家具、内装、建築の大型展示会「Vietnam Interior & Build Expo(VIBE) 2026」がホーチミン市SECCで開催された。約300社の企業が集結し、700以上のブースを出展。洗練された空間デザインと革新的な技術が光る。

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「空間」の未来が動き出す
今年で3回目を迎えたVIBE 2026は9月30日~10月3日の4日間で開催された。新興の展示会としては長期間であり、期待度と注目度の高さが伝わる。前回と同じくホーチミン市手工芸・木材産業協会(HAWA)とホーチミン市建設・建材協会(SACA)が主催し、今年は「成長の躍動」をテーマに掲げた。
昨年も感じたが、とても先進的な展示会だ。各社は展示に十分なスペースを取り、素材を活かしたり意匠を凝らしたブースが人目を引く。自社の強みを打ち出しながらハイセンスなデザインを実現できる企業がこれほど多いとは。
取材に訪れた2日目は、ジャケットや揃いのポロシャツを着たビジネス関係者が中心と見え、活発なBtoB商談が繰り広げられていた。
特に際立っていたのが日系企業の存在感だ。木材系のパビリオン(4社)や、MOMIJIとKOSHI Group運営のジャパンパビリオン(17社)をはじめ、個別出展を含めると日本・日系企業がかなりの割合を占める盛り上がりを見せた。

輝きで魅せるブランド価値
高品位なLED内照式サイン(看板)の専門メーカーであるダイカン。同社の主要生産拠点であるDaikan Vietnamが出展した。1文字ごとに基板を独自設計する高度な技術を有し、寿命が短く不具合が起きやすかった従来の砲弾型LEDの課題を解決した。
LED看板は約7割をベトナムで製造しており、ここから日本と海外に輸出。顧客の約6割は小売り店舗で、その美しさと耐久性は欧米のラグジュアリーブランドからも信頼を得ている。
ただ、近年のベトナムでは建築物のクオリティが向上し、高級ブランドに対する意識も高まってきた。今がチャンスと見て、ベトナム国内市場への参入を決めた。
「どれほど立派な建築物でも、看板の質が低ければ建物全体の印象が下がってしまう。そして、逆のことも言えます」
価格は相応だが、「高くても買えなくはない」状況になってきたと実感する。繊細なデザインと確かな発光技術が注目を集めていた。

アルミ鋳造の高級ファサード
2005年から旧ビンズン省で生産を開始したASUZAC ACM。独自技術のVプロセス鋳造を活かして、門扉やフェンスなどの高品質なアルミ鋳物製品を手掛けてきた。日本と米国への輸出、ベトナム国内販売がそれぞれ約3割を占める。
「Vプロセス鋳造はフェンスなどを作るのに非常に適していまして、世界に広がりましたが、特許が切れて競合が増えました」
そこでビルの建材や高級ホテルのファサード(外装材)といった高付加価値分野へ軸足をシフト。長年の実績と技術力でベトナムでの展開も進めている。
さらに、イタリアの高級パラソルブランド「Scolaro」の代理店事業も行う。増加する富裕層やデベロッパー向けに、上質な屋外リゾート空間から洗練された建築外装までトータルで提案している。

日本の木に新たな市場を
日本産木材の海外輸出拡大を推進する、日本木材輸出振興協会。同協会が中心となって木材関連のジャパンパビリオンを出展した。ブースには豊かな木目が活かされ、内外には木材や木材製品が並び、温かみのある空間を創り出していた。
「日本の木を知ってもらうために展示会や商談会に積極的に参加しています。認知は広がっているので、今後はどう売るかです」
パビリオンではヒノキを中心とした高品質な木材の魅力を展示し、現地関係者に直接アピールする。ベトナムには丸太で輸出して、付加価値の高い建材やフローリング、家具などに加工して、日本に輸出することが多いという。ただ、木材の輸出先は中国が圧倒的に多く、ベトナムには開拓の余地があるという。
「最近では、ベトナムの木造住宅用に日本の木材を普及させたいと考えています」

安心と温もりのヒノキ玩具
木材パビリオンの1社が丸紅木材で、ザライ省に生産工場のMarubeni Lumber Vietnamを持つ。ブースにずらりと並んだのは、日本産ヒノキをふんだんに使用した愛らしい木製玩具の数々。興味深げに玩具を手に取り、担当者に話しかける来場者が多かった。
特徴的なのが表面の加工だ。広葉樹に比べてささくれ立ちやすい針葉樹の特性を克服するため、職人が入念に研磨を重ね、子どもが安心して触れられる滑らかな質感を実現している。
「製品は日本を主とした輸出が中心で、一部はベトナムの小売にも卸しています。狙っているのは米国ですね」
多種類の高品質な最終製品を提示することで、まだ認知度が足りないというヒノキの魅力を多角的に発信。日本へのインバウンド客にも日本の木材を伝えて、世界に広げたいと語っていた。

香りで売込む岡山ヒノキ
岡山県産のヒノキ材を世界へ広めるべく出展した岡山県木材組合連合会は、桃太郎を描いた揃いのジャケットで出迎える。ブースを訪れた来場者の多くが展示された木材を手に取り、その爽やかな香りに感嘆の声を上げていた。
「韓国ではヒノキの香りが集中力を高めて学習に効果的と、子ども部屋の壁などに使われている例も聞きます」
岡山県はヒノキの生産量が国内トップクラス。ただ、丸太のまま輸出するのではなく、日本の高い技術で製材・加工を施し、価値を高めて輸出したいという。
ベトナムでの出展は初めてだが、初日から既に商談が始まっている。新たな需要の開拓に着実な一歩を踏み出していた。

建設現場の情報を一つに
ジャパンパビリオンは均一サイズのスタンドを並べて、各社が展示物や資料を置いて説明する形。企業が密集している様子も来場者の興味を引いていた。ここではユニークな2社を紹介したい。
1社は土木・建設IT大手の建設システムが親会社となったVitalify Asiaで、建設現場向け情報管理ツール「PROSHARE」を紹介していた。
ベトナムの建設現場ではZaloなどのチャットアプリによる情報共有が主流だが、データの消滅や膨大な関係者間での一元管理が課題となる。
「PROSHAREは設計データやスケジュールを一括管理し、現場の誰もが最新情報にアクセスできるシンプルなツールです」
日本ではこうした施工管理システムの利用が一般的だが、ベトナムでの普及はこれから。現在はベトナム市場向けにローカライズ版を開発中で、建設や土木のDXソリューションとして大きく期待される。

壊さず治す床沈下の技術
もう1社はアップコン。倉庫や工場の床の沈下問題を解決する、ウレタン樹脂注入工法を説明していた。
従来の沈下した床は破壊して打ち直す必要があり、操業停止が不可欠となっていた。しかし同社の技術は、1円玉より小さな穴から発泡ウレタンを注入し、その強力な膨張力で床を持ち上げる。操業を止めずに施工できる点が大きな特徴だ。
「ウレタンが膨張して完成すると、平米当たり36tの荷重に耐える強度になります」
北部の日系工場での採用実績を弾みにベトナムでの本格普及を推進させる。まずは知名度を高めることが目的で、ベトナムで成功した後に他国へも展開させたいと語る。

日越合弁の高機能チェア
日本の老舗オフィス家具メーカー東洋工芸と、現地樹脂加工大手のCATTHAIの合弁で生まれたのがTOYO T.A.P.E.R。
帝国ホテル等に納入実績を持つ高級バンケットチェアをはじめ、先端工場向けの導電性クリーンルームチェア、非電気式と電気式の温水洗浄便座などが、広々としたブースに並べられた。
「クリーンルームチェアは座部のシートがホコリの発生を減少させ、帯電した静電気をキャスターから床へ逃がす特殊構造です」
オーダーメイドのバンケットチェアは日本と同様にホテル向け、クリーンルームチェアは中国製が多く流通しているので工場向けに高品質を訴求し、便座はホテルや住宅向けに販売したいという。

アワード受賞の駐車設備
空港の旅客搭乗橋でベトナムでも知名度の高い新明和工業。昨年に続いて力強くアピールしたのが機械式駐車設備である。
会場には実物の自動車を搭載した、電動で上下する機械式駐車設備を展示。動きのある実物デモは来場者の視線を釘付けにし、約300社の出展企業の中から10社が選ばれる「ベストブースアワード」を見事に受賞した。
「Vibeの目指す、上質な空間と魅力的な駐車場を表現できたかなと思います」
都市化が進むベトナムにおいて、主にラグジュアリー志向のマンションやビルでの導入を働きかける狙いだ。さらにベカメックス東急のサッカー関連へのスポンサードやバスラッピングなど多角的なプロモーションを展開し、現地でのブランド浸透を加速させていた。































取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。