ベトナムの対アメリカ輸入品税率引き下げが追い風に
2025年1月から5月にかけて、アメリカからベトナムへの農産物、消費財、生産原材料、家畜飼料の輸出量が急増している。これは、4月から発効した輸入関税の引き下げを定める政令第73号の影響が大きいと見られている。
アメリカ産農産物のシェアが拡大
ベトナム農業・環境省によれば、アメリカは現在、ベトナムにとって世界第3位の農林水産物輸出国となっている。市場シェアは8.2%で、2025年5か月間の成長率は5.4%に達した。また複数の品目が2桁成長を記録している。
たとえば、ベトナムは2025年4月末までにアメリカから2億300万米ドル相当の果物・野菜を輸入しており、前年同期比で約60%の成長となっている。アメリカ産果物はベトナムの果物輸入市場において26%のシェアを獲得している。
木材製品、畜産飼料などでもアメリカ産が拡大
また、木材および木製品でもアメリカはベトナムにとって第2位の輸出国であり、市場シェアは13%。今年1~4月の輸入額は前年同期比で32%増となっている。
さらに、アメリカ産大豆の輸入も拡大しており、アメリカとブラジルが主要供給国としてそれぞれ59%、28%のシェアを持っている。特筆すべきは成長率で、アメリカ産は前年同期比19%以上の成長を見せた一方で、ブラジル産は58%の減少となっているのだ。
ベトナムの対米輸入関税引き下げの影響
このアメリカ産農林水産物の輸入量急増の背景には、4月1日から発効した政令第73号により多くの品目で関税がゼロまたは大幅に引き下げられたことがあるとみられている。たとえば、殻付きピスタチオの関税は15%から5%へ、アーモンドは10%から5%、生鮮リンゴは8%から5%、さくらんぼと干しブドウはそれぞれ10%、12%から5%へと引き下げられた。
ベトナム果実協会(VINAFRUIT)のダン・フック・グエン事務局長は「アメリカ産のリンゴ、ブドウ、さくらんぼ、オレンジ、ブルーベリー、ジャガイモなどは品質が高く、安全基準も満たしているため、ベトナム人消費者の人気が高い」と述べた。特にピスタチオは現在、輸入果物カテゴリーでリンゴを抜いてトップとなっているという。
畜産・木材加工分野の専門家も同様の見解を示している。たとえば、家畜飼料については関税が2%から0%に、大豆ミールについても最大2%から0%へ引き下げられた。木材および関連製品(HSコード44.21、94.01、94.03)についても、従来の20%~25%の関税が0%へと変更された。
ホーチミン市のSADACO社のチャン・クオック・マイン取締役会長は、「9月~10月の繁忙期に向けた在庫確保や、地政学的リスクへの対応、さらには対米輸出企業の相互関税対策としても、米国からの輸入拡大は合理的な動きです」と分析する。
さらに、アメリカ・アイオワ州農務省のマイク・ナイグ氏は「ベトナムは、乾燥蒸留穀物(DDG)、トウモロコシ、大豆といった米国産農産物の購入に強い関心を示しており、これは単なる取引を超えた関係強化の証だ」と述べた。
ベトナムからの対米輸出も堅調に推移
アメリカからベトナムへの輸入拡大の一方で、ベトナムからアメリカへの木材輸出も堅調に推移しており、2025年1~5月の輸出額は前年同期比10.3%増で、54%のシェアを維持している。また、家畜飼料分野でも輸入価格は下落傾向にあり、大豆は前年比12.6%減の1トンあたり461.5ドル、小麦は3.4%減の266ドルとなった。
ドンナイ省畜産協会のグエン・チー・コン会長は「アメリカからの種豚導入や技術研修に関する協力契約が進行中で、現在、100万ドルを超える契約が2件含まれています。これらはアメリカ政府のGSM-102輸出信用保証プログラムに基づくもので、ベトナム企業が米国農産物へ安全にアクセスできる仕組みとなっています」と明らかにした。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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