ベトナム南部のフーコック島で整備が進む次世代型軽量軌道交通システム(LRT)は、2027年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向け、安全性や運行管理、旅客サービスなどの体制整備を進めている。事業を手掛けるサングループ(Sun Group)は、ホーチミン市メトロ1号線の運営会社と連携して人材育成や試運転に向けた準備を進めるほか、国際観光客の利便性向上を目的に、Visaの決済技術を活用した非接触決済の導入も検討している。
APEC開催時の要人輸送に対応するだけでなく、国際観光地としてのフーコック島の交通インフラを長期的に充実させる狙いだ。
APEC 2027を見据え、LRTの運行体制を整備
フーコック島のLRTは、空港と南部エリアを結ぶ交通手段として計画されている。南部にはAPEC 2027の開催施設やサングループが展開する大規模な観光・娯楽施設が集積する予定であり、国際会議に参加する各国首脳や代表団、専門家、運営スタッフらの移動を支える役割も期待されている。
こうした利用者に対応するには、目的地まで輸送するだけでは不十分だ。安全で正確な運行に加え、列車の運行間隔の調整、駅構内の管理、旅客の誘導、トラブル発生時の対応、接客サービスなど、多岐にわたる運営能力が求められる。
Sun Groupのデジタル・データ部門責任者、グエン・ドゥック・ロン氏は、同路線について、1時間当たり数千人規模の輸送能力を想定していると説明。日常的な移動需要に加え、国際イベント開催時に旅客が集中する状況にも柔軟に対応できる運行体制が必要だとしている。
APEC 2027は、LRTの開業準備だけでなく、国際的な観光地を支える交通システムとしての運営能力を試す機会にもなる。
ホーチミン市メトロ1号線の運営会社と連携、人材168人を育成
サングループは、ホーチミン市メトロ1号線(ベンタイン~スオイティエン間)の運営会社であるホーチミン市都市鉄道1号線有限責任会社(HURC)と連携し、フーコック島LRTの運営に関する助言、人材教育、試運転に向けた協力を進めている。
同社は、メトロ1号線の運営で蓄積した経験をフーコック島の路線特性に合わせて活用する方針だ。具体的には、運行管理や運転頻度の調整、安全管理、異常事態への対応に加え、設備の保守・点検や駅での旅客サービスなどが含まれる。
HURCは、LRT向けに計168人の人材を採用する取り組みを進めており、内訳は運行関連が130人、保守関連が38人となっている。人材育成には4カ月を充て、座学と現場実習を組み合わせながら、必要な業務手順や技術の習得を目指す。
また、運行担当者には専門知識だけでなく、外国語能力やコミュニケーション能力、外国人観光客への案内・支援能力も求められる。地元住民の日常的な移動と国際観光客の利用が共存する路線として、運行の安全性とサービス品質の両立を図る考えだ。
Visaの非接触決済を検討、乗車時の利便性向上へ
運行体制の整備と並行して、サングループはVisaとの戦略的提携の一環として、フーコック島LRTへの非接触決済方式「タップ・トゥ・ライド」の導入を検討している。
構想では、乗客が非接触対応のVisaカードやスマートフォン、スマートウォッチなどを改札機にかざして乗車する。システムが乗車駅と降車駅を記録し、利用区間に応じた運賃を自動計算する仕組みだ。
これが実現すれば、外国人観光客は現地の窓口で乗車券を購入したり、運賃支払いのために現金を用意したりする手間を減らせる。普段から使い慣れた決済手段で乗車できるため、到着直後の移動をよりスムーズにする効果が期待される。
サングループによると、同路線を利用した場合、空港からAPEC会議センターまでの所要時間は約20分となる見込みだ。非接触決済によって乗車券購入時の待ち時間も短縮できれば、移動全体の利便性向上につながる。
また、一般観光客にとっても、LRTは島南部の観光施設を訪れる際の新たな移動手段となる可能性がある。自動車やタクシーへの依存を減らし、島内の道路、特にDT.975号線の交通混雑緩和や、環境負荷の低減にも寄与することが期待されている。
なお、非接触決済については現時点で導入が検討されている段階であり、具体的な運用開始時期や利用条件などは明らかにされていない。
APEC後も見据え、国際観光地の交通基盤へ
サングループのグエン・ドゥック・ロン氏は、将来的にLRTを単なる交通手段にとどめず、旅行者のデジタル化された観光体験を支える要素に発展させたいとの考えを示した。
APEC 2027は、国際会議に求められる高い安全性や正確性に対応できるかを検証する節目となる。一方、同路線の意義は会議期間中の輸送に限られない。運行管理、人材育成、旅客サービス、決済の利便性といった仕組みを整えることで、国際観光地としてのフーコック島の交通インフラを長期的に支えることが目指されている。
総投資額約9兆VND、初期段階では6~10編成を運行予定
フーコック島LRT事業は、BOT方式(建設・運営・譲渡方式)で実施され、総投資額は約9兆VNDとされる。資金構成は、国家資本が70%、民間投資家のサングループが30%を負担する計画だ。
建設計画上、最終的には最大14編成の列車を運行できる規模を想定している。第1期では、アンザン省とサングループが6~10編成の運行開始を計画している。各編成は3両で構成され、クリーンエネルギーを利用して運行する予定だ。
今後は、施設整備に加え、運行要員の育成や安全管理体制の確立、決済システムの具体化などが、APEC 2027に向けた準備の焦点となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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