4月30日と5月1日の祝日を含めた5連休が4月12日に承認されたが、決定が直前だったために、企業には混乱が生じた。
4月始めにたてられた生産計画によれば、ホーチミン市7区のタントゥアン輸出加工区に所在するV.S Vina社では、4月18日のフン王の命日と4月30日と5月1日の祝日が休みとされていた。同時に工場では、納期の迫っている注文に対応するために休日を補うための残業を手配していた。
しかし、4月12日に4月27日から5月1日までを5連休とする案が承認されたことで、工場は生産計画の見直しを余儀なくされた。「14日後には連休に入ってしまいますので、生産計画の見直しには時間が足りません」と同社のグエン・ビック・ガン人事部長は話す。
ガン部長によれば、100%外資企業は国営企業ではないので今回の連休案に従う義務はなく、あくまで奨励されるに過ぎない。つまり理論的には、工場は生産計画を変更する必要はないことになるが、この連休案承認のニュースが出たことで、労働者はこの期間に休みたいという心理が生まれる。
製造業は土曜日も出勤する企業が多く、5連休となった場合は4月27日(土)と4月29日(月)の2日間の振り替えが必要になる。もし、この2日間を連休明け以降の2回の日曜日で補填するとなると、労働者は、2週間以上休みなしで働くことになり、健康問題が懸念される。もし、工場が以前の生産スケジュールを維持して4月30日と5月1日のみを休みとした場合、従業員のモチベーションが低下する。労働組合との交渉後、企業は、休みたい従業員には有給を使用できるようにすることで合意した。
「現時点で、工場は多くの労働者が休みをとることを心配しています」とガン部長は話す。同社では、工場に納期が迫った注文があることを説明し、出来る限り出社してもらえるよう説得を続けている。もし多くの従業員が休みをとるのであれば、残業を増やすしかない。工場側が懸念しているもう一つの問題は、テト休暇同様に長い休み明けに従業員が休みボケになることだ。
ガン部長によれば、連休自体はやむを得ないとしても直近になって決定されると生産計画に多かれ少なかれ影響が出ることになる。「9月2日ももう1日休みが追加されますが、前になるか後になるかを事前に確認できないため、毎年企業は生産計画を立案する際に頭を痛めています」とガン部長は話す。毎年年末になると、ベトナムの製造工場は来年の祝日を含めた生産計画を立て、親会社に送付する。親会社は、パートナーや顧客が工場を訪問するスケジュールを立てられるようにこれらの情報を提供する。工場訪問する場合には、事前にビザの申請や予算の承認を受ける必要があるからだ。
「もし、工場が直近にスケジュールを変更すると、顧客が休みの間にベトナムに来てしまって仕事にならない可能性もあります」とガンさんは話す。そのため、本社は早急に休暇スケジュールについて労働組合と合意し、企業と従業員が主体的に行動できるようにするべきだと指示した。
ホーチミン市縫製・刺繍協会のファン・スアン・ホン会長は、5連休は民間企業に対しては推奨されているだけだが、現場では一定の混乱が生じると指摘する。「4月にはフン王の命日の祝日もあり、ただでさえ営業日数が少ない上に、更に休日が増えると調整が難しくなります」とホン会長は話す。
ホン会長によれば、輸出企業は出荷日を既に決めており、もし5連休にすると残業計画はさらに困難な状況に直面することになる。そのため、主な解決策は政府の連休にかかわらず以前の勤務日程を維持し、従業員に説明して生産活動を継続させることしかない。その場合、企業は労働者を満足させるために、休日手当にさらに20万VND程度追加で支払う必要がある。
ホン会長は、現在の問題点は、労働者が政府の提案する5連休をとりたいと考えていることにあると指摘する。その場合、企業は有給の使用を認め、生産計画を維持するために残業を増やさなければならない。今回のような事態を避けるために、政府は各祝日の計画を年始に立案すべきだとホン会長は話す。
5連休は、観光業界に恩恵を与える一方で混乱も生じている。TSTツーリストのマーケティング部門を管理しているグエン・ミン・マン部長は、僅か半月前に5連休を決めるのでは、観光事業者は、顧客に最適なサービスを提供するための準備が間に合わず、ビジネスチャンスを失うと話す。
「もし、もっと早い時期に連休の日程を決めていればビジネスチャンスは広がるでしょう。現時点では、準備期間が無さ過ぎて混乱が生じています」とマン部長は話す。実際のビジネスの観点から、TSTツーリストの代表者は、企業が従業員の休みを主体的に配置できるように、連休の計画は年始の段階で立案すべきだと提案する。そうすれば旅行、交通機関、観光関連の企業もサービスの品質を保証したうえで、適切な価格でサービスを提供することが可能になる。
これに対して、各省庁と首相からの意見を集めるために連休の草案を作成する労働・傷病兵・社会省労働安全局のハー・タット・タン局長は、法律で定められた休日は当然のことながら実施されると述べた。但し、平日を調整することで連休が出来る場合、労働安全局は、国民がプライベートな時間を過ごせるようにするため、積極的に連休を提案することになっている。
「特に長期連休の調整は、その時の社会経済状況によって判断する必要があります」とタン局長は話す。例えば、今年の4月30日と5月1日の祝日を繋げて連休にするのは、旅行需要を刺激し、経済発展を促進させ、国民が楽しめる環境を作り出すことを目的としている。もし、休日の設定が当初決められた通りにしかできないのであれば、提案や意見は不要で、法律に従って実施するだけだ。連休の調整は、国営企業や政府機関を対象に適用されるもので、民間企業は推奨されているだけで、義務ではない。
Economica Vietnamのレ・ズイ・ビン社長は、政策の変更は、国民や企業の活動に影響を与え、混乱を生じさせる可能性があると指摘する。理論的にはこの連休は政府機関にのみ適用されるものだが、実際には多くの従業員を抱える大手企業は、従業員が連休をとれるように配慮する必要性がある。一方で、連休の決定が遅すぎると、企業は生産計画を調整するのが難しくなる。
ビン社長は、例えば夫が公務員で休みになるが妻が会社員で仕事に行かなければならない場合、家族で連休を過ごすのは難しくなると指摘する。そうなると、観光促進などの政府目標は達成することが難しい。企業で考えても、もし、業務の都合により5連休を認めるのが難しいとする会社側と、5連休を求める労働組合側が対立した場合、労使間に本来不要であったはずの余計な緊張関係が発生する可能性がある。
ビン社長によれば、この連休で恩恵を受けるのは、商業施設、旅行業、旅客輸送業などとなっている。しかし、このように直前での通知となった場合に、これらの業界が恩恵を受けるための準備が間に合ったのかどうかも後日評価する必要があるとビン社長は指摘する。
「政策は早い段階から先を予測して実施する必要があります。そのため、連休の提案などは年始の時点で立案しておくべきで、なんらかの変更があれば、その影響を評価すべきです」とビン社長は話す。専門家によれば、労働・傷病兵・社会省は、今年の連休の理由を旅行需要を刺激し、経済発展を促進させ、国民が休日を楽しんだりリラックスできるようにするためだと説明している。そうであるならば、今後の連休政策を検討するための根拠として、政府は連休明けにも今回の連休による効果と目標達成度合いを具体的な指標によって検証する必要がある。
「柔軟に対応することは必要ですが、それが数百万の労働者や数十万社の企業に影響を与える事項であれば、慎重さも求められます」とビン社長は話す。法律の専門家は、毎年の祝日は法律によって定められているが、毎年変更があるため企業が予測するのは難しいと説明する。その為、振替休日や連休に関する政策は慎重に検討することが求められる。
出典:2024/04/14 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載