシウスは、中国の門戸開放後に需要が増加すると期待されていたが、実際にはパンガシウスの輸出額は大幅に落ち込んだと話す。
ホエ事務局長によれば、中国の主要な水産品輸入国は、日本ではなくエクアドル、インド、ロシアであるため、最近の中国による日本からの水産品輸入禁止措置は、ベトナムにとってチャンスとはならない。ベトナムからの輸出品では、ホタテ、ナマコ、カニなどの輸出が増加する可能性があるが、中国の消費が低迷している中でこれらの高価な商品の輸出量はそれほど伸びないとみられている。
中国に大量の水産品を輸出しているNam Viet社のゾアン・チー・ティエン取締役は、現在同社は、事業の維持に力を入れていると話す。ディエン氏は、2023年第4四半期以降に輸出が増加するという明るいシグナルが出ることを期待している。
出典:03/09/2023 VNEXPRESS
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