ベトナムの外国直接投資(FDI)誘致が記録的な勢いを見せている。2026年上半期の登録額は346.5億USDに達し、前年同期比61%増加した。わずか半年で2025年通年の実績に迫る水準となっており、実際の投資実行額も過去5年間で最高を記録した。
近年は単なる生産拠点としてだけでなく、半導体や人工知能(AI)、研究開発(R&D)など高付加価値分野への投資が拡大しており、ベトナムは「FDIの量」から「FDIの質」への転換局面を迎えている。
上半期のFDI登録額は346.5億USD 前年同期比61%増
ベトナム統計総局によると、2026年1~6月のFDI登録額は346.5億USDとなり、前年同期比61%増加した。
この水準は、2025年通年のFDI誘致額384.2億USDにほぼ匹敵する規模である。
なかでも目立ったのは、外国企業による出資や株式取得案件で、前年同期比89.5%増となった。企業買収・合併(M&A)市場が再び活発化していることを示している。
業種別では加工・製造業が引き続き最大の投資先となっており、新規認可額は107.6億USDで、新規投資全体の約62%を占めた。
また、実際に資金が投入されたFDI実行額は130億USDを超え、前年同期比11.2%増となり、過去5年間で最高水準となった。
半導体・AI関連投資が相次ぐ
投資規模の拡大に加え、投資内容の高度化も進んでいる。
代表例として、
- Samsung Display による北部バクニン省での追加投資
- タイグエン省における15億USD規模の半導体検査・パッケージング工場
- ホーチミン市ハイテクパークで認可された4件のハイテク投資案件(総額12.3億USD超)
- AIデータセンター事業への総額40億USD規模の投資計画
などが挙げられる。
専門家は、既存投資家による追加投資が110億USDに達したことについて、「企業がベトナムから他国へ生産移転するのではなく、国内で事業拡張を続けていることを示す重要なシグナルだ」と評価している。
日本企業の投資意欲も依然高水準
最新の調査では、日本企業のベトナム市場への期待感も引き続き高い。
日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、ベトナムで事業を展開する日本企業の約57%が今後1~2年以内に事業拡大を計画している。
さらに67.5%の企業が2025年の黒字を見込んでいるという。
JETROベトナム事務所の小篠晴彦所長は、ベトナムの市場規模の大きさ、高い成長性、政治・社会の安定性、そして投資環境の改善が、日本企業の投資意欲を支えていると分析している。
また、新世代のFDIは低コスト生産だけを目的とするのではなく、
- 政策の安定性
- 行政運営の質
- グローバル・サプライチェーンへの組み込み
を重視する傾向が強まっているという。
ベトナムは「量」から「質」へ転換
経済専門家らは、現在のベトナムにとって重要なのは「どれだけの資本を誘致するか」ではなく、「どのような投資を誘致するか」だと指摘する。
政府が掲げる次世代FDI戦略では、
- 半導体
- AI
- デジタル技術
- データセンター
- 研究開発(R&D)
- グリーン経済
- 循環型経済
などの分野を重点対象としている。
さらに、
- 国内企業との連携
- 技術移転
- 人材育成
を伴う投資案件を優先する方針である。
一方で専門家は、現行のFDI統計は依然として投資総額中心の集計となっており、高度技術分野への投資割合や技術移転の実態を十分に反映していないと指摘する。
今後は、AI、半導体、研究開発投資の比率や国内企業との協業状況などを新たな評価指標として導入すべきだとの声も上がっている。
高付加価値投資の受け皿整備が課題
専門家は、ベトナムが高付加価値型投資の誘致競争で優位性を維持するためには、投資環境のさらなる改善が欠かせないと指摘する。
特に、
- 行政手続きの簡素化
- 「ワンストップサービス」の実効性向上
- 政策運営の一貫性確保
- 安定した電力供給体制の整備
などが重要課題として挙げられている。
AIデータセンターや半導体工場は大量の電力を必要とすることから、将来的にはエネルギー政策そのものがベトナムの投資競争力を左右する要素となりそうだ。




















