ベトナムで外国人が就労するには、原則として労働許可証(ワークパーミット)の取得が法律で義務付けられています。無許可で就労した場合、本人だけでなく雇用主にも罰則が科されるため、正しい手続きの理解が欠かせません。
ACCESSを運営するLAI VIEN(ライビエン)は、ベトナム進出支援事業を展開しており、労働許可証申請においても多数の実績があります。本記事では、法的根拠や免除規定、申請の流れといった制度面に加え、ビザ区分・社会保険・書類の公証手続きなど、実務で特に迷いやすいポイントもあわせて解説します。
目次
労働許可証とビザの違い(よくある誤解)
労働許可証の申請についてお問い合わせをいただく中で、特に多い誤解が「労働許可証」と「労働ビザ」の混同です。
ベトナムでは、就労に対する許可(労働許可証)と、滞在に対する許可(ビザ)が明確に分かれています。そのため、ベトナムに滞在して働く場合は、労働許可証と滞在許可(ビザ・TRC等)の両方を取得する必要があります。どちらか一方だけでは就労できませんので、この違いはまず押さえておいてください。なお、労働許可証の免除対象者については、労働許可証そのものは不要ですが、滞在資格や就労に関する別の手続きが必要になる場合があります。
法的根拠と申請の要否
ベトナム労働法(45/2019/QH14)第151条により、ベトナムで働く外国籍の労働者は、国家機関が発給した労働許可証を有している必要があると定められています。
ただし、同法第154条に定める「労働許可証発給対象でない外国人労働者」に該当する場合は、この限りではありません(詳細は次項)。労働許可証の免除については、労働法第154条だけでなく、政令219号(Decree 219/2025/NĐ-CP)の規定もあわせて確認する必要があります。
また、政令219号(Decree No.219/2025/ND-CP)第7条により、管理者・経営責任者(CEO)・専門家・技術者に該当する外国人が、1月1日からその年の最終日までの期間で合計90日未満の就労目的でベトナムに入国する場合、労働許可証の申請は不要とされています。
免除規定(労働法第154条)
労働法第154条では、以下に該当する外国人労働者は労働許可証の発給対象外とされています。
- 政府の規定に従った出資価値を有する有限会社の所有者又は出資者
- 政府の規定に従った出資価値を有する株式会社の取締役会の会長又は取締役
- 駐在事務所、プロジェクトの長、又はベトナムに所在する国際組織・外国政府の非政府組織の活動に正式な責任を負う者
- 販売活動のために3か月未満の期間、ベトナムに所在する者
- 生産・経営に影響を与える、又は与える危険がある複雑な業務上・技術上の事故・状況で、ベトナム人専門家及びベトナムにいる外国人専門家では処理できないものの処理のために3か月未満の期間、ベトナムに所在する者
- 弁護士法の規定に従ったベトナムにおける弁護士業許可証の発給を得た外国人弁護士
- ベトナムが加盟する国際条約の規定に従う場合
- ベトナム人と結婚して、ベトナム領土で生活する外国人
- 政府の規定に従ったその他の場合
注意したいのは、免除対象であっても手続きが一切不要というわけではない点です。 免除対象者であることを当局へ申請する必要がある場合がありますので、該当すると思われる場合も、まずは要否の確認をおすすめします。
労働許可証のカテゴリー
労働許可証には主に以下の4つの職位区分があり、それぞれ要求される経験・条件が異なります。
- 管理者
- 経営責任者(CEO)
- 専門家
- 技術者
実務上は、申請者の過去の経歴をもとに、どのカテゴリーで申請するのが妥当かを事前に検討する必要があります。労働許可証の申請は、一度受理された後に却下された場合、再申請の難度が上がる可能性があるため、初期段階での申請内容の妥当性検討が重要です。
社内異動と現地採用の違い
上記のカテゴリーとは別に、「社内異動」と「現地採用」という区分もあります。
社内異動として扱う場合、原則として外国人本人がベトナムへの異動前に、国外の企業で一定期間勤務していることなどの要件を満たす必要があります。実務上、代表的な要件の一つが、異動前の12か月以上の勤務経験です。この区分による最も大きな違いは、ベトナムでの社会保険納付義務です。
- 社内異動の場合:社会保険法(41/2024/QH15、2025年7月1日施行)第2条第2項により、ベトナムでの社会保険加入義務の対象外とされています。社内異動は本国の雇用主に籍を置いたままベトナムで勤務する形態であり、社会保険法上も社内異動者は明示的に加入義務の対象外とされています
- 現地採用の場合:ベトナムでの雇用契約(12ヶ月以上)を結ぶため社会保険料負担が発生します。会社負担分・本人負担分を合わせた保険料が発生するため、雇用契約や給与設計によって企業側・本人側それぞれのコストが変わってきます
雇用形態の設計によってコスト構造が大きく変わるため、駐在か現地採用かを検討する段階からあわせて確認しておくべきポイントです。
なお、2025年7月施行の改正社会保険法(41/2024/QH15)により、社会保険の加入義務は「12ヶ月以上のベトナムでの雇用契約を結んでいるかどうか」を基準に判断されるようになりました(社内異動・定年年齢到達者等は上記の通り除外)。この結果、従来は労働許可証免除に伴い社会保険も対象外だったベトナム人配偶者がいる外国人など、除外規定に該当しないケースでは、12ヶ月以上の契約であれば加入義務の対象となります。更新のタイミングで、ご自身の契約が該当するかあわせて確認しておくと安心です。
入国時のビザ区分にも注意
労働許可証の取得と合わせて、入国時のビザ区分も確認しておく必要があります。
ベトナムのビザは、原則として入国後に目的を変更することはできません。ただし、入管法(51/2019/QH14による改正後の規定)により、企業・組織に招聘・保証されて入国し、労働許可証(または労働許可証免除確認)を取得した場合や、e-visaで入国した後にこれらを取得した場合など、法律で定められた例外に該当すれば、国内でLD1/LD2ビザへの変更が可能です。
実務上は、DNビザ(商用ビザ)で先に入国し、労働許可証取得後にこの例外規定を使ってLDビザ・TRCへ切り替える、という流れが広く用いられてきました。一方、観光ビザ(DL)は「招聘・保証」の要素がないため、この例外の対象外と考えられます。
着任スケジュールに余裕がない場合ほど、早い段階で専門家に相談し、自身のビザ区分がこの例外規定に該当するかを確認しながら進めることをおすすめします。
労働許可証:必要書類と申請の流れ・期間
必要書類
企業側・個人側でそれぞれ準備する書類があります。
企業側が準備する書類
- 労働許可証申請書(所定様式)
- 雇用契約書または委任状(管理者の場合)
- ベトナム企業の事業登録証明書の写し
個人側が準備する書類
- パスポートの写し
- 健康診断書
- 無犯罪証明書(日本の警察または法務省発行)
- 学歴・資格を証明する書類、または職務経験を証明する書類(カテゴリーにより必要な書類は異なります)
- 証明写真(規定サイズ)
書類の公証・認証手続き
無犯罪証明書や在職証明書などの私文書をベトナムでの申請に使う場合、公証・認証の手続きが必要です。ルートは大きく2通りあります。
| ルート1(日本国内で完結) | ルート2(ベトナムに持参) | |
|---|---|---|
| 手続きの流れ | 公証役場 → 法務局(局長印) → 外務省(公印確認) → 在日ベトナム大使館・領事館で認証 | 公証役場 → 法務局(局長印) → (書類をベトナムへ持参) → 在ベトナム日本大使館・領事館で印章証明 → ベトナム外務局で公証 |
| 認証を受ける場所 | 日本国内(在日ベトナム大使館・領事館) | ベトナム側(在ベトナム日本大使館・領事館、ベトナム外務局) |
| 費用 | 高め | 抑えやすい |
| 所要期間 | 短め | 長め |
外国で発行された書類については、原則としてベトナム語への翻訳、公証・認証等が必要となります。書類の種類や発行国によって必要な手続きが異なるため、事前の確認が必要です。この公証翻訳については、日本で行うよりもベトナム現地で行う方が費用を大きく抑えられるのが実務上の傾向です。書類準備のスケジュールを組む際は、翻訳・公証翻訳のタイミングと費用感もあわせて検討することをおすすめします。
書類の有効期限や認証の要否は変更されることがあるため、申請直前に最新情報を確認することをおすすめします。
申請の流れ・期間
一般的な流れは以下の通りです。
- 受入企業が必要書類を準備し、管轄の発行機関(省の労働局・人民委員会、工業団地内であれば管理委員会の場合も)へ申請
- 審査・発行(政令219号により、完全な申請書類を受理した日から法令上10営業日以内に発行。不承認の場合は3営業日以内に理由が通知されます。実際の処理期間は地域・時期・書類の補正等によって異なります)
- 発行された労働許可証をもとに、LDビザまたはTRCを申請
なお、政令219号の施行以前は、雇用の必要性についての説明が労働許可証の申請とは別の独立したステップとして必要でしたが、現在はこの説明が申請プロセスに統合されています。また、外国人採用に先立つベトナム人向けの求人公告期間も、以前の15日から5日に短縮されています。
ここで注意したいのは、これらの日数はあくまで法令上の目安であり、実際の処理期間は申請先の地域や時期、書類の不備の有無によって前後するという点です。 着任予定日から逆算し、書類準備の段階から余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
TRC:必要書類と申請の流れ・期間
労働許可証を取得したら、速やかにLDビザまたはTRC(テンポラリーレジデンスカード)の申請に移行します。3ヶ月以上滞在する場合は、入国後にTRCを別途申請します。
注意したいのは、労働許可証やパスポートの残存有効期間が短い場合、希望する期間のTRCを取得できないことがあるという点です。特にパスポートの残存期間は、TRCの有効期限にも影響するため、申請前に必ず確認してください。なお、TRCの有効期限は最長2年です。
必要書類
- パスポート原本(有効期限がTRC有効期間+6ヶ月以上、余白ページ2ページ以上)
- 一時滞在許可証申請書(企業側、所定様式)+本人申告書(所定様式)+証明写真
- 労働許可証の写し
- 保証機関(企業)の法人登記関連書類の写し
- 地域公安による居住証明書
※居住証明書は、居住先の大家に取得を依頼する必要があります。
申請の流れ・期間
一般的な流れは以下の通りです。
- 労働許可証取得後、必要書類を準備
- 移民局へオンライン申請+原本書類の提出
- 審査後、結果受領日の案内
- 移民局でTRCを受け取り
TRCについても、法令上の目安と実際の処理期間には差が出ることがあります。 特にTRCは申請中にパスポートを当局に預ける必要があるため、想定より処理が長引いた場合の影響が大きくなります。実際には1か月近くかかったケースもあり、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
VNeID登録について
労働許可証やTRCの取得とあわせて確認しておきたいのが、VNeID(電子身分証明)への登録です。外国人が法人の代表者を務める場合、その代表者個人のVNeID取得が、法人向け電子IDを登録するための前提条件となっています(政令69号第40条第4項により2025年7月1日から義務化)。さらに、首相決定29号(Quyết định 29/2026/QĐ-TTg)により、2026年7月20日から政府サービスポータルの運用ルールが変更され、電子身分証明を利用した本人確認・ログインが重要な位置付けとなっています。外国人の企業代表者にとっても、VNeIDはオンラインでの行政手続きを進めるうえで重要な基盤となっています。
これまでは、個人向けVNeIDの取得にTRC(一時滞在許可証)またはPRC(永住許可証)の保有が条件とされていたため、着任直後でまだTRCを取得していない代表者は、行政手続きに必要なVNeIDそのものを取得できないという制約がありました。2026年8月に公布された政令320号(Nghị định 320/2026/NĐ-CP)では、外国人の電子身分証明に関する規定が改正され、2026年9月28日から施行されます。これにより、一定の条件を満たす外国人については、TRC・PRCを保有していない場合でもVNeIDの申請が可能となります。
ただし、申請は電話番号の登録だけで完結するオンライン手続きではなく、本人が公安省の出入国管理当局または省級公安機関の所定窓口に出向き、パスポートを提示したうえで、本人名義の携帯電話番号を申告し、その場で顔写真・指紋の採取を受けるという対面手続きが必要です。処理期間は、出入国時に顔写真・指紋情報が既に出入国管理データベースに登録されている場合は2営業日以内、登録されていない場合は5営業日以内とされています。
この分野は、VNeIDの取得手続き自体よりも、「具体的にどの行政手続きにVNeIDが必須になるか」という適用範囲が現在も広がり続けている点に注意が必要です。着任のタイミングで、対象となる手続きの最新状況を確認いただくことをおすすめします。
有効期限・更新時の注意点
労働許可証の有効期限は最大2年間です。更新手続きは1回のみ可能で、2回目の更新にあたるタイミングでは新規申請扱いとなります。
労働許可証の期限はパスポートの期限を超えないため、申請前にパスポートの有効期限を確認してください。また、労働許可証取得後にパスポートを更新した場合、パスポート番号が変更となるため、当局への届出が必要です。
よくある質問
Q. 無犯罪証明書は日本とベトナム、どちらで取得すべきですか?
原則として、直近6か月以内に居住していた国の無犯罪証明書が必要です。日本にずっと住んでいた方であれば日本のもので問題ありませんが、直近6か月以内に中国やフィリピンなど他国に居住していた場合は、その国の無犯罪証明書が必要になる可能性があります。海外での取得は日本国内での取得に比べて実務的なハードルが上がるため、直近の居住歴によっては早めの準備をおすすめします。
Q. 複数社での経験も合算できますか?
現行のルールでは、同じ業務内容であれば複数社にまたがる実務経験を合算することが可能です。転職を挟んでいても、職務内容に一貫性があれば経験年数としてカウントできます。
Q. 日本の無犯罪証明書がとれないことはありますか?
証明書自体が取得できないケースは基本的にありません。証明書に記載されるのは、起訴されて有罪判決が確定した「前科」のみで、逮捕歴や不起訴になったケースは記載対象外です。
Q. 経験年数が不足していても申請可能ですか?
2025年8月施行の政令219号により、専門家・技術者に必要な実務経験年数がそれぞれ短縮されました。以前は不足していたケースでも、現在は申請可能になっている場合があります。個別の経歴によって判断が変わるため、まずはご相談ください。
Q. 大学の専攻とは別の業種でも申請可能ですか?
2023年9月施行の政令70号により、大学の専攻とベトナムでの職務内容が厳密に一致している必要はなくなりました。ただし、実務経験の内容が職務内容と適合していることは引き続き求められます。
Q. 高卒でも申請可能ですか?
「専門家」区分は大卒以上が条件のため対象外ですが、「技術者」区分であれば大学卒業は必須ではなく、1年以上の技術系トレーニングと2年以上の実務経験、または実務経験のみで3年以上を満たせば申請できる可能性があります。
Q. 大学新卒でも申請可能ですか?
「専門家」は大卒以上+実務経験2年以上(優先分野に該当する専攻であれば1年以上)、「技術者」も2〜3年以上の実務経験が前提となるため、新卒者は基本的に対象外です。
おわりに
労働許可証の取得は、免除要件の判断からカテゴリーの選定、書類の準備・認証、TRC・VNeIDの手続きまで、法令の理解と実務対応の両方が求められます。
LAI VIENでは、多数の日系企業様の労働許可証申請をサポートしてきた実績があります。書類準備から当局とのやり取りまで一括して代行可能ですので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいています。制度は改正される可能性があるため、実際の申請にあたっては最新の法令をご確認いただくか、専門家にご相談ください。













桜場伸介
1999年よりベトナム・ホーチミン在住。ベトナム進出支援を手掛けるLAI VIEN CO., LTD代表。27年以上にわたりベトナムで企業の進出・事業運営を支援している。労働許可証をはじめ、外国人のベトナムでの就労・滞在に関する実務にも携わる。