世界が求め始めた“ローカルの個性”
1990〜2010年代が「グローバル標準化」の時代であったとすれば、2020〜2030年代は「グローバル個性化」の時代へと移りつつある。
ベトナムが「Made in Vietnam」「Made by Vietnam」を強く推進し、国内製造にとどまらず世界市場への進出を後押しする現在、「ネオ・ローカリズム(Neo-localism)」が持つ意味は一段と大きくなっている。
国際的な各種調査──McKinseyからWGSNに至るまで──は、消費者が大手ブランドの名声に依存せず、独自の物語や由来、精神性を持つブランドを求める傾向が強まっていると指摘している。
均質化の時代が生んだ“帰属感の欠如”
数十年にわたり、世界は製品デザイン、テクノロジー、審美性、嗜好性までもが均質化されてきた。
東京やバンコク、ニューヨークやホーチミン市の商業施設は、照明、香り、広告音、完璧な利便性と同じリズムで満たされ、人々は逆に「自分が属する場所」の感覚を失いつつある。
そうした中で、世界は文化固有の“でこぼこ”──ローカルの手触り──を再び求め始めた。
「ネオ・ローカリズム」は、行き過ぎたグローバル化に対する自然な反作用として生まれたものである。ただし、それは過去への回帰ではなく、新たな意味づけであり、グローバル化との“調和”を志向する思想である。
地元の農家が焙煎するコーヒー、手仕事のバッグ、土地の歴史を語るブランド──こうした素朴な価値が、テクノロジーの時代に再び存在感を持ち始めている。
世界各地ではローカル価値の再評価が進んでいる。
米国では地元密着型カフェが「made for here」の感覚でスターバックスを凌ぐ勢いを見せ、日本では「侘び寂び」や「おもてなし」がMUJIやユニクロを支える美学となり、韓国ではK-popや映像文化が「K-power」として国家ブランドを底上げしている。
タイでは食やホテル、デザインや音楽を通じて文化を現代的に表現する手法が広がり、インドではFabIndiaやForest Essentialsが伝統技法とアーユルヴェーダ哲学を武器に高級市場へ進出している。
北欧ではIKEAやOatlyが「ローカル性と持続可能性」の組み合わせが世界で通用することを証明している。
ベトナムブランドが自らの物語を語り始めた
こうした潮流の中で、ベトナムブランドも固有の声を響かせ始めている。
Biti’sの「旅して、帰り着く(Đi để trở về)」、コンカフェの歴史的ノスタルジー、Cocoonのベトナム自然素材を生かしたヴィーガン化粧品、ビンファスト(VinFast)の産業への挑戦、PNJの「Living Beautifully(美しく生きる)」に象徴される人文的価値などがその代表例である。
20世紀に「低コストの工場」と見られたベトナムは、21世紀には「創造する国」としての認知を獲得できる位置に立っている。
「Made in Vietnam(ベトナム製)」が製造能力の象徴だったとすれば、「Made by Vietnam(ベトナムによる創造)」は創造力・価値観・文化の象徴となるべきである。
これは単なるラベルの変更ではなく、国家能力の質的転換を意味する。
委託から主体へ、加工から創造へ、生産から文化的価値の発信へと進む変化である。
“物語を輸出する国” への道
高付加価値の製品・サービスを輸出するために、ベトナムは自国の文化的背景や「ネオ・ローカリズム」的思考を基盤に、ローカル性を宿しつつ世界と対話するブランドを育てる必要がある。これは単なるマーケティング手法ではなく、ポスト・グローバル化時代の国家戦略の基盤となる思想である。
世界が求めているのは「どこかに似たブランド」ではない。
世界はベトナムが語る物語──人間性、調和、素朴で確かな美──を必要としている。
知性で生産し、アイデンティティで創造し、感性で輸出することができれば、「Made by Vietnam」は単なるラベルではなく、世界地図に刻まれる文化的“署名”となるであろう。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN



























