製造業の大型展示会「MTA VIETNAM 2021」が11月23~26日に開催した。しかし、ビンズン省での展示会は中止となり、プラットフォーム「DIGITAL CONNECT」を使ったオンライン展示会のみとなった。この使い勝手を試した。
6展示会にアクセス可能
MTA VIETNAM 2021は2021年7月にホーチミン市のSECCで開催予定だったが、新型コロナの影響で延期され、今回の会場はビンズン省のWorld Trade Center Binh Duong New Cityに移った。しかし、リアルの展示は中止され、オンラインのみで11月30日までの継続に変った。
オンラインはMTA VIETNAM 2021のWebサイトから、デジタルのプラットフォームである「DIGITAL CONNECT」に登録する。この際には社名や連絡先などに加えて、自社の業界や興味のある製品などを詳細に聞かれた。ACCESSはメディアなので、実は答えられない質問ばかりになる……。
登録が終わるとメールが届き、パスワードを設定したら会場に入れる。日本語設定が表示されたので試してみた(画像の文字に日本語があるのはそのため)。
DIGITAL CONNECTのトップ画面。上部のタブと中央にある画像の内容は同じで、「Platinum Sponsor」は1社、「Gold Sponsors」は2社だけだが、「Exhibitor」をクリックすると出展企業がアイコンでずらりと並ぶ。ざっと数えて182社もあった。
多いと思ったらここにはMTA VIETNAMだけでなく、水処理に関する「Vietwater」、電気設備やエネルギー関連の「Electric & Power Vietnam」、空調や冷熱業界の「HVACR Vietnam」、海運産業向けの「INMEX Vietnam」、鉱業や建設の「Mining & Construction Vietnam」を併せた、合計6つの国際展示会がオンラインで開催されていた。来場者はどの展示会にもアクセスできる。
対象はスマホのユーザー
「Exhibitor」の画面の左側には展示会別のフィルターがあり、各展示会には製品や分野別の詳細なフィルターが用意されている。これにより企業の絞込みができる。
「Products」からは製品で選ぶこともできる。一覧表示されるが、ここでもフィルターを使える。主催者によると合計で458ユニットあるとのこと。
出展企業は上からアルファベット順に並んでおり、一番上のAABにアクセスしてみる。企業のトップには動画ががあって自動で再生。その下にタブとして「MTA Products」、「HVACR Products」、「INMEX Products」と展示会別の製品名が並び、クリックすると下にスクロールされて各製品が表示。
「ドキュメント&リンク」とあるのはPDFなどの製品資料とWebサイトで、その隣の「チーム」は担当者。どちらもクリックすると下にスクロールして詳細が表示される。
全体的な表示が縦長になっているのは、スマホユーザーをメインターゲットにしているからだろう。これまでの製造業系オンライン展示会では、展示ブースのイラストがよく使われていた。リアルに近づけようという意図からだろうが、考えてみると必要なく、使い勝手に重きを置いた工夫は評価できる。
担当者の人柄がわかる!
タブの下にはミーティングのスケジュール表があり、日付と時間をクリックして送信できる。チャットでやり取りした後で使うの一般的だろうが、コメント欄があるので、いきなりの依頼もありだと思った。
その下は会社を紹介する文章。続いてLinked In、Facebook、YouTubeのアイコンが並び、クリックでそれぞれにアクセス。その下には連絡先があり、電話、メールアドレス、ホームページのほか、住所が載っていればクリックで地図が開く。
その下には「Products」や「ドキュメント&リンク」の詳細があり、一番下にある「チーム」の作りが秀逸だ。担当者の名前とスケジューラーの下には自己紹介があるので、この内容から親しみを持ったり、信頼感を得る来場者もいるのではないか。
また、個人のFacebook、Linked In、Twitterを載せている人もいて、うれしくなる半面、そこまで個人情報を出していいのかという不安も。
ただ、実際には顔写真なし、自己紹介なし、連絡先は企業のURLといった担当者のほうが多い。それだけに個人をオープンにしている人には話しかけてみたくなった。
代表者の一覧は必要か?
ここまで見てきて、ユーザーインターフェースにこだわり、必要十分な機能を盛り込んだ、先進的なプラットフォームだと感じた。スマホでも試してみたが、使い勝手が良くてサクサク動く。
どこからでもアクセス可能というオンライン展示会の手軽さを拡大させて、オフィスや自宅にすらいる必要がなく、スマホから展示品や企業の内容がわかり、その場で商談ができる仕組みになっている。
出展企業以外の内容も見てみる。トップ画面に戻ると「Exhibitor Representative」があり、出展企業の代表者が一覧で並んでいる。顔写真、企業ロゴ、製品写真などアイコンは様々だが、個人名が主張されている一方で社名の色が薄くて読みくい。名前だけでは相手を決められない。
肩書を読むとDirectorやManagerが多いので、決裁権者の一覧ページなのかもしれないが、載せている意味が感じられなかった。「Exhibitor」の機能だけで十分ではないか。
「LIVE:Watch Now!」は現在配信している講演などの動画だろうが、なぜかアクセスできなかった。「Sessions:On Demand」は過去の講演も含めた動画が20以上。「My Event」はミーティングの予定、チャットの記録、ブックマーク先などを一元管理する機能で、便利に使えると思った。
ユーザーズガイドを使う
操作は直感的にわかるのでアクセスする人は少ないのだろうが、「Help Desk」が実は充実。英語で書かれた「ユーザーズガイド」はミーティングのオファーの仕方、プロフィールの編集方法、ライブで講演中に質問や投票する方法などがわかりやすく書かれ、これらの内容は短い動画でも用意されていた。
トップページの右側に大きく表示されたDIGITAL CONNECTの画像をクリックすると、主催者の出展企業ページに飛ぶ。オープニングセレモニーや“Digital Transformation of Vietnam’s Water Industry”などのカンファレンスが見られるのだが、資料のスライドが映って講演者の声が聞こえるだけなので、どうしても物足りない。言語がベトナム語中心なので内容がわからないこともあるが。
出展した日系企業の本音
出展している日系企業の1社が取材に応じてくれた。ベトナムにある大手機械設備メーカーで、今回のMTA VIETNAM 2021ではなく、10月に開催予定だったMTA Hanoi: 2021に出展するはずだった。それが新型コロナの影響で延期となり、主催側からDIGITAL CONNECTでのオンライン出展を勧められた。追加費用は掛からなかった。
出展したのは併催のVietwaterなどへはなくMTAのみ。それが理由ではないだろうが、問合せはチャットによる1件のみで、顧客というより営業の売込みだった。
「弊社は高価な機械設備を販売していることもあり、以前から実機をお見せしない展示会は効果が薄いと感じていました。社内でも、オンラインで手ごたえを感じたという声は聞いていません」
もちろん、出展した全社がこうした結果ではないだろうが、ここにオンライン展示会の課題が見えてくる。
「知っているお客様にはアプローチできます。接点のないお客との接点を作れるのが展示会への出展理由なので、その仕組みを工夫してほしいです」
オンラインやバーチャルの活用を否定しているわけではない。最初のやり取りはチャットやメール、オンライン面談へ進めて、その後にショールームで実機を見せたり、込み入った内容は対面で説明するなどもできる。主催側もそう望んでいるはずだが、実現は簡単ではないようだ。
Meeting
仕掛けをしないと先が危うい
では、集客ができていないのか。主催者によるとDIGITAL CONNECTが始まったのは11月3日。来場者はメーカー、サプライヤー、代理店、業界団体、研究所、大学などで、最終日である11月30日の時点で累計1万2592人がアクセスしていたそうだ。リアルな大型展示会には及ばないが、悪い数字ではない。
製造業のオンライン展示会は課題が山積みだ。しかし、ベトナムでは再び新型コロナの感染者数が増加しており、オミクロン株という新たな不安材料もある。リアルな展示会の開催は難しく、他業種の展示会もオンラインが主流となってきた。何かの仕掛けをしないと、オンライン展示会への出展企業が減って来場者も減らすという、負のスパイラルが起きかねない。
主催者によれば現在、2022年6月から以前の定期的な開催に戻す予定だ。次回のMTA VIETNAMは2022年の7月、MTA Hanoiは同10月に開催を予定している。リアルとオンラインでの開催だろうから、それまでに一層の改善をお願いしたい。