ベトナムでは、高速道路の整備が進む一方、コンテナ車や大型トラックの一部が、通行料金のかかる高速道路を避け、国道を利用している。背景には、高速道路の通行料金が運送事業者の負担になっていることに加え、速度超過や車間距離の不保持などに対する厳しい罰則への不安がある。ただし、道路当局は、最近の高速道路の交通量減少について、季節的な需要変動も影響していると説明している。
高速道路が整備されても大型車は国道5号線へ
ハノイと北部最大級の港湾群を結ぶハノイ~ハイフォン高速道路は、移動時間の短縮と国道5号線の交通負担軽減を目的に整備された。しかし、供用開始から約10年が経過した現在も、旧来の国道に大型トラックやコンテナ車が集中し、高速道路の利用割合は低いという状況が続いている。
ハイフォン市の調査によると、国道5号線の交通量は1日約3万5,180台で、このうちトレーラーやセミトレーラーなどの連結車両が1万4,493台を占める。交通量は設計上の処理能力を超えており、同路線では慢性的な渋滞が発生している。
一方、2026年上半期のハノイ~ハイフォン高速道路の終点料金所のデータでは、トレーラーやセミトレーラーなどの連結車両は、同路線を走る自動車全体の約6%にとどまった。
高速道路なら移動時間を短縮できるにもかかわらず、なぜ運送会社は国道を選ぶのか。大きな理由の一つが通行料金である。
大型車は片道87万VND、往復では174万VND
ハノイ~ハイフォン高速道路の通行料金は、車両の種類や積載規模によって異なる。例えば、10トン以上18トン未満のトラックおよび20フィートコンテナ車が全線片道67万5,000VND、18トン以上のトラックおよび40フィートコンテナ車が87万VNDとされている。
大型車が全線を往復する場合、通行料金だけで174万VNDに達する。運送事業者にとっては無視できない金額であり、燃料費、救援費用、修理費、駐車費用、運転手向けの設備・サービスなども含めた総コストで経路を選ぶ必要がある。
ハイフォンの水産関連企業の幹部は、輸送経路の選択は単純に所要時間の長短を比べるだけではなく、輸送行程全体のコストを考慮した判断だと説明する。
食品関連企業の担当者も、商品の特性によって高速道路の利用価値は異なると指摘する。乾燥農産物、菓子、牛乳、電子機器など、比較的長い保存期間を持つ商品では、数日前から輸送計画を立てることが多く、到着が2~3時間早まっても大きな利点にならない場合がある。
一方、ドラゴンフルーツやブドウなどの生鮮品、納期が厳格な電子部品では、遅延が品質低下や生産停止、高額な追加費用につながる可能性がある。そのため、高速道路による時間短縮の価値は、運ぶ商品の種類によって大きく変わる。
ダラット~ホーチミン市でも通行料が判断材料に
ホーチミン市タンビン街区在住で、ダラットからホーチミン市へ生花を運ぶ運転手のレ・バン・クエンさん(48歳)は、高速道路が利用できる区間でも、国道20号線を選ぶことがあるという。
渋滞が発生すれば国道のほうが時間がかかる場合もあるが、通行料金を節約できるためだ。同氏によると、ホーチミン市~ダラット間の高速道路の往復料金は、燃料代に匹敵することもあり、旧来の国道を利用せざるを得ないという。
また、ホーチミン市在住のフイン・トゥエット・ガーさんは、ファンティエットへの移動に自家用車を使った際の費用について、往復の高速道路料金が42万ドンに達したと話す。燃料代は満タン給油の約90万VNDに対し、往復でおよそ半分を消費しただけだったという。
こうした事例からも、通行料金が高速道路の利用を判断する際の重要な要素となっていることがうかがえる。
速度や車間距離の違反、厳しい罰則を懸念
運送業界が高速道路を敬遠するもう一つの理由として挙げるのが、交通違反に対する厳しい罰則と、取り締まりへの不安である。
長年トラック事業を営むハノイのグエン・タイン・タム氏は、高速道路では前方車両との安全な車間距離を保つことが求められるものの、交通量が増えると、その維持が難しい場面もあると説明する。
運転手が安全のために前方の車間を確保しても、別の車両が車線変更してその空間に割り込むことがある。その結果、速度や車間距離を再調整しなければならず、運転手の負担が増すという。監視カメラの設置や、違反を後日通知する取り締まりが広がるなか、意図せず違反と判定されることを懸念する運転手もいる。
ホーチミン市在住のトレーラートラック運転手、グエン・タン・サンさんは、長距離運転手の月給はおおむね2,000万VND前後であり、違反による罰金が1カ月分の給与に相当する可能性もあると話す。
同氏によると、速度超過だけでなく、速度不足や安全な車間距離を保たないことも処罰の対象となる。大型車やトレーラーは、接続道路の坂道などで速度を調整することも容易ではなく、運転手の心理的な負担が違反リスクへの不安を強めているという。
国道は道幅が狭く、住宅地を通過する区間もあり、所要時間が長くなることがある。それでも、運転手は道路の特徴やカーブ、標識、速度制限区間を把握しているため、走行計画を立てやすいとサンさんは説明する。
免許の点数減点で長期間運転できなくなる懸念も
ベトナム自動車運送協会は、建設省および交通警察局に提出した文書で、コンテナ車運転手の心理的負担や、運転職からの離職につながる問題を指摘した。
同協会によると、罰金が運転手の月収を超え、2~3カ月分の給与に相当するケースもある。さらに、運転免許の点数が減点されることで、仕事を辞める運転手もいるという。
同協会のグエン・バン・クエン会長は、制限速度が時速90~120キロの区間から80~60キロの区間へ急に切り替わり、運転手が急ブレーキをかけざるを得ない場所があると指摘する。また、速度制限の標識を通過した直後に速度測定が行われるケースもあり、速度制限の変更が多い路線では違反への不安が強まるとしている。
同会長は、運転免許の12点をすべて失った場合、少なくとも6カ月間運転を継続できなくなる可能性があり、点数回復のための確認手続きも必要になると説明する。運転できない期間が長引けば、コンテナ車の運転手にとっては失職にもつながりかねない。
道路局は「交通量の減少だけでは原因を特定できない」
一方、ベトナム道路局は、高速道路の料金負担や車間距離違反への不安が、高速道路の利用減少を招いているとの見方について、慎重な姿勢を示している。
同局によると、2026年9月の東側南北高速道路の交通量は前月比14.4%減少した。ただし、国道1号線の交通量も同じ期間に11.2%減少している。
同局は、夏の観光繁忙期や建国記念日の連休が終わり、移動需要が落ち着いたことなど、季節的な要因が主な背景にあると説明した。
また、9月の高速道路交通量は、2026年3月に料金徴収が始まって以降の平均を3.7%上回っているという。
同局は、交通量が時期によって変動していることは確認できるものの、高額な通行料金や取り締まりへの懸念が、運転手の国道回帰を招いた主因だと結論付けるには、現時点のデータでは不十分だとしている。
高速道路の利用を促進するには、通行時間の短縮だけでなく、運送事業者が負担する総コストや、運転手が安心して走行できる道路環境も重要な論点となりそうだ。




























