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ベトナムニュース【経済】公務員の給料だけでは生活が苦しい

(C) VNEXPRESS

地方公務員として12年間働いているチン・タン・フーンさん(45歳)の給料は、タントアン輸出加工区で働く妻の収入の1/3しかない。

16年前、学校で測地学を学んだフーンさんは、卒業後にホーチミン市ビンチャイン区のある村で公務員として採用され、初任給は68万VNDだった。2010年に、フーンさんはホーチミ市の公務員試験に合格し、家からバイクで45分ほどのところにある別の地域に配属された。新しい職場で、フーンさんは、地籍調査、建設、農業、環境分野を担当することになったが、給与は200万VNDに届かなかった。

給料が低く、子供を養うのが難しいと感じたフーンさんは、仕事を辞めて測量会社を立ち上げようと考えたが、妻が反対した。「妻は、外に稼ぎに行くのは一人でいいから、あなたは子供達が後に続けるよう役所の仕事を頑張って続けてくださいと言うのです。」とフーンさんは打ち明けてくれた。実は、フーンさんの妻も以前公務員だったが、あまりにも給料が低く生活ができないため仕事を辞め、タントアン輸出加工区で働くようになった。

妻の説得によりフーンさんは公務員の仕事を続けることを決意し、更に、土地管理について学ぶため夜間大学に通うことにした。大学の学位を取得した後、フーンさんは、毎月60万VNDの手当が支給されるようになった。これまでの何度かの昇給と3級公務員資格手当などによって、フーンさんの月収は、600万VND近くまで増えた。

しかし、「この給料は妻の1/3程度しかありません。」とフーンさんは話す。公務員の手当に関するホーチミン市の議決03号により、フーンさんは2018年以降、追加手当を受け取れるようになった。追加手当というのは、例えば大量の仕事をこなすために土日を問わずに残業した残業代のことだ。

高くはない収入で2人の子供を学校に通わせるため、フーンさん家族は、買い物や外出を控え節約した生活を送っている。15年近く、フーンさんの妻は早起きしてご飯を炊く習慣を続けている。家族全員で朝食をとると、フーンさんはご飯を職場にもって行き、妻は工場で食事をとる。残ったご飯は、2人の息子の昼食にする。妻が残業で、フーンさんも仕事が忙しくて帰りが遅くなる時には、15歳の息子が、家族のために食事の支度をし、決して外食はしない。

7月に地域の最低賃金が改定されたことを受けて、妻の給料が50万VND上がった。一方で、フーンさんの基本給は、物価が急上昇し続けているにもかかわらず3年間維持されたままだ。「妻が家族全員の費用を負担しなければなりませんが、空芯菜は1㎏1万VNDから1万5000VNDに値上がりし、豆腐も1000VND上がり、インスタントラーメンや卵も値上がりしています。」とフーンさんは、家族がよく食べる食材を数え上げながら、「借金を作らないように、もっと節約を頑張ろうと思います。」と話した。

同じく地方公務員であるチャン・ゴック・ヒウさん(38歳)は、収入を増やすために副業でオンライン販売をおこなっている。時計が11時30分を指すと同時にヒウさんは、急いで職場の荷物を整理して炎天下の中6㎞離れた自宅まで帰る。

「家に帰って子供達の昼ご飯を作り、商品の配達をします。」とヒウさん話す。ヒウさんの夫も公務員で、二人の給料は合わせて1300万VNDだ。ヒウさんによると、以前はこの給料でも何とか生活できたが、COVID-19の2年間に物価が上昇し、徐々に生活費に困るようになった。

生活費を賄うため、2020年末からヒウさんはゼリーやソーセージを仕入れてオンラインで販売するようになった。配送費用を節約するために、ヒウさんは、昼休みや勤務後、祝日や休日を利用して自分で商品を配達している。ヒウさんは、通常の仕事に加えて民族・宗教・地域組合の仕事も兼任しており、仕事量は非常に多い。

「全ての仕事をこなすには大変な労力がかかります。」とヒウさんは話す。ヒウさんの職場は、44の支部と3000人近くの会員がいるが、実際に運営しているのはヒウさんと会長の2人だけだ。仕事上、ヒウさんは、仕事が終わってから人に会わなければならないことも多いが、残業代は一切つかない。

「法外な給料を要求する気はありませんけど、安定して仕事を続けられるのに十分な給料をもらいたいです。」とヒウさんは話す。

ヒウさんやフーンさんは、典型的な地方公務員で、公務員の給料だけでは生活することが出来ずに苦労している。ホーチミン市郊外のある区の人民委員会の副主席は、この3年間、地方の公務員は生活に苦労してきたと話す。パンデミックが発生すると、多くの公務員が休みなく働いたが、それに見合うだけの給料や手当は支払われなかった。物価が急激に上昇するなかで、給料がほとんど変わらないので多くの公務員が退職を希望するようになり、上司は必死にその説得にあたった。
「職員の多くは地元の出身で、私たちは、退職を希望する職員を説得するのに家族の協力をお願いしなければなりませんでした。」とある地区の幹部は話す。

ホーチミン市統計局のデータによると、過去6年間にホーチミン市の公務員の給与は、200万VND弱上昇しており、2021年のホーチミン市の公務員の平均給与は886万VNDとなった。このうち、平均収入が800万VND未満だったのは、教育、物流、宿泊、飲食にかかわる分野だった。

ホーチミン市労働組合連合のレ・ティ・キム・トゥイ副会長は、知り合いの地方公務員について話してくれた。彼は大卒で初任給は、公務員係数2.34で計算された。15年間働いて彼の公務員係数は4.98になったので、給与は現在の基礎給与149万VNDにこの数字をかけた750万VND弱となり、そこから社会保険料などが引かれる。

「毎月1000万VNDの収入を確保するために、彼は様々な役職に就いて土日も働き、時には夜の9時、10時まで仕事をします。」とトゥイさんは話す。現在、大卒の地方公務員は、初任給が340万VND以下で、苦しい生活を送っている。もし夫婦が両方公務員だと、生活はさらに苦しくなる。多くの公務員がオンライン販売や副業をすることで、何とか生活を維持している。

「若い公務員には貯金もありません。携帯電話やバイクを買う場合は、借金するかローンを組むしかありません。」とトゥイさんは話す。数年前にホーチミン市は議決54号を試験的に適用し、公務員の収入が多少改善されたが、あくまで暫定措置だ。多くの公務員は、物価が急激に上昇する中で、この議決の終了時期が迫っていることに不安を感じている。

別の視点から、社会生活研究所のグエン・ドゥック・ロック所長は、公務員の給与が低すぎると、彼らは生活費を賄うために多くの仕事をこなさなければならなくなると指摘する。そのため、彼らは、所属する機関の権威や地位、時間を利用して外部から収入を得ようとする。

「これは、公務員の職務倫理規定違反です。一部の国ではこのような行為は固く禁じられていますが、我が国では公務員の給与が低すぎるために日常的に行われています。」とロック所長は話し、一部の機関では職員の副業やを奨励していると説明した。少なくない公的機関の幹部が部下に外部での副業や共同プロジェクトを推奨し、その収入を分け合っている。

中央政府の2018年の議決27号によると、公務員の給与改革が2021年7月に実施されることになっていたが、COVID-19によって見送られてしまった。公務員の給与改革は何度も見送られており、現在公立大学の職員の最低給与は350万VNDにも届かない。一方で、労使関係調査センターの調査によると、2020年にホーチミン市で通常の生活を送るためには少なくとも750万VNDの給与が必要だとされている。

出典:08/08/2022 VNEXPRESS
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