ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想第51回
Chiyoda sushi V Lotus

ちよだ鮨Lotus Groupの合弁企業であるChiyoda sushi V Lotus。ホーチミン市内で2店舗の寿司店を運営しており、来年度は新規の寿司業態を始める計画だ。日本本社社長であり現法会長の中島正人氏が思いを語る。

何より大切なのは衛生管理

―― ちよだ鮨の事業と海外進出について教えてください。

中島 日本の首都圏を中心に、スーパーや百貨店での持ち帰り寿司店を200店舗、回転寿司店を5店舗、立ち食い寿司店を7店舗展開しています。飲食業界も日本市場は縮小していますから、海外に目を向けたわけです。

 最初に進出したのはアメリカで2000~2005年、次が台湾で2005~2010年です。アメリカでは出店したニューヨークのマンハッタン店が繁盛し、台湾では現地のパートナー企業と組んで8店舗まで広げたのですが、諸所の事情からどちらも撤退しました。

 その後も海外進出は必須と東南アジアからオセアニアまで視察して、国民性や宗教観、市場の成長などからベトナムに決めました。特に市場調査を始めた2014年頃からは日本食がブームになって飲食店が増え、品質の良し悪しがわかる方が目立ち始めました。市場が盛り上がるタイミングだったのです。

 労働集約型の飲食業に必要な優秀な人材が確保できること、生魚が常時流通している東南アジアで数少ない国であることも大きな理由でした。また、過去の経験から現地パートナー選びには慎重でしたが、ご縁があってLotus Groupさんと合弁会社を設立できました。こうして2016年12月にホーチミン市に1号店をオープンできたのです。

―― 魚などの食材はどこから調達していますか?

中島 日本からが多いです。専門のバイヤーが東京の水産物卸売市場である豊洲市場で、日本国内に200店舗ある店舗用の食材を目利きし、仕入れています。この時にベトナム向けも調達しており、価格のスケールメリットも出せるわけです。これらを週に2~3回、空輸や船便でベトナムに直送しています。

 ベトナム産はバリアブンタウ、ダナン、ニャチャンなどから陸路や空路で仕入れています。質の良さはもちろん、流通業者には活魚の〆方や輸送の際の氷の敷き方などを日本で学んでもらいました。

 野菜はダラットの契約農家から送ってもらっています。弊社の副社長と2人で農家を回って栽培方法などを確認し、日本の品種作りに取り組みました。

 調理や味付けは当然のこと、飲食業で大切なのは衛生面です。美味しくて安心という日本の食文化を海外で広めるためにも、鮮度管理や工程管理など日本のルールを徹底しています。ちよだ鮨には他社にもサービスを提供している衛生管理の子会社があり、ノウハウと実績には自信があります。

―― 寿司職人などの教育はどうされていますか?

中島 ちよだ鮨は寿司ビジネスのスペシャリストを育成する教育機関として「日本すし学院」を運営していまして、寿司職人は日本で研修を受けています。寿司や刺身の調理技術だけでなく日本の衛生管理も学びます。

 彼らの研修期間は半年程度で済んでいます。日本人のリーダーは必要ですが、運営、サービス、調理などはベトナム人に任せたいと思っています。

 ちなみにホーチミン市内にはベンタイン店とサイゴンコート店があり、前者がフラグシップ店です。こちらは約120席があり、調理場は20人程度、カウンターの寿司職人は日本人を含めて6~7人おります。

コンパクトな店を多数出店

―― 顧客層とメニューについて教えてください。

中島 お客様のおよそ7割がベトナム人、2割が日本人、その他の外国人が1割です。ベトナム人は上位の中間層が多く、客単価は45~50万VND。日常使いの店というよりも、ハレの日にファミリーやグループで集まる人たちが多いようです。

 メニューの一番人気は刺身で、ほとんどの方が注文するのではないでしょうか。太るからとお米(寿司)を敬遠される女性もいますが、刺身は好物ですね。2番目がロール寿司で、その次が握り寿司。ネタや鮮度は日本と変わりませんが、シャリの酢を少し甘くするなど味付けはベトナムに合わせています。

 ベトナム人は生魚を嫌うと聞いていましたが、実際に来てみて、思ったよりも好んで食べている印象でした。ただ、生魚を食べない人はいますし、最大商圏のホーチミン市であっても、和食市場は寿司専門店だけで成立するほど成熟していません。そのため、寿司がメインの総合和食メニューを揃えました。

―― 焼き物、揚げ物、フライ、鍋などメニューがとても多いですね。

中島 全部で約250種類あり、これまで日本でも海外でも作ったことのない料理ばかりです(笑)。海外では現地の人たちの嗜好に柔軟に対応することが重要で、メインメニューとなるグランドメニューは大きく2回変えています。

 例を挙げると、たこ焼きやお好み焼きを追加しました。中はしっとり、外はカリっとした焼き加減が難しいのですが、提供するとヒット商品になりました。日光高原牛も同様です。寿司のネタだけでなく、すき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキにしたのですが、こちらも美味しいと評判になりました。

 ちよだ鮨には仕入れ部隊と商品開発部隊からなる商品本部がありまして、こうした新商品を開発しています。人数もノウハウも充実した組織でして、ベトナムの事業は彼らに負うところも大きいです。

 ただ、今のような店作りはベトナムでのブランド力が必要と考えてのことで、我々が本来望むものとは少々異なるのです。

―― 本来の事業とは何でしょうか?

中島 ちよだ鮨は「新鮮で美味しい本格江戸前寿司を手頃な価格で」をモットーとしており、ベトナムでも同じです。現在の店舗は必ずしもそうではないので、もう少し手軽に寿司を食べられる小さな店舗を、たくさん作りたいのです。

 具体的には客単価を現在の半分程度に抑えたコンパクトな店を、来年度から数多く出店する計画です。そのためにセントラルキッチンを用意して、食材を各店に配送するようにします。

 今の店舗は大きな商圏で、1ヶ月に数回程度の来店客が多い。新しい店は狭い商圏の小さな店舗にして、来店の頻度を上げたいと思っています。気軽に立ち寄れる近所の馴染み店ですね。

 メニューも変えます。中心となるのは刺身、ロール寿司、握り寿司ですが、新しいメニューでは小籠包や肉まん、小サイズの鍋料理などを考えています。

 現在のベトナムの人口推移は40年前の日本と似ており、飲食業界には成長の余地がまだまだあります。一方、ベトナムの大手企業による複数の飲食チェーンの買収や、寿司店への新規参入増など、業界は大きく変わりつつあります。弊社の事業ももっとスピードを上げていく必要があります。

Chiyoda sushi V Lotus
中島正人 Masato Nakajima
大学卒業後、飲食チェーングループに入社。農業関係の会社を経て、1993年に株式会社ちよだ鮨に入社。人材開発や計画製造システム等に携わり、2012年に代表取締役社長に就任。2016年のChiyoda sushi V Lotus設立と共に現職。