南部最大と言われる国際的な食品展示会「Vietnam Foodexpo」が11月22~25日、ホーチミン市7区のSECCで開催された。海外は20以上の国と地域VSベトナムは30以上の省と都市から出展。ガチンコ勝負が始まった?
ベトナムの名産品が勢揃い
約400社の国内外の企業が500以上のブースを出展。海外勢は欧米、東アジア、東南アジアなど多彩な国から出展しており、ブース数が多かったのは韓国。中国企業は珍しく少なく、ほかの展示会では見かけないミャンマーも数社が出ていた。
ただ、この展示会の主役はベトナムだろう。大型展示会では外国企業が目立ってベトナム企業の存在感が薄くなることも多いが、今回はホーチミン市やハノイなどの大都市をはじめハイフォン、ラムドン、ビンフック、ビンズン、バリアブンタウ、ダラット、ダナン、カマウなどが「地域ブース」を出展して各地の特産品や名産品を並べた。
ハノイパビリオン、ラムドンパビリオン、ホーチミン市パビリオンなどは大きなブースで、10社やそれ以上が共同展示する迫力のあるもの。個社での出展も当然あるが、地元愛が強いのか地域ブースのほうが張り切っている気がした。
中央には国際基準に従って栽培・生産された「バイオトレード」のコーナー。木目調に統一された各ブースにはベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの約20社の企業が出展し、シロップ、ハチミツ、スパイス、ナッツ、ココナッツ、茶、コーヒーなど主にオーガニック食品を展示した。
ここだけ雰囲気が独特で、スタッフの商品知識が高く、英語話者が多かった。ベトナムの展示会に「新しい風」が吹き始めたかと少々驚いた。
愛知県の老舗企業が結集
日系企業で目立ったのは赤で統一したブースデザインのエースコックベトナムと、多種類の米を展示したアンジメックスキトク。それ以外に20社程度の日本企業が出展しており、なかなか興味深かった。
愛知県食品輸出研究会という民間団体の出展。愛知県の企業41社が所属しており、今回はそのうちの5社が来越した。
会長でリーダー的な存在の佃煮の平松食品が創業101年、乾麺・きしめんの金トビ志賀は創業106年、八丁味噌のまるや八丁味噌になると創業700年弱と老舗企業が多い。ほかには抹茶や茶の南山園、海苔・椎茸の永井海苔が出展した。
輸出に向けた各国の規制など情報を収集・共有しながら、これまで米国、台湾、マカオの展示会に参加。アメリカチーム、香港・マカオチーム、ベトナムチームなどに分かれて戦略を練るという。
「研究会には1業種1社しか参加できないので、各社のレベルが高く、多種類の商品を紹介できます」
平松食品が地域商社的な役割をし、会員企業の商品をまとめて輸出し、関税対策なども支援している。ベトナムはスタートしたばかりで、地元のベトナム商社が今回の主なターゲットだ。これからタイ向けに地域商社的な企業を作る予定で、その後で米国を狙う。
「日本の伝統的な商品が揃うのでどの国でも反応が良く、ベトナムでもたくさんの人が来てくれています」
中国禁輸のホタテの販路
ホタテを中心に陸奥湾で取れた鮮魚を扱う青森県のアラコウ水産。漁師から販売までの6次産業化企業で、鮮魚、冷凍、加工品までを扱い、当日はホタテの干物、スナック、解凍した冷凍品などを並べた。中国が日本の水産物を全面禁輸したことで、ベトナムでの輸出先を探している。
台湾の展示会にも出展し、「台湾人は元々ホタテを食べているので反響が良かった。ベトナムでも食べる人が増えている」という。
今回は市場調査を兼ねており、鮮魚は香港、鮮魚と冷凍品は中国への輸出が多かったが、ベトナムでは加工品を含めた水産物全般を考えている。
日本で人気商品の乾燥ホタテも売り込みたい。日本では酒のつまみが一般的だが、ベトナムではスープ用に出汁を取ることが多いそうだ。
「中国の禁輸で弊社も同業者も在庫が溜まっています。日本政府から支援金は出ても、それだけではじり貧。待っているだけでは前に進めません」
カニカマが食べたい!
食品系の展示会では試食品の提供で賑わうブースが多いが、ここもそのひとつ。カニカマ、かまぼこ、ちくわなどの練り物を生産する石川県のスギヨで、商品が置かれるとすぐに来場者の手が伸びる。数種類用意したソースも好評だった。
地場商社を通じて既にベトナムに輸出しており、飲食店などに卸している。新型コロナの時期は売上が大きく落ち込み、中国向けも禁輸となったので東南アジア、特にベトナムで拡販したいと出展した。何人もに試食してもらっているが、皆が味を高評価してくれると語る。
「練り物は日本製が美味しいと思いますし、ベトナムにも食べる文化がある。商社任せではなく、もっとアピールしたいとベトナムに来ました」
日本の特産品で長期的市場
食品や農林水産物の名称を知的財産として国が登録する制度「GI」。日本には「神戸ビーフ」や「夕張メロン」など約130あり、その中から4社が、食品需給研究センターとして出展した。愛知県の八丁味噌、新潟県のくろさき茶豆、青森県の黒にんにく、秋田県の稲庭うどんだ。
既にイギリスやシンガポールの展示会に出展している。シンガポールなどは物価が高いので価格に違和感を持たれないが、物価の安いベトナムはこれからという。ブランド力があるため日本でも相応の価格であり、輸出でさらに値が上がるからだ。
「今から種を蒔いて5年先、10年先の市場を狙います。ベトナムの所得の伸び率はASEANトップと聞いていますので、期待が大きいです」
八丁味噌はインスタント味噌汁、くろさき茶豆はコシヒカリと枝豆から作ったグルテンフリーのバームクーヘンも展示。黒にんにくはベトナムの病院などで売れているそうだが、代理店を通した輸出は思ったほど伸びなかった。認知度アップと市場調査で出展した。
「稲庭うどんはホーチミン高島屋さんで販売していますが、高価格がネックとなっているようです。売り先は限られるかもしれませんが、なぜ高いかを説明したいです」
根室の海の幸はいかが?
北海道の根室市から出展、と思いきや、当地の日系企業HOPESのブース。日系メガネ店iMEGANEの経営者が運営しており、根室市出身なので同市の水産加工業者に知己が多く、量を集めて輸入販売している。ベトナムでは小売店を中心に販売しており、もうすぐ卸売りを始める予定だ。
「来場者の方は新鮮な水産物に興味があるようで、初日の昨日は約1000人にパンフレットを渡しました。中には関連業者もいて、いくつかの商談につながりました」
人気は真空パックされた「開きほっけ」。通常の1.5倍ほどの大きさで2人分になり、ベトナムで売り出し始めた。さんまのワタを抜いて明太子を詰めた「さんまめんたい」も売行きが良い。個人向けにEC販売もしており、生うになどの高級品も予約注文できる。
「いかがです? ちょっとお高いけど美味しいですよ」
冷凍の京野菜を広げたい
京野菜の冷凍惣菜を製造・販売する京都食品。海外向けに冷凍した京野菜を輸出しているがベトナムは未開拓で、今回の出展は2回目となる。
シンガポールとマレーシアは商社経由で販売しているが、ベトナムでは京野菜の魅力や京都では日常的なおかずである「おばんざい」が浸透していないと感じた。
「日本でも高価なのでアッパー層向けのホテルなどで調理され、美味しい和食として味や品質が認められています。シンガポールやマレーシアでもこうした点が評価されました」
一方、ベトナムでは野菜の冷凍輸入が少なく、小売もしていないので、レストランやホテルに関係した商社に興味を持ってもらうことが大切と考えている。
「ただ、そうなるとターゲットが絞られてしまいます。販路は広げたいので、難しいですね」
ユーチューバーがアピール?
日本酒を中心に日本製の酒類などを海外に輸出するMITSUGEN。初めての出展で、2023年は中国、アメリカ、オーストラリア、香港、シンガポールと多くの国の展示会に出展した。持ってきたのは何本もの日本酒と梅酒などのリキュール。日本酒はベトナム人に合わせて甘口を多く用意した。
「試飲の様子ではリキュールのほうが好まれ、日本酒は飲んだことのない人、イメージのない人もいます。リキュールから徐々に日本酒を覚えてほしいです」
各国の展示会を回って、日本酒の評価が高いのはオーストラリア。好きなことにお金を使える人と日本酒が好きで飲む人が多いこと。この両方が揃わないと海外で日本酒を広げるのは難しいそうだ。
ベトナムで探しているのは当地のバイヤーや代理店など、日本酒を広めてくれる相手。これとは違った手法だが、派手な服装のベトナム人ユーチューバーが飛び入り参加して、商品を連呼する様子が録画されていた。
この記事が出る頃には日本酒がベトナム中に知られている?