レ・ミン・ホアン大臣によれば、台風ヤギによるベトナムの被害総額は、先週の統計から20兆VND以上増えて81兆5000億VND(約4855億円)に達した。
9月28日に台風ヤギの被害拡大防止と克服に向けた総括会議において農業・農村開発省のレ・ミン・ホアン大臣は、最も被害の大きかったクアンニン省の被害総額が24.8兆VND(約1477億円)であり、その他にもハイフォン市が12.2兆VND(約726億円)、ハイズン省が7.4兆VND(約440億円)、ラオカイ省が6.6兆VND(約393億円)、イエンバイ省が5.73兆VND(約340億円)、バクザン省が5兆VND(約297億円)、フンイエン省が3.6兆VND(約214億円)の被害を受けたことを明らかにした。農業関連の被害額は30.8兆VND(約1830億)で被害額全体の38%を占めている。
これにより、台風ヤギによる経済損失額は1週間前の報告から20兆VND(約1188億円)以上増加したことになる。台風被害の克服と事業活動の回復状況に関する9月21日付の記事の中で、ファン・ミン・チン首相は、台風ヤギによる経済損失が61兆VNDになるとの統計数字を引用し、2024年のGDP成長率が当初目標の6.8~7.0%から0.15%ほど下がる可能性があるとの見方を示していた。
9月7日にレベル12から14の暴風を伴ってクアンニン省からハイフォン市に上陸した台風ヤギは、北部全域に大雨をもたらし、死者と行方不明者が合わせて344人となり、そのうち264人は土石流に巻き込まれたとみられている。ラオカイ省では132人が死亡し19人が行方不明となり、カオバン省では55人が死亡し2人が行方不明、イエンバイ省では54人が死亡、クアンニン省では29人が死亡、ハイズン省では8人が死亡、フートー省では6人が死亡し、4人が行方不明、タイグエン省では8人が死亡するなど大きな被害が出た。
28万1900戸の家屋が破損したり、屋根を吹き飛ばされた。28万4400ヘクタールの水田と6万1100ヘクタールの農地が浸水被害を受け、560万匹以上の家畜が死んだ。500kVの送電線で14か所の事故が発生し、その他の電力関連事故によって600万世帯以上が停電し、430ヶ所以上の工業団地でも停電が発生した。
大規模自然災害への対応計画は不完全である
レ・ミン・ホアン大臣は台風ヤギへの対応には様々な課題があり、特に広範囲に及ぶ大規模自然災害や分断された孤立地域への支援対策シナリオは依然として不完全であり、現実に即していないと指摘した。台風や洪水による災害のリスクに関する警告は「具体性に欠け、市民は、大型の台風が上陸したことによってもたらされる甚大な被害に想像が及ばなかかった」とホアン大臣は述べた。ホアン大臣は、これも市民による自然災害への対応が遅れた一因だと指摘する。
ホアン大臣はまた、暴風に対する避難勧告が厳格に実施されておらず、嵐の中でボートに留まったり、道路を移動するなどする人がいたことが市民の生命や財産に深刻な被害を与えることにつながったと述べた。一部の場所では、街路樹の伐採や広告看板の撤去がおこなわれておらず風に飛ばされて被害が拡大した。
自然災害の救助活動に必要な設備や車両も脆弱かつ不足しており、特に大雨、強風、洪水、土砂崩れなど複雑な気象条件を伴う災害が遠隔地で発生した場合、対応能力に欠けている。インフラや家屋も大型台風の破壊力に対しては、依然として抵抗力が弱い。道路では頻繁に土砂崩れが発生し分断が発生している。
ホアン大臣は、大雨、洪水、土砂崩れなどに関しては、ピンポイントでの正確かつ早期の警報が重要な役割を果たすと指摘した。しかし、今回の歴史的な大雨や洪水への警報やホン川の洪水予測は、発表のタイミングが悪い上に信頼性も乏しく、現実を反映してなかった。
今後、政府機関は、市民の移住先の選定などに役立つように各地域の土砂崩れや土石流の発生危険性を示したハザードマップを作成しなければならない。
また、山岳地方では中心部を含めて多くの地域で長期にわたる深刻な洪水被害が発生した。その原因は、建設工事による都市化の過程で河川の治水能力が低下したことにあるとみられている。
レ・ミン・ホアン大臣によれば今回の洪水被害は、紅河デルタ地帯で1971年以来最大規模のものであり、河川と共存する各地域に教訓を与えた。
レ・ミン・ホアン大臣は、ラオカイ省のコーヴァン村で土砂崩れの兆候を発見したマー・セオ・チュー村長が村民115人を事前に安全な場所に避難させた話を引用して、あらゆるレベルの行政機関と市民は、この話しから自主的に危険な場所見つけ出し、避難するという教訓を学ぶべきだと述べた。
「台風ヤギは市民の生命と財産に深刻な被害をもたらしたが、同時に災害に対する制度やインフラに関して大きな教訓ももたらしました」とホアン大臣は述べた。
自治体は台風被害の克服に25兆VND以上の支援を要求
農業・農村開発省によれば、各地方自治体は台風による被害を確認し、復旧に向けて25兆VND以上の支援を政府に求めている。これに基づいて農業・農村開発省は、首相に対して2024年の補正予算から各自治体に向けて10兆VNDを支援するように提案した。
レ・ミン・ホアン大臣は、当面の課題としてフートー省のフォンチャウ橋崩落事故による行方不明者の捜索と、ラオカイ省やカオバン省で洪水や土石流によって行方不明となった人々の捜索に注力することを提案した。また、支援部隊によって孤立した地域への食糧や必需品の支給、破損した家屋の修復支援、住む家を失った人々への安全な移住先の提供などにも取り組む。
自然災害、特に土砂崩れや土石流のリスクが高い地域の人々は、安全な場所に移住し、新しい場所で持続可能な生活を築く必要がある。
天然資源環境省のドー・ドゥック・ズイ大臣は、台風ヤギは、かつてないほどの異常な特徴を伴っていたと分析する。台風ヤギは、勢力が異常なスピードで強まり、48時間に内に非常に強い台風から猛烈な台風にまで発達し、その勢力を長時間にわたって維持した。台風ヤギが中国の海南島の東部に上陸した時には依然として猛烈な勢力を維持していた。
台風ヤギは、通常の台風のように勢力が衰えることが無かった。例年であれば海南島を通過してトンキン湾に入った台風は急速に勢力を弱めるが台風ヤギは勢力を維持し続け、クアンニン省とハイフォン市のエリアに来てもレベル12~13の暴風を伴っていた。通常台風は、上陸してから6~8時間後には勢力を失うが、台風ヤギは上陸してから12時間以上も勢力を維持していた。
ズイ大臣によれば、ベトナムは過去に一度も前例がなかったため、本土にこのような大型の台風が上陸することを当局は予測できなかった。現代の技術でも6時間に200mmを超える大雨を的確に予測することは難しい。土石流や土砂崩れを狭い地域に限定して事前に予測することは、先進国においても技術的に非常に難しいとされている。
出典:2024/09/28 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載