ベトナムで、オーストラリアやニュージーランドから輸入された果物の存在感が高まっている。
これまで輸入果物は高級品や贈答品として購入されるケースが多かったが、近年は都市部を中心に、リンゴやキウイ、ブドウ、オレンジ、チェリーなどを日常的に購入する消費者も増えている。
背景には所得水準の向上だけでなく、品質や見た目、ブランド力を重視する消費者の増加、近代的な小売網の拡大、そして生産地や品質を伝える積極的なマーケティングがある。
NZ産キウイが築いたブランド力
ニュージーランド産果物の代表格がキウイである。
約10年前、ホーチミン市のイオンの店舗では、ニュージーランド産キウイの魅力を伝える販売イベントが開催された。会場にはニュージーランドの農園を再現した空間が設けられ、キウイがどこで栽培され、どのように育てられ、どのような過程を経てベトナムへ届けられるのかが紹介された。
当時はまだ多くのベトナム人にとってなじみの薄かったキウイだが、イベントには3,000人以上が訪れたという。
単に試食を提供するだけではなく、なぜニュージーランド産キウイが一般的な果物より高いのか、栄養価や食べ方、産地の特徴などを説明することで、商品そのものだけでなく、その背景にある「ストーリー」を消費者に伝えた。
これはニュージーランドのキウイ大手Zespriがベトナム市場で展開してきたブランド戦略の一例である。
ZespriはGreen、SunGoldに加えてRubyRedなど商品ラインアップを広げ、マーケティングやブランド認知向上にも力を入れてきた。
その結果、ベトナムは2025年、2026年にニュージーランド産キウイの主要消費市場の一つへと成長している。
豪州は「多彩な果物」で市場を開拓
オーストラリア産果物の市場開拓は、ニュージーランドとは少し異なる。
ニュージーランドがキウイなど強力なブランド商品を前面に出しているのに対し、オーストラリアは年間を通じて多様な果物を供給している。
ブドウ、リンゴ、オレンジ、みかん、モモ、ネクタリン、チェリー、プラムなど、季節ごとに異なる果物が店頭に並ぶ。
そのためベトナムの消費者は、スーパーや輸入食品店、高級フルーツ店などで、季節に応じてさまざまなオーストラリア産果物を選ぶことができる。
オーストラリア政府が2017年からベトナムで展開している「Taste of Australia(オーストラリアの味)」も、市場開拓を後押ししてきた。
この取り組みでは、果物だけでなく、オーストラリアの農産物や食品、食文化を総合的に紹介している。
ブドウの季節には豪州産ブドウ、チェリーの季節には高級チェリー、夏にはモモやネクタリン、プラムといったように、季節ごとに商品を訴求することで、オーストラリア産食品そのものの認知度を高めている。
「収穫から72時間」で店頭へ
輸入果物市場では、品質だけでなく物流も競争力を左右する。
ベトナムの小売業者によると、オーストラリア産プラムなどでは、シーズン開始前から小売チェーンと販売契約を結び、LazadaやShopeeなどの電子商取引プラットフォームも活用して販売するケースがある。
航空輸送を利用し、収穫からスーパーの店頭に並ぶまでを72時間以内に抑える取り組みも行われている。
輸入果物をめぐる競争は、単に「どこの国の果物か」だけでは決まらない。
品質、価格、物流、販売網、そして消費者に産地を認識してもらうためのブランド戦略まで含めた総合的な競争になっている。
豪州産の輸入額は55.7%増
市場拡大は輸入統計にも表れている。
ベトナム税関当局によると、2026年上半期のオーストラリアからの野菜・果物輸入額は1億280万USDとなり、前年同期比で55.7%増加した。
ベトナムの野菜・果物輸入全体に占めるオーストラリアの割合も、前年の5.5%から6.51%へ上昇している。
ニュージーランドからの輸入額も7,804万USDとなり、前年同期比20.4%増となった。
豪州とニュージーランドの双方からの輸入が伸びていることは、ベトナム市場において両国産果物の存在感が着実に高まっていることを示している。
輸入果物が「贈答品」から「日常品」へ
消費者側にも変化が起きている。
ベトナムではこれまで、輸入果物は価格が高いことから、旧正月(テト)などの特別な時期や贈答用として購入されるケースが多かった。
しかし現在は、都市部の一部の消費者を中心に、リンゴ、キウイ、ブドウ、チェリー、オレンジなどを普段の食生活に取り入れる動きが広がっている。
あるホーチミン市在住の消費者は、ベトナム産果物の種類が豊富でおいしい一方、キウイやリンゴなどの輸入果物も好んで購入しているという。
家庭用だけでなく、顧客や取引先への贈答品としても輸入果物を選ぶ理由として、品質の安定性や見た目の良さを挙げている。
つまり、輸入果物は「特別な日に買う高級品」から、徐々に「品質を重視する消費者が日常的に選ぶ商品」へと位置付けが変わりつつある。
輸入果物市場そのものが拡大
小売各社からも市場拡大を示す動きが出ている。
Kingfoodmartによると、輸入果物ではニュージーランド、オーストラリア、米国、韓国、南アフリカなどが主要な供給国となっており、特にキウイ、リンゴ、ブドウ、オレンジ、ナシなどへの関心が高い。
Annam Gourmetでは2026年の輸入野菜・果物の需要が前年比で約5~8%増加した。特に輸入リンゴの売上高は2026年上半期に26%増加したという。
続いてブルーベリー、チェリー、ブドウなども好調となっている。
こうした動きは、ベトナムの都市部で消費者の「産地」「品質」「ブランド」に対する関心が高まっていることを示している。
豪州・NZ産に広がる高級果物需要
ベトナム青果物協会によると、オーストラリアやニュージーランドからの果物供給拡大は、国内の消費者により多くの選択肢を提供することにつながっている。
特に年末からテトにかけては、高品質で外観が良く、品質が安定した高級果物への需要が強まることが予想される。
こうした需要は、オーストラリアやニュージーランドだけでなく、米国や韓国、南アフリカなどにも恩恵をもたらす可能性がある。
「産地を買う」消費市場へ
ベトナムの果物市場では、単純に安い商品を選ぶだけではなくなりつつある。
どこで生産されたのか、どのような品質管理が行われているのか、どのブランドなのか、そして贈答品として適しているのか――。
こうした情報を含めて商品を選ぶ消費者が増えている。
ニュージーランド産キウイの成功例は、その象徴ともいえる。商品そのものだけでなく、産地や栽培方法、品質、ブランドの背景まで伝えることで、価格の高さを含めた商品の価値を消費者に理解してもらうことに成功した。
一方、オーストラリアは多様な果物を季節ごとに展開することで、特定の商品だけに依存しない市場を形成している。
ベトナムの所得水準が上昇し、都市部の消費者が食品の品質や安全性、ブランドをより重視するようになる中、輸入果物市場は今後も拡大が続くとみられる。
豪州・ニュージーランド産果物の存在感が高まっていることは、単なる輸入商品の増加ではない。ベトナムの消費者が「価格」だけでなく「品質や産地、ブランドが生み出す価値」を選ぶ市場へ変化していることの表れでもある。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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