ベトナムのゼネコン大手であるホアビングループ(HBC)のレー・ビエット・ハイ氏は取締役会長から辞任すると表明した後、土壇場で意見を変えたため、半月以上にわたって社内が混乱している。
ホアビングループの権力争いの最新の動きとして1月9日にホアビングループの株式17.4%を保有するレー・ビエット・ハイ氏から臨時株主総会の開催要求が提出された。具体的には、ハイ氏は取締役メンバーの解任と新規メンバーの選任、会社定款の変更、財務情報の開示と修正を提案している。
HBC会長職を巡る争い
2022年12月14日にHBCの取締役会は、ハイ氏の取締役会長の辞任届けの承認と取締役会メンバーからの解任及び、ハイ氏の息子であるレー・ビエット・ヒウ氏の社長就任、創立評議会の設立、グエン・コン・フー氏の取締役会長就任などを決めた議決50号と51号を公表した。
当時、ハイ氏は息子の社長就任の合法性を確保するために会長職を辞し、創立評議会を設立してその議長に就任すると述べていた。ハイ氏によると創立評議会は、定款の変更、新規事業参入、合併や買収などの契約、1000億VND以上のプロジェクトなど重要な議題について、取締役会に対してアドバイスや意見を出す役割を担っている。取締役会と創立評議会は、両者の合意を原則として活動するものだとハイ氏は主張する。
「このようなやり方で、私は会社に影響力を残しており、権限をすべて失ったわけではありません。」とハイ氏は述べ、この決定は、取締役員8人全員の同意に基づいていると説明した。
しかし、2023年1月1日からHBC取締役会長に就任予定だったグエン・コン・フー氏は創立評議会について、これは非営利団体のようなもので、取締役会の決議に何の影響も与えることはないという全く逆の発言をおこなった。
先週の記者会見でフー氏は、ハイ氏が会長職を辞任した理由は、一部の取締役会メンバーが、ハイ氏の”財務上の不正を発見した”ことが理由だと説明した。
「もし、辞任しないのであれば我々は取締役会を開き、証拠を基にあなたを解任します。」とフー氏は、ハイ氏に通告した内容を明らかにし、フー氏は独立した自由な個人であり、”誰の操り人形でもない”と明確に発言した。フー氏はさらに、例え取締役会会長に就任しても、独立性を保つために株式の購入は行わないと述べた。
なぜ、ハイ氏は会長辞任の決定を延期したのか?
2022年12月26日にレー・ビエット・ハイ氏は、コーポレートガバナンス責任者を通じて、議決50号と51号の一部内容の延期について話し合うために3日後に臨時取締役会を招集するとした。
先週末にハイ氏はこの問題について、この2つの議決が公表された後、創立評議会の組織と運営に関していくつかの不備が見つかったためだとHoSEに説明した。そのため、議決50号と51号の実施延期は、”確実な法的根拠に基づく新たなガバナンスモデルを構築し”、”旧正月期間中のコーポレートガバナンスの継続を確保するため”に必要だとハイ氏は述べ、法的代表者が変われば支払いや決算業務に支障が出る可能性があると指摘した。
しかし、最初の臨時取締役会は、開催に必要な8人中5人の参加条件が満たせず開催できなかった。翌日の2022年12月31日に、同様の内容でオンラインの取締役会を開催しようとしたが、フー氏を含む4人の取締役会メンバーが参加を拒否したため条件を満たせず開催できなかった。
その後、HBCがホーチミン市証券取引所(HoSE)に送った議事録によれば、ハイ氏はその日の13時30分から23時40分までViberを使ったオンライン取締役会議を開催した。議事録によれば、この会議には8人中5人の取締役会メンバーが参加しており、フー氏もViberのグループを通じて意見を述べた。この会議の議題については投票の結果、賛成3票、反対1票(フー氏)、棄権1票となった。その後、HBCは、2023年の新年を迎える数分前に議決50号と51号の実施延期を定めた議決53号を同社のWEBサイトに掲載した。
この決定は、フー氏と会議に参加しなかった他の取締役会のメンバーから即座に反論された。フー氏は、今回の臨時取締役会の招集が定款の条件に即していないとして会議への参加を拒否したことを明らかにした。
フー氏によれば、今回の動きはフー氏が正式にHBCの取締役会会長に就任することを阻止するためのもので、ハイ氏が会長職にしがみつくための行為だとフー氏は批判した。更にフー氏と取締役会の他のメンバーは、この会議について両者間で交わされたメッセージの内容を交えて声明を発表した。
フー氏は、議決53号が発表された翌日に代理人のズーン・バン・フン氏を通じて国家証券管理委員会(SSC)に対して「ハイ氏が勝手に発行した議決53号には、実施するための法的根拠を欠いている。」と記載した報告書を提出した。
この報告書では、取締役会によるフー氏のHBC会長任命は、企業の置かれた困難な状況を克服し、会社の将来的な発展を保証するために必要不可欠な改革を実現するためだと強調している。フー氏によれば現在のHBCの危機は、長年にわたるハイ氏の放漫経営と不正な子会社への支出が原因となっている。
しかし、ハイ氏はフー氏の行動は主張していることに反していると指摘する。「取締役会メンバーの本当の動機は、個人的な利益のために会社を乗っ取ることです。彼らの動機はそれしかなく、それによって会社が外部勢力に乗っ取られる可能性まで生み出しています。」とハイ氏は、株主と従業員に宛てた手紙の中に綴っている。
HBCの取締役会長は誰なのか?
2022年12月31日に開かれた取締役会と議決53号の公表以降、HBCは、別の取締役会を開催していない。最近になってハイ氏が株主に送った手紙には「会社の法的代表者であり取締役会長であるレー・ビエット・ハイが公式に発表した内容のみが有効であり、真実を反映しています。法的代表者であるレー・ビエット・ハイの承認を得ず、HBCから公式に発表されていない情報、声明、文書の内容は全て無効です。」と書かれている。
一方のフー氏は、SSCとHoSEに対して一連の議決の正当性を確認する書簡を送った。フー氏によれば、2023年1月1日より同氏を取締役会長に任命する議決は取締役メンバー8人全員の同意を得て発行されている。一方で、会長就任を延期するという議決は、8人中4人しか出席しておらず規定に反している。
これによって、2023年1月1日以降は、ハイ氏とフー氏の双方が自分がHBCグループの正当な会長であると主張している状況が続いている。
この状況についてLawKey法律事務所のルーン・ハイ・ハー所長は、12月31日に開かれた取締役会は、開催の少なくとも3日前までにメンバー全員に通知しなければならないというHBCグループの定款及び、ベトナム企業法の規定する条件を満たしていないとの見解を示す。
しかし、一方でハー所長はこの会議で発行された議決53号は、取締役会がこれに代わる議決を発行するか、少なくとも1%以上の株式を所有する株主が、裁判所に対して議決の執行停止または、破棄を申請し、裁判所の承認を得るまでは、効力を有するとの見方を示す。そのため、ハー所長の意見では、現在のHBCグループの会長は、レー・ビエット・ハイ氏ということになる。
フー氏の法的代理人は、1月11日にフー氏とハイ氏が個人的な会談をおこなったと述べた。代理人のズーン・バン・フン氏は、ハイ氏が早急に会長職をフー氏に譲ることを発表し、取締役会が従業員への給与支払処理を進められるようにすることを望むと述べた。
出典:11/01/2022 VNEXPRESS
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