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【社会】同性愛の治療を家族が強要する

(C) VNEXPRESS

息子が鏡を見たり化粧をすることに興味があることに気づいた両親は、祈祷師を招いて息子に”治療”を強要し、結果的に息子はうつ病になってしまった。

ここ数ヶ月の間、17歳のホアン君は眠ることが出来ず、部屋に閉じこもっていた。息子が友達にそそのかされていると考えた母親が、息子に無理やり病院の診察を受けさせ、父親は”悪霊”を追い払うために祈祷師を呼んだ。当初ホアン君は反発したが、両親のプレッシャーに負け、病院に行き、ホルモン、遺伝子、染色体を調べるための様々な検査を受けなければならなかった。

医師との会話でホアン君は男性に興味があることを認めたが、跡取り息子としての責任から、本当のことを言えずにいた。両親に気づかれてから、ホアン君はよりストレスを感じ、疲れて学校に行きたくなくなり、自分自身を恥ずかしく感じるようになった。ホアン君は、時々出口が見つけられずに死にたくなる。家族の中に緊張した空気が漂うようになり、ホアン君の母親はストレスで睡眠薬を飲むようになり、仕事にも集中できなくなった。

10月4日にE病院泌尿器・男性科のファン・クアン・カイ医師は、同性愛は病気でないので治療の必要はないと両親に告げた。しかし、患者には極度の不安とうつ病の症状が見られ、医師は家族に対して子供を傷つけ取り返しのつかない事態に陥ることを避けるために、冷静に子供の話を聞くようにアドバイスした。

同様に24歳のザンさんも男性の姿をした自分の中に女性がいることを感じていた。ザンさんは、両親に隠れて女性ホルモンを注射するようになり、性転換手術のためのお金を貯めるようになった。息子の奇妙な様子から事実を知った両親は激怒し、ザンさんを部屋に閉じ込めて祈祷師を呼んだ。それでもザンさんは自分の身体に対する違和感を消すことはできず、性転換手術を受けることを決意した。

14歳のチューン・ソン君も同性愛者であることをカミングアウトした後で不安障害に苦しんだ。両親は子供が”生理学的異常”であると考え病院に連れて行った。医師によれば両親によるこのような行動が子供にさらに大きなストレスを与えることになる。医師は子供の状態を両親に説明した後、ソン君にも両親がそれを理解して受け入れられるようになるまで、少し時間を与えるようアドバイスした。

世界保健機関(WHO)は、同性愛者を同性に対して性的指向を持つ人々と定義している。同性愛とトランスジェンダーは、それぞれ1990年と2019年にWHOによって国際疾病分類(ICD)の精神および行動の障害の章から削除されている。

保健省は、同性愛は病気ではないので治療することはできず、その必要もないが、精神的なサポートのみが必要だと強調している。医療機関は平等であり性別を尊重し差別しない。

第一中央精神病院のレ・ティ・トゥイ・ハン医師は、LGBTQIA+の人々は、一般の人々よりも多くの精神的苦痛を受けるリスクがあると指摘する。このグループの人々は、家庭、学校、職場などで差別、侮辱、身体的暴力の対象となりやすく、敏感になっている。そんな中で”カミングアウト”は、最もうつ病を発症しやすい瞬間だ。

ハン医師によれば、同性愛者にとってカミングアウトは非常に困難な心理的戦いであり、特に家族に対してはそうだ。ベトナムでは、LGBTコミュニティと社会の間には障壁や差別が依然として立ちはだかっており、うつ病、ストレス、不安障害のリスクがあり、身体的及び精神的な発達に影響を与えている。

ベトナムでは男性間性交渉者(MSM)が約30万人存在すると推計されており、このうちホーチミン市に約7万5000人がいるとみられている。彼らの多くは差別や暴力の被害者であり、不安や憂鬱を抱えて暮らしている。

ハノイ医科大学病院が2021年2月から8月にかけて病院を診察に訪れた16歳以上のMSMを対象に実施した調査では、14.2%がうつ病を患っており、このうち2.7%が重度のうつ病だった。社会・経済・環境研究所(iSEE)が2015年に2400人を対象に実施した別の調査では、62%以上の人が家族から外見や身振りを変えるように強制され、60.2%の人が、叱られたり圧力をかけられた経験がある。

健康と人口に関する創造イニシアチブセンター(CCIHP)とiSEEが2011年に実施した同性愛者に対する暴力に関する調査でも、17件中13件が家族による暴行だった。調査対象となった17例の同性愛者は、程度の差こそあれ、全員がうつ病を経験している。2021年にLGBTQIA+コミュニティの3万5000人以上の若者を対象に政府が実施した調査では、42%が自殺を考えたことがあると回答している。

ベトナムでLGBT権利保護促進活動をおこなっている専門家のフイン・ミン・タオ氏は、多くの親はLGBTに関する最新の正しい情報を認識しておらず、LGBTを”感染性のある通常とは異なった習慣や行動”の一種と考えているためにこのような被害が広がっていると説明する。しかし実際には、LGBTも異性愛者(ヘテロセクシュアル)やシスジェンダー(出生時の性と自認する性別が一致する人)と同じく人間のもつ様々な性的嗜好や性自認の一種に過ぎない。

「これは自然な発達であり、強制したり伝染したりするものではありません。つまり、多くの親がやろうとしている”治療”など当然必要ありませんし、出来ません」とタオ氏は述べた。

さらに多くの科学的研究によれば、子供を”真っ直ぐ”に矯正できるという考えに固執した言動は、子供の身体と精神に、深刻な影響を及ぼすとされている。このときのトラウマは、表に出てくる時もあれば出てこないときもあるが、トラウマを抱えた子供は一生苦しみ続ける。うつ病は自殺、アルコールや薬物の濫用、危険な性行為、HIV感染などのリスクを高める。HIVに関しては感染率が急激に増加しており、保健省によれば2012年の2.3%から2020年には13.3%と5倍以上に増加している。

専門家によれば、人は生まれたときに自分がLGBTかどうかを決めることができるわけではない。親は、自分の既成概念や周囲の偏見に惑わされず、注意深く正しい科学的な情報を探すことが重要だ。また、カミングアウトは長い道のりであり、周囲の人々への周知を注意深く準備し、将来的なリスクについても予測しておく必要がある。

「親は常に子供に幸せな人生を送ってほしいと願っているが、価値観をどのように分かち合うべきかわからず、意図せずに子供を傷つけてしまうのです」とカイ医師は話す。カイ医師は、LGBTコミュニティの人たちが自分の身近な人にカミングアウトしたいと考えた場合は、冷静かつ慎重に適切なタイミングを見極めた方が良いとアドバイスする。

「充分な自信、自制心、自尊心を持っている場合にのみ、カミングアウトすべきです」とタオ氏は続けた

現在、LGBTの権利を保護する社会団体や専門機関によるLGBTコミュニティに関する信頼できる情報源が数多く存在している。同性愛者の親族、特に親は知識を身につけ、冷静に話を聞いたり専門家のアドバイスを求めたりして解決方法を学ぶことができる。

出典:2024/10/11 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載