ファン・ミン・チン首相は、ベトナムに投資する投資家に対して、”勝者と敗者”に分けるのではなく、利益とリスクを共有しベトナムでのビジネスをする上での信頼関係維持を重視しすべきだと述べた。
9月17日にファン・ミン・チン首相は、”課題を克服し、チャンスをつかみ、協力を促進する”というテーマで、外国投資企業との会議を開催した。
2022年8月末までに世界的にインフレが進行し、多くの国で経済成長が停滞する中、ベトナムは、マクロ経済の安定化を図り、依然として高成長を維持し、大きなバランスが保たれている。2022年第3四半期の経済成長率は第2四半期を上回っており、突発的な出来事が無い限り、年間の経済成長率は7%に達するとみられている。
この成果について、チン首相は外国人投資家の貢献を強調した。外国からの投資活動は、年々活発になっており、多くの多国籍企業や最先端の技術を持つ大企業がベトナムに注目している。
最近、海外の多くの企業がサプライチェーンの多様化を目的として、投資先を探している。「ベトナムは、外国投資をベトナム経済にとって重要な構成要素の一つとみなしています。海外投資家の成功は、ベトナムにとっての成功でもあるのです。」とチン首相は述べた。
チン首相はまた、ベトナム政府は常にマクロ経済の安定を維持し、インフレを抑制し、合理的な為替レートと金利を維持するために一貫した政策をとり続けていると強調した。
「ベトナムは、不確実性の中で安定を探し求め、受動的な立場の中で主体性を保ち、激動の中で一貫性を示しています。」とチン首相は述べた。
2022年8月末までに実施された海外直接投資は、128億USDとなり、2021年の同時期と比べて10.5%増加している。この数字は、過去5年間の8か月間における外国直接投資額としては最も高い数字となっている。
JETROハノイ事務所は、日本からベトナムへの投資は、昨年59%以上増加し、今年も45%以上増加していると指摘する。
JETROの2021年の調査結果によると、ベトナムにある日本企業の55%が事業拡大を計画している。これは、ASEAN加盟国中で最も高い数字だ。
JETROが日本の親会社1700社以上を対象に実施した別の調査でも、ベトナムは、今後投資を拡大したい国として、アメリカに次いで第2位にランクインしている。
計画投資省のグエン・チー・ズン大臣によると、ベトナム政府は日本以外の国に対しても、品質、効率、技術、環境保護を重要な評価基準として投資を選択的に誘致している。ベトナムは、ハイテク産業、革新的な技術、世界的に普及している製品への投資誘致を優先している。
ベトナムに進出して15年になるBoschグループの代表者によると、同社は、ベトナムでのソフトウエア開発を拡大する計画があり、2025年までに6000人規模までソフトウエアの研究開発エンジニアを拡大することを目標としている。同社では、更にハイテク農業など新しい分野にも投資を拡大していく予定だ。
一方、パナソニックは、IoTやAIを活用した製品の開発を進めるためにハノイのIoT研究開発センターを拡張し、スマートデジタルファクトリーをはじめとした様々なAIを活用したソフトの開発に力を入れている。
しかし、一方でJETROハノイ事務所は、ベトナムに投資する外国企業の抱える問題点として、入札問題、労働力不足、エネルギー供給の不安定さ、デジタルトランスフォーメーションの遅れ、物流などを挙げている。
この点について計画投資省のズン大臣も、外国直接投資の誘致に影響を与える労働力、インフラ、行政手続きなどに依然として課題が残されていることを認めている。
ズン大臣は、外国投資を誘致し効果的に活用するために、各省庁、地方自治体が積極的にアプローチし、投資家の課題を把握して企業に有利なビジネス環境を構築し、行政手続きの時間を短縮させる必要があると述べた。
「サプライチェーンの混乱を克服するために、新しいパートナーを繋げ、市場を拡大させることで、取引先を多様化しコストを削減させるような企業支援政策が必要です。」とズン大臣は指摘する。
ズン大臣は、長期的には投資環境と行政手続きの改革を引き続き実施していく必要があると述べた。新たに発行される政策は、企業の課題を解決し、新たな障壁を作り出さないという目標を維持しなければならない。
同時に、国内企業は能力を高め、特定の産業に焦点を当てて裾野産業を発展させ、外国企業との連携を高める必要がある。これは、国内企業がグローバルサプライチェーンに参入し、国内の製造価値を高めることに繋がる。
チン首相は、各地方の特徴に基づいてバランスの取れた合理的な方法で外国投資を誘致すべきだと強調し、各省庁と地方自治体に対して、外資系企業の困難な課題を包括的に見直して、ビジネス環境の改善や行政手続きの短縮を進めるように要請した。
各自治体は、外資系企業の高い需要を満たすために、最新の設備とデジタルアプリを備えた大規模な物流センターの建設を提案している。戦略的なインフラ整備として、まずは交通インフラ、DX、グリーントランスフォーメーション(GX)の構築に投資を優先する必要がある。
チン首相は、業界団体や投資家に対して、信頼関係を維持し、相互利益のために協力し、ベトナムと共に歩むことを提案した。チン首相は、各企業に対して新しい管理モデルを適用し、グリーンビジネス、グリーンテクノロジーへのビジネスモデルの転換を求めた。また、付加価値が高く、最先端の科学技術を応用した分野への投資の促進も求めた。
各業界団体は、会員企業が抱えるベトナムでの投資活動における困難や問題点を随時報告し、問題可決のために適切な政策や法令の提案をおこなう。
「もし一緒に働いているのに”勝者と敗者”に分かれてしまえば、それは協力関係とは言えません。そのため、我々は、互いの利益を調和させリスクを分担するために、しっかりと腰を下ろし、耳を傾け、互いに話し合う必要があります。」とチン首相は述べた。
チン首相は、外国人投資家がベトナムに安心して長期投資を実施できるように、利便性が高く安全で透明な環境を作り出すための条件を整えると宣言した。「平等の精神に基づき共に発展し、共に社会に対して責任を負いながら利益を得て労働者と環境を保護し、言い訳をせずに出来るといったことを確実に実行すべきです。」とチン首相は述べた。
出典:17/09/2022 VNEXPRESS
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