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ベトナムビジネス特集Vol151
本当のニーズを探せ
日系小売りが攻める!

新型コロナが落ち着いたベトナムで小売業界が活況の兆しを見せている。消費者の志向やビジネス環境が大きく変化する中で、「本当にニーズ」を見極められるか。商品、業態、企業規模の異なる4社に本音を取材した。

ブランド力×オーナー企業
アポなし訪問からグループ化

 「earth music&ecology」を主力に数多くの人気ブランドを持つ、レディースカジュアルメーカーのストライプインターナショナル。日本と海外に約1500店舗を展開する大手アパレルだ。海外進出は早く、2008年の台湾現地法人設立からスタート。

「その後中国に現地法人を設立し進出するも、環境は厳しかった。海外700ブランドが参入するレッドオーシャンで、最終的に撤退を決めました。今は人口が増加中のASEANに目を向け、ベトナムを最も重視しています」

 可能性が高い国をインドネシアとベトナムととらえた。インドネシアはジャカルタのECベンチャーに投資して現在は6つの実店舗を展開し、ベトナムではブランド知名度の高いオーナー企業を探して、ハノイを拠点とする女性服のNEMグループを見つけた。その後がユニークだ。

 アポなしで訪問して、自社のプレゼンとベトナムに投資する理由を説明し、グループに入らないかと誘ったのだ。当然簡単には承諾されず、約1年半の説得の末に株式を取得。2017年にSTRIPE VIETNAMを設立し、経営に参画した。

 NEMの商品はパンツ、スカート、コート、アオザイなどだがワンピースの比率が一番高く、その価格は7000~8000円と比較的高め。顧客の中心は35~45歳の女性で、企業に長く勤める中間層のOLなどだ。店舗数は買収後に増え続けて2022年8月末で86店となった。

 2022年9月にはトレンドに敏感な20代の女性向けに新ブランド「HIME」(ハイミー)を立ち上げ、ハノイに1号店をオープン。近年は大卒の女性が増えて、新卒の初任給も上昇している。将来のためにも20~25歳を取り込めるブランドがほしいと、1年半をかけて商品を開発した。

「アオザイの文化、中国風の着こなし方、原色やボディフィットを好むなど、ベトナムのファッションやトレンドは独特です。そのため、日本の商品は販売せず、現地デザインチームの意見を尊重しています」

値引きをしない新商品開発
靴とバッグでトータルコーデ

 2017年当初のNEMには「値引き文化」が根付いており、薄利多売を続けると将来の経営が苦しくなると感じた。そこで新型コロナによる閉店期間を好機として、値引きをせず、売上が落ちても利益率を追求できる商品開発に切り替えた。

 中国などへ生地の調達先を広げる一方で、ハノイ、ホーチミン市、ECユーザー向けの3市場に合わせたデザインに変更。デザイナーは14人に増やし、パリ、ニューヨーク、東京といった最新コレクションを学ばせ、定番以外にも顧客が振り返るような斬新なデザインを求めた。また、販売単価を細かく分け、生地や付属品を変えて買いやすくした5000円程度のワンピースを投入。こうした結果、新型コロナ前の2019年比で売上は若干落ちたが、利益率と利益額は倍増した。

 新ブランドのHIMEでは、韓国とベトナムのファッションを融合させた。調査をすると20代前半の女性の注目ファッションが「韓流」だったためで、それができるデザイナーを採用。HIMEもジャケットで6000~7000円と少々高めな設定だが、1号店の売行きは上々だ。

 トータルファッションとして靴やバッグを揃えたいと、並行して新しいパートナーを探す。NEMとの相乗効果を考えたOLの人気ブランドとして、ハノイのJunoとホーチミン市のVascaraが上がった。Junoが値引き重視でVascaraは品質重視と感じ、かつVascaraは全国131店舗中北部には5店舗(取材時)しかなく、ハノイを攻めれば顧客は増えると思った。

「Vascaraも飛び込みで訪ねたのですが、対応はほとんど門前払いでした(笑)」

 再び説得を続けて、新たな現地法人STRIPE SAIGONを2019年に設立し、株式を取得してグループ化した。現法を2社に分けたのは各パートナー企業のブランド、企業文化、組織体制などが異なるからだ。

 また、日本からは張替氏が両社の舵取りをするほか、生産や営業部門の日本人メンバーは参加していない。各社のブランド色に影響を与えないためだという。

自主性を尊重した組織改革
HIMEは2号店、3号店へ

 張替氏は新型コロナ前の2018~2019年、毎月10日ほどベトナムでスタッフたちと接していた。最初の1年は「ベトナムはこうしている」など主張が強かったが、折れるところは折れて、時間を掛けることで、自発的な提案が上がってくるまでになった。

「現在の幹部会は、前週の販売、在庫、広告効果などの数字を元に原因をロジカルに突き止め、翌週の打ち手を考える組織に成長しました。生産管理や営業管理は2社に任せています」

 NEMの強みは自社工場があること。外部委託では生産に最低でも75~90日かかるが、生地を揃えれば45日に短縮できる。この差は大きく、例えば暑い日が続いて秋物の売行きが落ちると予測できれば、半袖の商品を急遽作るなどの対応ができる。

 この工場のワーカーを含めてNEMは約1430人、Vascaraには約720人のスタッフがいる。彼らのモチベーションはとても高く、HIMEの開店ではNEMの本社からだけでなく近隣店の店長クラス、工場のワーカーまでマイクロバスで応援に駆け付けた。同じスタッフTシャツを着て搬入を手伝っていた張替氏は、その熱量に涙が出そうになったそうだ。

「ベトナムブランドはASEANに展開できると思います。インドネシアやマレーシアは難しいでしょうが、カンボジアのプノンペンならいけるのでは」

 新型コロナの影響を受けて、ファッション業界の客足は完全には戻っていないそうだ。昨今の物価高もあり、長く使用できる靴やバッグの小物店のほうがアパレルよりも深刻だという。それでも、ベトナム小売業界への期待は大きく、有望市場であることは変わらない。

「NEMとVascaraの相乗効果はこれから始まるでしょうし、HIMEはハノイで2店舗ほど増やして、ホーチミン市にも早く作りたいですね」

PBと地場商品で比較購買へ
日本と異なる基準や制約も

 ホームセンター大手のコーナン商事は元の本社が大阪府堺市にあり、在大阪ベトナム総領事館も同じ市内にある。ベトナムに近しさを感じる環境の中で、イオンモールからベトナムで開店予定のビンタン店へのテナント出店を誘われた。日本の市場が飽和する中で海外に注目していたこともあり、海外進出第1号がベトナムに決まった。

 2016年にKOHNAN VIETNAMを設立し、同年7月にビンタン イオン店をオープン。南部を中心に出店を続けて北部にエリアを拡大、現在は南北で10店舗を運営している。全店がイオンモールなどショッピングセンター内にあり、店舗で販売する商品数は数万点に及ぶ。

「お客様から支持が多いのは日本のプライベートブランド(PB)で、商品全体の約3割になります。一度購入いただいたお客様が継続して購入し、ご利用いただいているのが特徴です」

 その他の商品は、日系の取引先や代理店、ローカル企業からの仕入れだ。進出当時は日本語で表記されたパッケージのPBが半分程度を占めたが、ホームセンターという業態もPB商品もベトナムには馴染みがなく、顧客に認知してもらうまでは苦戦した。

 知名度の高いローカル商品と機能の似たPBを並べて陳列し、顧客が比較購買をできるようにするなど、販売の工夫を行うことで双方の商品の売上が伸びていった。

「PBは主に中国で生産して日本のコーナン商事で輸入したものをベトナムに送っています。最近は店舗数も増えて発注ロットがまとまってきたので、中国から直接輸入に切り替えて輸入コストを抑えるなどの工夫をしています。今後はPB商品の拡充に加えて、現地開発商品を増やしていくことで、さらにお客様にとって親しみやすい店にしていく予定です」

都市部店はアンテナショップ
取引先との商品協業の場として

 商品カテゴリーは大きく3つに分かれる。工具などの「ホームインプルーブメント」、消費財中心の「日用消耗品」、家具やインテリアの「ホームファニシング」で、売上比率では同程度とのこと。

 売れ筋商品を聞くと、日用消耗品で代表的な商品はコーナン商事のPB商品である、不織布の使い捨てキッチンクロス。個人のほか飲食店など幅広い顧客が購入している。ホームファニシングのひんやりと涼しい冷感寝具は、特設コーナーができるほどの人気商品となっている。

 売れ筋商品は店舗により多少異なるが、いち早く売れ筋商品を発掘するアンテナショップともなっているのがレタントン パークソン店。郊外にある他店舗と違ってホーチミン市の中心部にあり、顧客のニーズを探りながら都市型の品揃えに修正すると同時に、全店舗に導入する新たな商品を実験的に販売する、トライアルの場として位置付けている。

 例えば、ベトナム南部の伝統陶器であるソンベ焼きの食器。若い芸術家が伝統的な陶器に現代のデザイン性を持ち込んだ食器で、パークソン店で人気の商品となった。その後、これらの商品を北部の店舗に導入すると、パークソン店に劣らない好調な売行きとなった。

「北部では古くからバッチャン焼きが有名ですが、ライフスタイルが変化する中で、北部のお客様にも、南部の伝統的な商品の新しいデザイン性が受け入れられたのでしょう」

 陶器以外にも、豆選びから焙煎までこだわった南部産豆のスペシャルティコーヒーや、南部で流行しているクラフトビールなども、パークソン店でのトライアル後に全店舗に導入しており、販売は好調である。

「ポストコロナでベトナム市場が再び活況を呈する中で、パークソン店では多面的に新しいことへのトライアルをしていきたいと考えています。例えば、ベトナム市場への参入を検討されている日系の取引先様とも、パークソン店で商品販売のトライアルを一緒にできればと考えています」

長期で育てるDIY市場
2032年に海外100店舗へ

 自分でオリジナルの家具などを作るDIY(Do It Yourself)。そのための工具や資材が豊富に揃う場所がホームセンターだ。日本のDIY売場には、趣味で楽しむ人とビジネスで購入する人の2種類の顧客が来店する。後者は職人などが早朝の仕事の前に立ち寄って現場に持っていくプロユースだ。

「ベトナムでは立地や商習慣の問題があり、プロユースの方にご利用いただきづらい状況にあり、今後解決していくべき課題として認識しています」

 一方の趣味としてDIYを楽しむ人はまだ少数なので、長期で市場を作っていく考えだ。例えば、スペシャルティコーヒーの売場では、ハンドドリップのイベントを開催し、時間をかけてコーヒーを淹れる過程や時間を楽しむ体験をしてもらう。創作的な活動を好む、潜在的な顧客層の開拓に努めているのだ。創作的な活動を好む人たちに工具などに接する機会を設けながら、DIYの市場を創っていく考えである。

 経済的に豊かな人の増加とともに、陶芸教室など趣味の場も多彩になってきている。新しい時間の使い方を提案しながら、顧客を拡げて成長していく戦略だ。

 1号店出店からの6年で商品ニーズにも変化を感じており、価格訴求型商品よりも価値訴求型の商品のニーズが高まってきていると振り返る。

 マーケットの質的な変化を意識しながら、先述のようなホームセンターとして、コーナン商事としての強みを発揮していく。人口や収入の増加による成長、伝統市場からスーパーなどの近代市場への変化による成長を享受することで、積極的な事業拡大を見込んでいる。

 コーナン商事は10年後の2032年に、海外店舗を100店に拡大することを視野に海外事業に取り組んでいる。

和食居酒屋から食材小売へ
今年3月にハノイに2号店

 2013年、ホーチミン市に和食居酒屋「晴レ屋」を開店。牛肉や豚肉をスライスする加工場を作ったことがきっかけで、店内で冷凍した魚や肉など日本食材を販売するようになった。新型コロナの影響もあって居酒屋は閉店し、2020年10月からレタントンの現店舗で小売店を本格スタートさせた。

「居酒屋時代のサプライヤー10社ほどからの仕入れています。彼らの勧めもあって次第に商品が増えて今は約250品。当初から保存が効く冷凍食品を考えていて、全商品の9割になります」

 顧客の9割以上は日本人で、刺身系が多く売れている。ニャチャンなどから日本に輸出する魚で、商品により差は大きいが、2人分で7~8万VNDとお手頃価格だ。魚介類は50~100kg、肉類は20~30kgなどの一括仕入れだ。

 当初は三木氏が食材の加工をしていたが、ベトナム人スタッフに教えて現在は彼らが担う。新型コロナ禍はデリバリ―需要で売上が伸びたが、帰国する帯同家族が増えたことが売上がダウン。主要顧客が家庭で料理を作る奥さんと子どもだったからだ。

 そこで取った戦略は2号店の開店。2022年3月にハノイに出店し、ホーチミン市から食材を送っている。商品数が1号店の6~7割ということもあり、収支はトントンで、今後の伸びに期待する。

「店員が日本語話者のベトナム人なので、ベトナム人客への販売数が上がっています。私がいるより良いようですね(笑)」

頼りになる成長したスタッフ
飲食店を兼ねるダナン3号店

 現在はダナンで3号店開店の準備に追われる(取材時)。今年7月からデリバリ―を始めており、10月15日からは飲食店を併設した店舗として始動する。

 ただ、すぐに黒字化するとは考えていない。漁港でもあるダナンを選んだ理由の一つは、魚の目利きと仕入れを勉強するためだ。1号店には居酒屋時代からのスタッフが多く、ベトナム人8人が働く。店舗の運営まで任せられるから新店舗に集中できている。

「ホーチミン市では魚が売れますが、商売になるほど出ない種類も多く、経験不足もあって判断が難しいのです。早朝に港に行って、魚とにらめっこです(笑)」

 ベトナム人客の割合を上げたいが、すぐには変わらないと見ている。所得は増えてもサーモンの一択人気はしばらく続くだろうからだ。台湾人や韓国人など外国人の増加も限度があるとして、顧客の中心は金額的にも日本人になるそうだ。

 三木氏はダラットに小さな農場を所有しており、日本人がピーマンやミツバを育てている。これらは既に1号店に出荷しており、年末からは山芋やミョウガが加わる予定だ。

「当たり前ですが、大切なのは適正価格でニーズに合った品を提供することです」

浄水器から商品数が増加
代理店としての実績を積む

 ベトナム進出は2012年。ベトナム人富裕層の声に応えて、水圧式の温水洗浄便座を中国でOEM生産し、国内で販売を始めた。その販促品としてトイレクリーナーなどを探す中で東レと接点ができ、2014年から代理店になった。家庭用浄水器の「トレビーノ」を販売するようになる。

「ローカル企業は独占契約を結びたがりますが、双方にリスクがありますので、弊社は独占代理店ではありません」

 2014年からは除菌消臭液の「ジアムーバー」も販売。ベトナムの日系メーカーにOEM生産を委託することで低価格を実現した。浄水器では大型サイズを望む人たちに向けて業務用浄水器メーカーのメイスイと契約し、「nomot」や「NFX-LZ」を販売した。メイスイはそれまでベトナムに販路がなく、NASKが海外初の代理店となった。

「中国生産の温水洗浄便座は2018年に販売を終了し、今ではリクシルの代理店として『シャワートイレ』を販売しています。現在の主力商品は浄水器で、売上の7~8割を占めるほどに成長しました」

 同社は店舗を持たず、電話、メール、HP、メッセンジャーなどで注文を受けて商品を届けている。一般消費者への直販のほかに小売店や代理店への卸も行う。

設置やアダプターで差別化
今後は美容・健康系に商機か

 心掛けているのは価格競争に巻き込まれないこと。同じ商品を様々な経路から安く販売されることもあり、ECサイトで20%引きなどもあるそうだ。そこで浄水器であれば自社での設置やメンテナンスの提供で差別化を進めるとともに、ベトナムの蛇口に合わせた独自のアダプターも委託生産している。

「蛇口の形状によっては浄水器が使えない場合があります。建物全体に及ぶこともあり、追加料金とはなりますがアダプターを考えました」

 ECサイトでの販売は中止した。価格勝負での消耗戦を避けるためと、返品率の高さが理由だ。浄水器など高額商品は実物を目の前に説明を受けて購入する顧客も多く、苦労が多くて実利が伴わないと判断した。

 個人客は日本人とベトナム人が半々で、日本人は家族で暮らす人が多く、ベトナム人は世帯月収が2000USD程度の家庭をターゲットとしている。自動車を持ち始めたり、ローンでの家の購入を考え始めるような人たちだ。

「無理な安売りはしたくないですが高すぎても売れません。世帯月収2000USDのご家庭が購入を決断できる価格を意識しています」

 新型コロナ感染の時期はジアムーバーが売れたが、その後落ち着き、今年の8月頃までは日本人帯同家族の帰国で販売数が落ちた。一方で、塩素を除去する浄水シャワーヘッドが伸びている。数年前なら購入者は日本人に限られたが、特に20~30代の若いベトナム人が注文しているそうだ。

「今は手を広げるより主力商品を絞り、同時に美容・健康系商材に注目していきます」