組織づくりの課題と考え方を解説してきた本連載の最後は「人材採用」についてです。特に北部では、ワーカーが給与水準で中華系・韓国系を選び、日系企業が選ばれにくいという声を頻繁に耳にします。
この悩みのヒントになるのが、かつての二輪車市場の変化です。中国企業がベトナムに進出した際、3年で市場の9割が奪われました。ただ、その後は「安さ」よりも「壊れない品質」が再評価され、日本企業のシェアは回復しました。
人材採用において「働き先として選ばれる」ためには、同じように「経営の品質」を磨き続けることが重要だと考えます。原資に限りがある金銭的報酬での勝負は持続的な解決策ではありません。成長環境や働きがいといった長期的な価値で選ばれることこそが、長期的な人材確保につながるのではないでしょうか。
実際に外資系へ転職した社員が、契約終了を機に日本企業へ戻るケースも増えています。第1回でも触れましたが、ベトナムの若年層は「働きがい」を一層求めるようになってきています。その中で、「成長を支える風土」や「高品質なものづくり」といった日本企業の強みは今後の「選ばれる理由」になるはずです。
そして、ベトナム組織の特徴は人間関係が良いことです。この関係性の良さに加えて、理念や仕事、風土などの魅力で選ばれることでさらに強い組織に進化すると考えています。
本連載でお伝えしてきた観点が、皆様の組織づくりの一助となれば幸いです。当社も日系企業の力でベトナム組織の可能性を切り拓くべく、引き続き尽力したいと思います。



















