寝室付きのヨットを20億VNDで購入してから3年が経ち、ゾアイン・グエンさんはヨットによって得られた経験は”お金では買えない”と断言した。
「時速50~60㎞で走るヨットに乗って、広大な川の真ん中で渋滞や埃を気にせず新鮮な空気を満喫できるのは、最高の気分です。」と製薬業界で活躍するビジネスマンのゾアインさん(40歳)は話す。
サイゴン川に隣接するタオディエン地区の家で、数年前にゾアインさんは、何人かの外国人が所有するプライベートヨットを見かけた。2019年にゾアインさんは数人の友人と共に学校に通って船舶免許を取得し、その後中古のヨットを購入した。ファミリー向けのヨットが欲しくて、ベッドルームがありバーベキュースペースのある10人乗りのヨットを約20億VNDで購入したのだ。
それ以来、ゾアインさんは毎週末家族全員を乗せてヨットでフーミー橋やカットライ港周辺の美しい景色を見に行ったり、カンゾーの海や、ビンズン省などに出かけている。
「カットライ港周辺でヨットに乗るとコンテナーの輸出入の様子が見えたり、普段見ることのできない港の風景を見ることが出来ます。時には川の真ん中でゆったりと川沿いのヴィラを眺めたり、ビテスコやランドマーク81眺めたりするのも最高の体験です。」とゾアインさんは話す。
ビンディン省クイニョンで4つ星ホテルを経営するフィン・ニャンさんは、以前はオートバイやスーパーカーに乗るのが趣味だったが、今では、すっかりヨットの魅力に取りつかれている。2月末にニャンさんは、70万USD(約170億VND)でフランスのジャノー製のLeader40を購入した。
このヨットは、全長12m以上で現代的な内装の2つのベッドルームが完備されている。キッチンは、風通しが良い設計になっており、リビングルームは、広く開放的で自然光を取り入れたデザインになっている。「家全体を海の真ん中に持ってきたような気分になれます。これは、オートバイやスーパーカーを運転するのとは全く違う体験です。」とニャンさんは話す。
ニャンさんは1週間かけてLeader40をクイニョンの埠頭まで運び、クイニョン市で初めてのプライベートヨットオーナーとなった。ニャンさんによるとヨットでは、仕事から遊びまで何でもできる。「大口の取引先との商談に使うこともありますし、家族で旅行に行くこともあります。使う予定がないときは貸し出しています。」とニョンさんは話す。
太陽光発電ビジネスを手掛けているホーチミン市ビンタイン区に住むあるビジネスマンは、3年間の検討の末に8月に75億VND(約4600万円)でMerry Fisher1095というヨットを購入することを決めた。
「ヨットの素晴らしい点の一つは、人生の真実を見つめなおし、真理に触れることができる点にあります。」とこの人物は語った。
ヨットはベトナムの富裕層にとっての新たな趣味になりつつある。ホーチミン市交通運輸局によると現在市内で登録されているヨットと高速客船63隻のうち、50隻以上がプライベートの所有とされている。「この2年弱で40隻以上の新たな登録がありました。ヨットの所有、移動、旅行需要は、年々高まっています。」と交通運輸局の担当者は話す。
ベトナムには、海沿いや川沿いの観光施設、リゾート、不動産開発プロジェクトが数百件存在する。3年前に海外から輸入されたヨットを取り扱っている会社は3,4社しかなかったが、現在では15社以上に増加している。富の象徴でもあるプライベートヨットは、観光クルーズのために大勢の観光客を乗せる大型船(クルーズ)と区別してヨットと呼ばれる。
Vietyacht社のホアン・ドゥック広報部長は、以前ベトナムには2~3隻の中古ヨットしかなかったと語る。2015年にベトナムに100%新品の純正ヨットが初めて輸入されてから、この趣味が徐々に浸透してきた。
2017年以降にホーチミン市やハロン市でプライベートヨットが流行りだし、その後ニャチャン、フーコック、ブンタウ、ダナンなどに広がっていった。特にCOVID-19の後、この趣味は急激に成長を遂げている。
「昨年と比べてヨットの注文は50%以上増加しました。多くの注文がウェイティングとなり、あるモデルの場合は、2025年まで待つ必要があり、中にはいつ入手できるかわからない程人気のモデルもあります。」とドゥック部長は話す。
10月初旬にVietyacht社は、ビンズン省の若い顧客にヨットを引き渡した。この人物は高級車を6台所有していたが、渋滞に悩まされて趣味を変えた。購入した人物は、ヨットを自分で操縦して家族をコンダオやフーコックなどの美しい島々やメコン川探索に連れていきたいと話す。
「車は個人で楽しむだけの趣味ですが、ヨット遊びは、周りの人たちのとの関係を結び付け、友達や家族も所有者と同じように楽しむことが出来ます。」と90年代生まれのこの男性は話す。
Knight Frankの第16回ウェルスレポートによると、ベトナムには2021年時点で3000万USD以上の資産を所有する超富裕層が1234人存在し、100万USD以上の資産を所有する富裕層も7万2135人存在する。実際にヨットを販売しているベトナムの会社もベトナムの富裕層の増加とヨットの販売は比例関係にあると感じている。
通常プライベートヨットの価格は50万USD(120億VND)を超える。一方で、漁船を改造してプライベートヨットとほぼ同じ機能を備えた高級ボートも10万~50万USDで販売されており、人気を集めている。
Vietyachtのグエン・ホアン・ミン営業副部長は、同社ではジャノー、プレステージ、ファンテンパジョ、リーヴァ、フェレッティ、ペルシングという世界的な有名ヨットメーカー6社の50近いモデルのヨットを取り扱っており、毎年30%以上売り上げが伸びていると話す。現在ベトナムで最も人気が高いのはプレステージのヨットで、価格は100万ユーロ以上する。
この成長の勢いが続けば近い将来数千万から数億ユーロもするスーパーヨットが現れるとミン副部長は予測している。「投資家は、環境を汚染する乗り物ではなく、現代的で安全で豪華なヨットのイメージが高級リゾートにマッチすることを期待しているのです。」とミン副部長は話す。
ミン副部長はヨットが贅沢な趣味である理由について、高級な内装家具に加えて、ヨットを輸入するための費用も非常に高額だと説明する。「工場の出荷価格が14万ユーロ程度だとしても、ベトナムでの販売価格は26万ユーロ以上になります。実際、ヨットは超富裕層だけの遊びですよ。」とミン副部長は話す。
太陽光発電ビジネスを手掛ける先述のビジネスマンは、ヨットの移動、メンテナンス、修理に毎月数千万から数億VNDが必要だと話す。毎月の係留費用だけでも2000万~3000万VNDはかかる。また、係留時に使用する電気代や水道代もヨットのサイズによって600万~4000万VNDほどかかる。また、ヨットが岸にある時でも、オーナーは、内部システムを炎天下から守るためにエアコンをつけっぱなしにしておく必要がある。もし、オーナーが自分で運転できない場合は、乗務員を雇う費用も発生する。
「ヨットを購入するだけでも多額の費用が掛かり、更に維持するために様々な経費が掛かります。ヨットを楽しむためのインフラや環境が整備されなければ、いずれ多くの人がヨットを売却するようになるのではないでしょうか。」とこのビジネスマンは語る。
ゾアインさんもヨットを使用するたびに毎回家から少なくとも2㎞は離れた埠頭に移動する必要があると話す。埠頭の係留費用も月額1000万VNDから2000万VNDに値上がりした。また燃料代もバカにならない。1時間走るだけで百リットルのガソリンを消費し、例えばカンゾーまで出かけたとするとそれだけで往復400リットル近くのガソリンを消費するのだ。
「ヨットの維持費は車の4~5倍かかります。それに加えて埠頭まで移動しなければなりませんし、係留場所は限られ、川にはガソリンの補給場所がほとんどありません。なので、本当にヨットが好きな人でないと途中であきらめるでしょうね。」とゾアインさんは話す。
ゾアインさんにとってヨットがもたらす喜びは何ものにも代え難い。現在彼は、この趣味をさらにグレードアップさせるために50億VNDをかけて電動ヨットを購入する計画を立てている。
出典:17/10/2022 VNEXPRESS
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