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1億VND(約60万円)を借りて日本留学、東京大学博士号を取得したベトナム人女性 9年の挑戦を経て母国で教壇へ

獣医学を専攻し、東京大学で博士号を取得したダン・ティ・ロアン博士
(C)THANH NIEN

両親から1億VNDを借りて日本へ留学したダン・ティ・ロアンさんは、数々の失敗や挫折を経験しながらも努力を重ね、東京大学で博士号を取得した。9年間の海外生活を経て帰国した現在は、大学で教鞭を執っている。

今回、故郷であるゲアン省出身の女性博士が、留学資金を家族から借りた経緯や、日本での苦労、そして研究者として歩んだ道のりについて初めて詳しく語った。

「もう一度選んでも獣医学を学ぶ」

「私はごく普通の人間です。人気学部でもなければ、有名大学出身というわけでもありません。そんな私について何を書きたいのですか?」

短く切った髪に眼鏡姿のダン・ティ・ロアンさんは、コーヒーをかき混ぜながらそう語り始めた。

家庭は決して裕福ではなかったという。進学先としてフエ大学の獣医学科を選んだのも、学費が比較的安く、フエ市での生活費も抑えられたためであった。

大学で学ぶうちに、インフルエンザや細菌感染症、ウイルス感染症など、多くの病気が動物に由来していることを知った。

「動物に関する研究をしっかり行うことができれば、人間社会にも大きく貢献できると考えるようになりました」

そう振り返るロアンさんは、今でも自らの進路選択に後悔はないという。

ロシアの生理学者であるイワン・パブロフの言葉、「医師は人を救う。獣医師は人類を救う」を自身の信条としてきた。

また、大学での学びを通じて、臨床獣医師として働くよりも研究者の道へ進みたいと考えるようになった。

卒業前に東京大学合格 両親に1億VNDを借りて渡日

転機は大学最終学年に訪れた。指導教員の助言を受けて日本の東京大学へ出願したところ、合格通知を受け取ったのである。

しかし、日本留学には多額の資金が必要だった。

ロアンさんは家族のもとへ戻り、日本留学のために1億VND(約60万円)を貸してほしいと両親に頼んだ。

当時はまだ卒業まで2か月残っており、その資金は残りの学生生活費、渡航費、ビザ取得費用、各種手続き費用、学費、生活用品購入費などに充てる予定だった。

「私は留学エージェントを利用しませんでした。ビザ申請もすべて自分で行いました。夜行バスでハノイへ向かい、車内で一晩過ごしました。朝に到着して手続きを済ませ、その日の夕方には再びバスでフエへ戻りました」

さらに、東大研究生としての学費支払いも5,000万VNDを超えていたという。

そのため、日本へ到着した時には、両親から借りた1億VNDはほとんど使い果たしており、手元には100万VNDにも満たない金額しか残っていなかった。

土地権利証を担保にして工面した留学資金

父親のダン・ディン・ディンさん(62歳)によると、ロアンさんは4人兄弟の3番目で、幼い頃から口数は少ないが約束を大切にし、一度決めたことは最後までやり抜く性格だったという。

ディンさんは、娘が留学資金を借りたいと相談してきた日のことを今でも鮮明に覚えている。

「2017年、私たち夫婦は土地使用権証明書を銀行に担保として差し入れ、娘に1億VNDを貸しました。2年後には全額返済してくれました。それが娘が家族からお金を借りた最後でした」

2025年2月には、夫婦そろって日本を訪れ、娘の博士課程修了式に出席した。

日本屈指の名門校である東京大学のキャンパスに立った時、自分たちの娘がここまで成長したことに大きな感慨を覚えたという。

「娘を本当に誇りに思います」

父親はそう語った。

東京大学で博士号取得までの道のり

日本到着初日から働き始めた

ロアンさんは2017年6月にフエ大学を優秀な成績で卒業し、同年9月に東京大学へ進学した。

日本での最初の食事は深夜0時だったという。

「朝7時に空港へ到着し、そのまま電車でアパートへ向かいました。荷物を置くとすぐに先輩たちと清掃作業へ行きました」

生活費を稼ぐため、ホテル清掃、飲食店スタッフ、複合施設の清掃、留学生支援室での事務補助、書籍会社での梱包作業、外国人学生向け家庭教師など、さまざまなアルバイトを掛け持ちした。

睡眠時間が2〜3時間しか取れない日も珍しくなかったという。

英語試験に失敗、一度は帰国も考えた

しかし、順風満帆だったわけではない。

来日1年目、修士課程入試に挑戦したものの、英語の点数が基準に達せず不合格となった。

「やめたいと思ったこともありました。ベトナムへ帰ろうかと考えたこともあります」

それでも諦めなかった。

指導教授にお願いして滞在期間を1年延長し、アルバイトを続けながら英語力と研究能力の向上に取り組んだ。

英語は語学学校に通うのではなく、接客の際に客との会話を重ねながら身につけた。

「どこの英語学校で学んだのかと聞かれ、学校名を教えてほしいと言われることがあります。でも私は一度も英語学校へ通ったことがありません」

そう笑う。

努力は実を結び、2020年初めに東京大学大学院修士課程の入学試験に合格。2022年3月に修士課程を修了し、そのまま博士課程へ進学した。

日本政府奨学金を得て博士課程へ

修士・博士課程では民間奨学金や大学の奨学金を受給したほか、学部授業のティーチングアシスタントも務め、生活費を補った。

そして2022年4月からは、日本の文部科学省による全額給付奨学金を受けながら東京大学で博士研究に取り組んだ。

2025年に博士号を取得し、長年の目標を達成した。

帰国後は大学講師として後進を育成

現在、ロアンさんは、グエンタットタン大学応用科学技術学部獣医学科の講師を務めている。

同大学のグエン・キム・ホン学長によると、ロアンさんは東京大学で博士課程を修了後、2026年3月に同大学へ着任した。

9年間に及ぶ日本での挑戦を経て、かつて両親から借りた1億VNDを元手に留学した少女は、東京大学博士となり、今は母国ベトナムで次世代の獣医人材の育成に取り組んでいる。

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