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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想第63回
PwC (VIETNAM)

世界4大会計事務所の一角を占めるPwC(PricewaterhouseCoopers)。そのベトナム拠点であるPwCベトナムは1994年に設立され、ジャパンデスクは250社ほどの日系企業を顧客に持つ。Directorの今井慎平氏が語る。

大きく4つのサービスライン

―― 総合コンサルティングファームには様々なサービスがあると思います。ベトナムでの事業内容を教えてください。

今井 弊社のサービスラインは大きく4つあり、「税務法務」、「アシュアランス」、「コンサルティング」、「ディール」です。

 税務法務以外は馴染みのない言葉もありますので簡単に説明しますと、アシュアランスは主に会計監査およびサイバーセキュリティを含む内部統制支援、コンサルティングは企業へのコンサルでERP等のITシステム導入、各ビジネスプロセス改善、不正調査・防止など、ディールは主にM&Aです。

 各サービスラインは細かく内容が分かれており、税務であれば各種税務アドバイス、移転価格サポート、税務デューデリジェンス(投資対象企業の価値・リスク調査)、関税サポート、法務については各種ライセンスサポートや個人情報保護関連を含む人事・労務サポートなど、多岐に渡る案件についてそれぞれの専門家が対応しています。

 弊社のようなコンサルティングファームは人がサービスを提供しているため、各サービスラインにどれだけ優秀なスタッフを揃えるかがカギとなります。

 私は入社時には移転価格担当マネジャーとして税務法務サービスに2年間従事し、その後現在のジャパンデスクを担当しています。ジャパンデスクでは日系企業をお客様として全サービスを横串に対応し、各専門家と連携しています。

―― 日系企業ではどのような案件が多いのでしょうか?

今井 お客様は大手企業を中心に製造業が多く、ハノイ支店で約100社、ホーチミン本店で約150社があります。ジャパンデスクは、国別ではPwCベトナム全体のトップを占めています。

 サービスラインでの代表的な例を紹介しますと、税務法務で多い案件は2つあり、ひとつは税務調査関連です。税務調査のご相談に乗り、アドバイスをするわけですが、調査結果に納得がいかない場合は、不服申立てをする場合があります。

 不服申立てをすると時間とコストがかかりますから、税務調査の段階で着地点を見つけるのが望ましいです。ただ、日本本社の意向や社内的な説明が必要な場合、あるいは後続年度の課税対策などから不服申立てをするお客様もいます。

 もうひとつの事例は製造業のお客様が多いこともあって、工場の新設や拡張などでの各種法令面からの確認・検討や税務メリットなどのご相談です。

 税務恩典については法令が複雑で判断が難しい場合が多く、後続年度での税務調査時に税務当局と見解の相違が発生しやすいため、事前のご相談が多くなります。大手企業様については、来年から導入予定のグローバル・ミニマム課税の観点からのご相談が増えてきています。

不正調査やM&Aも増加

―― ほかのサービスラインの例を教えてください。

今井 コンサルティングでは不正調査・防止に関する引合いが多いです。不正とは取引先から不正な金品や利益を授受しているなどのケースで、通常は社員や関係者が会社に通報して判明することが多いです。

 通報があっても企業が動かないと、危険を冒して通報した善意の従業員を失望させることになり、通報制度の意味をなさなくなってしまい、企業体としてのリスクが高まります。また、通報情報が真実とは限りませんし、別の通報者から同じ内容の連絡があったり、別の内容の通報がなされる場合もあるため、それらも考慮したお客様から調査の依頼があるのだと思います。

 ただ、調査の結果、それなりに不正を立証する証拠が発見されることもありますが、不正をする側は徹底的に証拠を隠そうとするため、不正と確実に断言できる材料が揃わないこともあります。

 そのため、不正が見つかった場合の対応は様々に分かれ、被害が少なくて当人の貢献が大きい等の場合は今後の不正を止めさせるに留めたり、被害が大きい場合は自主退職を選んでもらう場合もあります。

 調達責任者など不正が出やすいポジションについては、信頼できる生え抜き社員を選んでも、その環境にいると不正を働いてしまう事例も聞きます。大切なのは不正を防止や抑止するためのルールや牽制機能を整備することです。

―― ディールではどのような案件がありますか?

今井 ジャパンデスクとしては日本企業によるベトナムローカル企業の買収(M&A)や、ベトナムローカル企業との共同出資のサポートなどで、新型コロナが明けてから問合せが増えています。

 概観として、全体的に人口および所得が増加しているため、ベトナム人の消費をターゲットとしたM&Aが増加しています。セクターとしては金融やヘルスケアに加えて、消費財など日本の商品・サービスをベトナムで販売するため、そのチャネルを持つ企業の買収や提携もあります。

 昨年からの不動産不況で少し下火になりましたが、土地所有権を有する会社を買収してショッピングセンターやコンドミニアム建設を計画する、不動産系のM&Aが継続してあります。

 また、ベトナムも2050年のカーボンニュートラルを宣言していることもあり、太陽光発電や風力発電といったグリーンエネルギー系事業へのM&Aも多い印象です。

 弊社には資本出資を望むベトナム企業(売り案件)と買い手をつなげるソーシング・オリジネーションチームから、デューデリジェンス・バリュエーションを行うエグゼキューションチームのほか、M&A後の事業シナジー等の最適化(PMI:Post Merger Integration)を行うチームがおり、M&Aにからむ様々なニーズに対応しています。

 M&Aでは考えるべきポイントが多岐に渡り、それぞれの領域で専門性が求められるため、多くの領域で専門家を配備している弊社の役割は大きいと感じています。

―― これからの予定や計画を聞かせてください。

今井 成長するベトナムで日系企業がこれからもビジネスを拡大していく中で、弊社も様々な領域での専門性を駆使してサポートさせていただければと思っています。私自身も、日本で培った国際税務の領域以外の分野での経験が積める環境はとても有難く、これからもより大きな発見があるのを楽しみにしています。

 PwCベトナムには約1100人のベトナム人と外国人スタッフがおり、日本人スタッフは私を含めて3人ですが、今後はPwCジャパンからの派遣および現地採用を進めて陣容を拡大する予定です。

 ベトナムで不確かなことは多々あると思いますが、これからも当地の日系企業のために働きたいと思っています。

今井慎平 Shimpei Imai
大学卒業後に外資系監査法人に入社し、2007年にイギリスにMBA留学。2009年にロンドンの日系総合商社現地法人の石油会社に就職。その後日本の大手税理士法人に入社し、2013年から2年間ホーチミン市に赴任。帰任後、2016年1月にPwCベトナムに入社。