海外からの受注が回復し、クチ県に所在する企業では、1500人の採用を目指しているが、募集から約2ヶ月で採用できたのは300人しかいない。
「人材探しがますます困難になっており、人材採用部門は大きなストレスを受けています」とこの会社の労働組合長であるグエン・タイン・アン氏は話す。テト明け以降、受注状況が回復したことを受けて、同社では人材の募集を始めた。求人情報をいたるところに掲載したが、応募者は思ったほど増えていない。生産計画に対応するため、会社の経営陣は、労働組合に採用活動のサポートを依頼した。
長年にわたって労働組合で活動してきたアン氏は、社会活動を通じて地方の省に伝手があったので、採用活動のために各村や県の職員を紹介してもらった。計画によれば、アン氏は、アンザン省、チャーヴィン省、ダクノン省、カマウ省、バクリェウ省に出向く予定だ。「全ての地方が有望というわけではありませんが、座って待っているよりは、行動した方が良いですから」とアン氏は述べた。
村の職員が地域住民を集めると、アン氏と同僚は会社の概要、給与、手当、福利厚生などについて説明する。新入社員の月給は700~800万VND程度だ。応募人員の多かった地方には、会社が送迎車を手配し、それ以外で個人的に田舎から出てくる労働者には、交通費を支給する。また、新入社員向けに寮も準備している。2ヶ月近く様々な地方を訪問し、同社はアンザン省のチートン県で300人以上の従業員を採用することができた。
ホーチミン市雇用サービスセンターのグエン・バン・ハイン・トゥック所長によれば、この会社だけでなく、他の多くの工場も採用に苦労している。同センターの統計情報によれば、5月だけで約4万9000件の求人が出ているが、求職者は8500人程度しかいない。一方で、失業手当の登録者数は、6万人近くに達している。
「企業の採用需要は高まっていますが、人を見つけるのはますます難しくなっています」とトゥック所長は話す。これまでに同センターでは、企業と労働者を繋ぐために21回のジョブフェアを開催したが、求職者より求人の方が多いというケースが多々あった。一部の大手企業では対象者を40~45歳まで広げて数千人規模の募集をかけているが、十分な人数の採用には至っていない。
ホーチミン市だけでなく、ドンナイ省、ビンズン省でも労働者不足の状況は同じで、特に縫製、履物製造、木材加工などの業種で人手不足が深刻だ。
ビンズン省労働・傷病兵・社会局によれば、今年に入ってから受注量が回復したことを受けて3210社の企業から4万1000人近くの求人が出ており、そのうち一般労働者が87%を占めている。しかし、多くの工場が必要な人数の採用に至っていない。企業を支援するため、ビンズン省労働局は、各地方の雇用サービスセンターと提携し、人材確保に努めている。
ドンナイ省では5月だけでも、地域内の企業から1万人以上の求人が出ており、その96%弱を一般労働者が占めている。多くの企業では、思ったように応募者が集まっておらず、募集の締め切りを延期している。
応募者が集まらない状況についてトゥック所長は、一般の労働者は以前に比べて工場以外の就職先の選択肢が増えていると分析している。最近では、若者を中心に時間の融通がききやすい配車アプリや配達、サービスの仕事を選ぶ人が増えている。また、現在では地方でも工業団地が開発され、多くの工場が入居しているため、労働者は都会に出なくても仕事を探しやすくなっている。
多くの地方を訪問し、住民たちと直接交流したグエン・タイン・アン氏は、多くの人が都会を避けていると感じた。新型コロナ流行時のショックを目の当たりにして、地方の労働者は田舎の方が安全だと感じている。新型コロナで田舎に帰った人々は、田舎にも仕事があり、生活費も都会より安いことに気づいたのだ。
社会生活研究所のグエン・ドゥック・ロック所長は、経済が産業構造の転換期にあり、これまでになかった新しい種類の仕事が登場し、社会が新型コロナやワーカーの大量解雇といったショックを経験したことで、人々の仕事への考え方が変化したと分析している。
ロック所長によれば、労働者はいつ工場を辞めなければならなくなるかわからないため、同じ工場で長く働くことにあまり意味がないと感じるようになっている。そのため、労働者たちは、ゲーム感覚で短期の仕事に就くことを好むようになっている。最近では、時間に縛られない新しいタイプの仕事が増えており、労働者が仕事を選びやすくなっている。
「勿論、全ての労働者が同じではありませんが、労働者はより従業員を大切にしている企業を選ぶ傾向が高まっています」とロック所長は、話す。例えば、新型コロナのときや受注量が減ったときに、安易に人員整理に走った企業は、労働者を見捨てずに社会的責任を果たそうとした企業よりも厳しい状況に陥る可能性が高いとロック所長は指摘している。
出典:2024/06/10 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載